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産経ニュース エディトリアルチーム
埼玉県川口市に持ち前の包容力で、父が興した建設会社を切り盛りする女性社長がいる。2サイトあった自社のホームページを1本化してコスト削減とイメージアップを両立させた「肝っ玉母さん」に話を聞いた。(TOP写真:同社事務所で斉藤千景代表取締役)
跡継ぎは三人姉妹の次女、夜間学校に通い必要な資格を取得
芝塚コーポレーション株式会社は、鉄筋工事を主体とする建築会社だ。前身は1953年に芝塚金治氏が東京都内で興した芝塚組で、建設現場で鉄骨を組み上げる「鉄骨鳶(とび)」を得意とし、大手建設会社の下請けとして高度経済成長期に東京都内のビル建設を手がけてきた。1968年に埼玉県川口市に事務所を移転、1970年に芝塚建設株式会社に改組した。
斉藤千景代表取締役(60歳)は、金治氏の次女だ。幼い時から活発で物怖じせず「男だったらよかったのに」と周囲に言われながら育った。三人姉妹で長女が跡を継ぐことになっていたため、実家を出て都内百貨店で販売員をしていたが、20代の終わり頃、「姉さんが『結婚するから跡を継がない』と言っているから帰ってこい」と川口に呼び戻された。
将来、父の後を継いで芝塚建設の看板を背負うことになった千景氏は、昼間に父の会社を手伝いながら、夜間の学校に3年間通い、簿記を学び施工管理の資格も取った。午前8時に会社に来て午後5時まで勤務し、その後、午後9時くらいまで学校で学ぶ。その後は学費を稼ぐため飲食店で夜中までアルバイトをしたという。「若い時は寝ないで働くのは当たり前だと思っていた」と話す。
夫が経営する建築会社と合併、芝塚コーポレーションを設立
その後、鉄筋工事会社を経営する同業の斉藤柾彦氏と知り合い、30代半ばで結婚。2人の娘に恵まれた。ただ、「下の娘が生まれる前、上の娘が3歳くらいの時」に、金治氏が脳梗塞で倒れてしまった。幸いすぐに退院できたものの、千景氏は「代替わりの時が来た」と覚悟を決めた。柾彦氏と相談し「会社が二つあるのはもったいないから合併しよう」と2005年5月、芝塚コーポレーション株式会社を設立した。柾彦氏が会長に、千景氏が代表取締役に就任した。
同社の従業員は男性ばかり20人で年齢は幅広い。工事があると人員を集め、現場に行って必要な作業を担う。給与の月額があらかじめ決まっている日給月給制で、給与は8時間勤務で能力に応じて1日1万円から1万8000円だ。2022年4月決算の売上高は約1億5000万円で、前年に比べ横ばいだった。工事自体は減っていないが、2022年は従業員が新型コロナウイルスに罹患して、現場の作業が滞ることがあったそうだ。
障害児児童のデイサービス施設も運営、請求業務は独学で習得
千景氏は川口市内の放課後等デイサービス施設「あおぞら」の運営にも携わっている。障害者手帳を持つ児童を送迎付きで預かる福祉施設で、もともと柾彦氏が始めたが、経営が思わしくなく「看板を下ろそうかと考えていた」と言う。だが、千景氏は「預かっているお子さんがいないわけではない。投げ出しまうのはどうなのか」と、運営を手伝うことにした。千景氏54歳の時である。
仕事を持つ母親にとって子供をどうするかは大きな悩みだ。勤めが午前9時から午後5時までなら、始業に間に合うように通勤時間を勘案した上で施設に預けなくてはならない。まして障害を持つ児童を預かる施設は少ない。利用者の母親に「何時に家を出るのですか」と聞いたら「東京の新宿に通っているから午前8時前に出なくてはならない」という。午前5時、6時に起床して現場に赴くことが当たり前の建築業界に身を置いてきた千景さんは早起きが苦にならない。「わかりました。じゃあ午前7時45分に迎えに行きます」と胸を叩いた。
そうやって預かる児童は日に10人。抱える職員も10人いる。「福祉の世界を知らないし、最初の3年間は大変だった」と話す。施設利用料の請求業務は専用ソフトを購入して独学で入力方法を身につけた。「川口市主催のパソコンの使い方講座に通い、できるだけお金のかからない方法で勉強した」という。
自社ホームページを1本化し、コスト削減とイメージアップを図る
芝塚コーポレーションには当初、会社案内のページと求人専門ページと、二つのサイトがあった。会社案内は2013年頃、求人サイトは2014年頃、専門業者に頼んで構築した。
鉄筋工事は職人集めが最初の仕事になる。「新人に一から教えるか、仕事のできる人を集めてくるかは、業界の横の人脈が頼り。関係者にこまめに連絡を取ることが大事」と千景氏。だからホームページとは別に「うちも元気でやっています」と関係者にアピールするためのサイトを作った。
だが、記載内容の更新は業者に依頼するため、その度に費用がかかる。「どう考えてもサイトを二つ運用するのはコストがかかりすぎる」と、2022年10月に1本にまとめることを決断し、企業向けホームページ作成ソフトを用いて同年11月から1本化した。
鉄筋工事は全部囲いで覆われた中で遂行するので、工事内容がわかりづらい。会社案内だけでなく「こんな風にやっている」と工程を写真で説明する「作業案内」も載せた。業務内容を広くアピールしてイメージアップも図りたいと、パソコンだけではなく、スマートフォンでも閲覧できるようにした。千景氏は「いい写真があると従業員が画像を送ってきたり、社外の人からいいねと声をかけられたりする」と反響に表情を緩める。
勤怠管理や工事台帳などICT化の課題も多いが、〝3代目〟に期待
ホームページを1本化した同社だが、これから取り組んでいきたいミッションも少なくない。
一つは従業員の勤怠管理だ。出勤・退勤時間は従業員が現場で用紙に記入し、週に1回本社に届けている。それを千景氏がエクセルでデータ入力し、給与計算をしている。
材料費や労務費など現場ごとのお金の動きを記した工事台帳も、「ソフトを使うより手書きした方がてっとり早い」と柾彦氏が手書きしている。「どうやれば手書きで早くこなせるか若い時から工夫してきた人に、いきなりやり方を変えろというのは難しい。3代目に期待」と千景氏。同社の本格的なICT化は、現在、建築学校在学中で現場にも出ている千景氏の次女(20歳)に委ねられそうだ。
企業概要
会社名 | 芝塚コーポレーション株式会社 |
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本社 | 埼玉県川口市並木2-6-8 |
電話 | 045-253-0082 |
HP | https://shibaken-k.com/ |
設立 | 2005年5月 |
従業員数 | 20人 |
事業内容 | 鉄筋工事 |