カロリーオフ、低糖質、トクホは本当に体にいいのか?
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(本記事は、中戸川 貢氏の著書『ワースト添加物 これだけは避けたい人気食品の見分け方』=ユサブル、2023年5月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

不健康なカロリーオフ商品、特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品の怖さ

近年、健康志向食品であるカロリーオフ、特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品の需要はますます高まっていますね。ちょっとお金を出してでも「いいもの」を買いたい、そういった消費者の消費行動を私は6パターンくらいに分類しています。

「自然派」「健康派」「環境派」「ブランド派」「味覚派」「レトロ派」。

ワースト添加物 これだけは避けたい人気食品の見分け方
(画像=『ワースト添加物 これだけは避けたい人気食品の見分け方』より)

この中の「健康派」の人たちがカロリーオフ商品や、特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品を買っているようです。しかし、私はこれらの商品は場合によっては不健康だと考えています。

例えば、気をつけてほしいトクホや機能性表示食品の一つに「難消化性デキストリン」(水溶性食物繊維) があります。食後の血糖値上昇抑制作用や中性脂肪の上昇を抑えるという人工的な食物繊維です。

そもそもトクホや機能性表示食品をあまりご存じない方のために消費者庁のHPから簡単に説明すると。

◦特定保健用食品(トクホ)

からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品。食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければならない。《中省略》

◦機能性表示食品

国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度。国が審査を行わないので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要がある。《中省略》

難消化性デキストリンは特定保健用食品、機能性表示食品、どちらでもよく目にする商品です。しかし、難消化性デキストリンのような人工的な食物繊維は、私はあまり摂りたくないです。

デキストリンとは、ジャガイモやトウモロコシのでんぷんの一種で、そのでんぷんを大雑把にぶつ切りにしたものです。体内でさらに分解されてぶどう糖になるので、体に悪いものではありません。

一方、トクホなどで使われる難消化性デキストリンは人の体では「消化しにくいデキストリン」で、水溶性食物繊維の一種です。水溶性の食物繊維なら体にいいのでは? と考える人もいるかと思いますが、野菜や穀物由来の食物繊維と違い、栄養素としてのビタミン、ミネラル、ポリフェノールを含みません。つまり、難消化性デキストリン「だけ」を摂ると、ミネラル不足で体に負担がかかるのです。

食物繊維は体にいいイメージがあるかと思いますが、野菜、豆やイモの食物繊維はそれ以外にたんぱく質やビタミン、ミネラルも入っている食物繊維です。

難消化性デキストリンには食物繊維しか入っていません。ミネラル不足を引き起こす可能性があります。

難消化性デキストリンの機能には糖や脂肪の吸収スピードを抑える、整腸作用、内臓脂肪低減などがありますが、「ミネラルの吸収を促進する」ともいわれています。これは正しいのですが、栄養学の辞典には「ミネラルの吸収を阻害する」とも書かれています。どっちが正しいんだ!? と思うでしょう? 両方正しいのです。ややこしいですよね。

「難消化性デキストリン」は物理的に腸からのミネラルの吸収を阻害します。一方で、腸内細菌を増やし、その腸内細菌が作り出す物質がミネラルの吸収を促進します。ミネラルの吸収を促進もするし阻害もするのが「難消化性デキストリン」なのです。人によって、メリットが強く出る人とデメリットが強く出る人がいます。

腸が健康、つまりミネラルが普段からしっかり摂れている人には腸内細菌のいいエサになるけれども、ミネラル不足の人が「難消化性デキストリン」だけを摂ると腸内細菌のエサになるかどうかわからないのです。なぜなら、腸内細菌は自分自身が増殖するのにミネラルが必要だから。ミネラルと同時に食物繊維がくれば、自分も増殖して有機酸を生成してミネラル吸収の効果は得られますが、もしかしたら腸内細菌の十分なエサにならずに、ミネラル吸収を阻害して終わってしまうかもしれません。ならば最初から野菜、豆、イモ、海藻などの食品からミネラルと一緒に幅広く食物繊維を摂ったらいいじゃないかという話です。

それとトクホ茶。濃い緑茶とか紅茶、コーヒー、ココアとかのトクホ茶、カテキン緑茶などもそうですが、タンニン、カテキン、クロロゲン酸、カフェインなどの成分は、物理的にミネラルの吸収を腸で邪魔しやすいです。濃い緑茶や濃いコーヒーは食事と一緒というより食後以降、できれば3時のお茶のタイミングで洋菓子や和菓子と一緒に飲むのがいいと思います。ポリフェノールは糖分の吸収や血糖値の急上昇を防ぐためにはいい仕事をしますが、ミネラル相手には邪魔する方向に作用してしまいます。せっかくの食事中にミネラル吸収を邪魔してほしくありません。

フランス料理のコースでも、いきなり前菜の段階から紅茶にしますか、コーヒーにしますかとは聞かないですよね。まずは白ワインとかシャンパンみたいな酸っぱい成分を含むワインをすすめてきます。あれはミネラルの吸収を高めるからなのです。

食中茶としては、麦茶とかほうじ茶、ルイボスティー、浅く入れた緑茶がよいのではないでしょうか。

つまり、「私はこれが食べたい」ではなくて、「低糖質だからいい」とか「機能性表示食品なら健康的」という気持ちでこれらトクホや機能性食品を手に取っているとしたら、必ずしも健康的ではないということをお伝えしたいのです。

いくら国が認可したとはいえ、「自分の腸に合っていないのに食べ続けたりしていませんか」ということです。

健康食品の「健康」が万人にとって「健康」とは限りません。自然食品もそうです。玄米食が万人に合うわけではありません。例えばオーガニックの小麦だからといって、実は小麦のグルテンが腸に合っていない可能性もあります。目で見えるわかりやすい表示からもう一歩自分で考えて選ぶことが大事です。

よくオジサンでいます。コンビニ弁当と菓子パンで健康な人が(笑)。そういう人は消化酵素がよく出る人です。なんでも胃酸で溶かせるのです。「俺、胃もたれとか肩こりってなったことないんだよね」みたいな人いるでしょう(笑)。そういう人と一緒に考えてはダメだということです。体は一人ひとり違います。それはもう遺伝的なものなので、真似してもしょうがないことですね。

ワースト添加物 これだけは避けたい人気食品の見分け方
中戸川 貢
1969年生まれ神奈川県出身。食品機械メーカー、清酒メーカー、お餅メーカー、醤油メーカー勤務を経て、NPO法人食品と暮らしの安全基金で、主に加工食品のミネラル成分や食品添加物「リン酸塩」を調査。独立後は、食品企業の品質管理や販売支援を行う。また、ミネラル不足や添加物について全国各地で講演。一般社団法人ナチュラル&ミネラル食品アドバイザー協会代表理事。加工食品ジャーナリスト。

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