ICTで質の高い工事と情報セキュリティを強化 地域のインフラを守るため建設DXに挑戦 白雪興産(香川県)

目次

  1. 責任ある行動と地域からの信頼を何より大事に
  2. 10年前から土木工事の積算にシステムを活用。数日かかる仕事があっという間に
  3. VPN導入により、外出先の社員と通信セキュリティを確保した状態で情報共有を実現
  4. 情報セキュリティ強化にUTMをバージョンアップ
  5. 工事現場でICT測量器やドローンを活用
  6. 従業員に資格、技術の取得を奨励
  7. 建設キャリアアップシステム(CCUS)を導入
  8. 2023年3月、ホームページを一新して情報発信を強化
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

香川県高松市に本社を構える株式会社白雪興産は、1966年の創業以来、道路の建設・拡幅・補修や河川改修といった公共事業を中心に実績を積み重ねてきた。現在、受注案件の約9割は公共工事。台風や地震などの災害発生時には自治体からの要請が入り次第、現場に急行して復旧作業に従事する体制を整えている。2004年、33歳で3代目社長に就任した鈴木忍代表取締役は、約20年にわたってICTやデジタル機器の導入といった新しい取り組みに挑戦しながら社業を発展させてきた。(TOP写真:作業に取り組む白雪興産の建設機械)

責任ある行動と地域からの信頼を何より大事に

「道路や河川といった地域社会のインフラを整備する仕事に誇りを持って取り組んでいます。公共工事を担う企業として、責任ある行動と地域からの信頼を何よりも大事にしています。質の高いサービス提供や、情報に対するセキュリティ確保のための手段としてICTやデジタル機器を活用しています」と株式会社白雪興産の鈴木忍代表取締役は力強く語った。

ICTで質の高い工事と情報セキュリティを強化 地域のインフラを守るため建設DXに挑戦 白雪興産(香川県)
白雪興産の鈴木忍代表取締役

10年前から土木工事の積算にシステムを活用。数日かかる仕事があっという間に

白雪興産は約10年前から、土木工事の自動積算システムを導入している。工事の発注者が公表する設計書のPDFデータをシステムに取り込むだけで、工事名、使用する基準書、機械損料、市場単価、積算のための資料などが自動的にセッティングされ、落札率向上の鍵となる正確な工事の総費用を短時間で算出する機能を備えている。積算のもとになるデータの更新も定期的に行われる。

「システム導入前は、工事の規模にもよりますが、手作業で必要な要素を一つひとつ積み上げて計算していかなければならなかったので、積算を完了するのに数日はかかっていました。現場での仕事を終えてから作業しなければならないことも多かったので、残業の要因にもなっていました。システムを導入してからは、設計書のデータを取り込んだらそのまま簡単に算出できるので、非常に便利になりました。手作業での積算は担当者にも大きな負担がかかっていたので、導入した価値は十分ありました」と鈴木社長。

VPN導入により、外出先の社員と通信セキュリティを確保した状態で情報共有を実現

2017年にはインターネット上で特定の人だけが利用できる専用ネットワーク、VPN(Virtual Private Network=仮想専用通信回線)を導入。従業員が、社外でも通信セキュリティを確保した状態でインターネットを利用できるようにした。

VPNを導入する以前は、社外でインターネットを利用する必要が生じると通信セキュリティの環境が整っている本社にわざわざ戻らなければならなかったが、導入によってその問題は解消された。「VPNのおかげで無駄に感じていた移動時間を大幅に減らすことが可能になりました。県内全域が事業領域ということもあり、遠方の現場を抱えている時は本当に重宝します」と鈴木社長。香川県が定期的に開催する建設事業者向けの講習会でも、Web会議システムを使って現場の仮事務所からリモート参加できるので、わざわざ講習会場まで足を運んでいた時と比べて、現場を離れる時間を最小限に抑えられるようになったという。

ICTで質の高い工事と情報セキュリティを強化 地域のインフラを守るため建設DXに挑戦 白雪興産(香川県)
白雪興産が取り組む工事の様子

複数の現場に分かれて作業をすることが多いので、VPNは社内の情報共有にも効果を発揮している。本社のサーバーに設けた共有ファイルに図面などの資料を保存しておけば、従業員全員がパソコンやスマートフォンを通じて資料を確認できるので作業を円滑に進めることができるという。

情報セキュリティ強化にUTMをバージョンアップ

VPNの導入とあわせて、不正アクセスの侵入を防ぐファイアウォールの機能に加え、ウイルス対策、Webフィルタリング、不正侵入防御、不正侵入検知といったさまざまなセキュリティ機能を備えた機器、UTM(Unified Threat Management=統合脅威管理)をバージョンアップした。ウイルスに対するデータが頻繁に更新され、常時不審なアクセスを監視してくれる。「従来から情報管理対策を実施し、コンピューターウイルスなどの被害を受けたことはなかったのですが、中小企業を標的にしたサイバー犯罪が増加する中、公共工事に携わる企業の責任として更に情報セキュリティを強化する必要があると思い、バージョンアップを決断しました」と鈴木社長は説明した。

ICTで質の高い工事と情報セキュリティを強化 地域のインフラを守るため建設DXに挑戦 白雪興産(香川県)
白雪興産のオフィスの様子

工事現場でICT測量器やドローンを活用

香川県が、ICT建設機械や3次元設計データの作成といったデジタル技術の使用を入札参加条件とする工事を増やしていることを受けて、施工現場でのICT導入にも力を入れている。2023年1月に、位置出し、丁張りといった本来は複数で行っていた測量作業を1人で行うことを可能にするICT測量器を導入したほか、上空からの測量にドローンを活用している。「これからの公共工事は、ICTの活用が標準になっていくことが予想されるので、体制をしっかりと整えていきます。新しい技術に慣れるのに時間がかかるのは仕方ありません。ICTが便利ということを従業員に実感してもらえるように、費用対効果を考えながら現場で使う機会を増やしていくつもりです」と鈴木社長。

ICTで質の高い工事と情報セキュリティを強化 地域のインフラを守るため建設DXに挑戦 白雪興産(香川県)
白雪興産は測量にドローンを活用している
ICTで質の高い工事と情報セキュリティを強化 地域のインフラを守るため建設DXに挑戦 白雪興産(香川県)
測量でドローンを活用する様子

従業員に資格、技術の取得を奨励

白雪興産は、人材の採用と育成に力を入れ、土木施工管理、コンクリート診断、建設機械の運転・操作といったキャリア形成につながる資格、技術の取得を奨励している。資格取得のための講座の受講料を会社が負担するなど様々な形でバックアップしている。「従業員一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境づくりにこれからも取り組んでいきたい」と鈴木社長は話す。

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白雪興産が所有するトラック

建設キャリアアップシステム(CCUS)を導入

現在、国土交通省と建設業団体が普及を進める建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入を進めている。CCUSは技能者としての資格や現場での就業履歴などをICカードに登録、蓄積することで、技能と経験を客観的に評価できるようにしたシステムで、そのポテンシャルに注目が集まっている。「働く人たちの実績を蓄積して見える化できる、これからの建設業界にとって必要不可欠なシステムと思っています。就業管理など他のシステムとの連携を検討していきたい」と鈴木社長はCCUSについて話した。

2023年3月、ホームページを一新して情報発信を強化

2023年3月に情報発信力を強化しようとホームページを一新した。写真を豊富に掲載し、会社概要や施工実績だけでなく、ICTへの取り組みについても発信していきたいと考えている。「手がけた仕事を形にして残すことができるのが建設業の大きな魅力です。誇りを持って取り組むことができる仕事だということを、若い人を中心に伝えていきたいですね。ICT施工に関心を持っている人へのアプローチにも力を入れていきたい」と鈴木社長は熱い口調で語った。一歩一歩着実にICTの導入を進めている白雪興産。公共事業を担う責任感と地域活性化への思いが、ICT活用の原動力になっている。白雪興産の一連の取り組みからそのことを強く感じた。

企業概要

会社名株式会社白雪興産
本社香川県高松市池田町439
HPhttps://www.shirayuki-kosan.com
電話087-840-3223
設立1998年4月(創業:1966年6月)
従業員数20人
事業内容 土木工事業、とび・土木工事業、石工事業、舗装工事業、浚渫(しゅんせつ)工事業、塗装工事業、水道施設工事業、解体工事業