M&Aコラム
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こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界専門グループの渡邉智博です。
当コラムは日本М&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回はアフターコロナの外食M&Aがどのように変化しているかをお届けします。

3期連続で増益の外食業界。その5大理由。

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2023年4月21日の日経新聞によれば、外食大手・中堅14社の2024年2月期は営業利益合計が前年比4倍の233億円の見通しとのことです。
それでも新型コロナウイルスが流行する前の水準には届いていませんが、業績回復には大きく5つの背景が見えてきます。

1つ目「価格転嫁」

コロナ禍やウクライナ問題などに伴う国際的な物流網の混乱だけでなく、世界的に見れば人口爆発が続いていて食料品の貴重さが増す中で、人口の多い中国やインドが経済力をつけることで食料自給率の低い日本は食品輸入においても高い金額を支払わなければならない状況が続いています。そのような中で、大手・中堅企業は相次いで値上げを行いました。

2つ目「営業時間の延長」

特に居酒屋業態を中心に新型コロナウイルスが5類に移行することを受けて、従前よりも営業時間の延長を行う企業が増えました。

3つ目「不採算店舗の撤退」

例えば、リンガーハットは2021年2月期に128店舗を閉店し、今期は4億円の黒字を見込んでいます。

4つ目「コスト削減」

これは仕入れの内製化や共通化、自動発注の推進。配膳ロボットなどのDX化による人件費削減などを指しています。

5つ目「海外展開」

冒頭で述べた通り、世界的には人口が増えるにあたって市場規模は拡大しています。

これら5つの要因を振り返っていくと、大手・中堅ならではの施策と考えられます。価格転嫁も大きな意思決定で簡単にできることではないですし、不採算店舗を撤退するにも撤退コストが必要です。深夜営業を強化するにしても人員採用が必要で、配膳ロボットなども長期的には人件費をカバーできるにしても初期投資が必要になります。海外展開にかかる投資やノウハウも言わずもがなです。

このような時代背景を考えるに、中堅・中小企業が今後、存続と発展していくためには、大手との資本提携すなわち、M&Aが鍵となってくるでしょう。

2023年の外食M&Aの動向

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近年、上記の5大理由を反映するかのようなM&Aが加速しており、2021年~2022年の1年間で外食産業のM&Aは20%前年比で増加しました。

例えば、カレーハウス「 CoCo 壱番屋」を経営する壱番屋は、2020年7月にエージーピーから、工場野菜生産・販売事業を譲受けしました。

壱番屋のIRによれば、生鮮野菜の価格高騰や必要量の確保難といった自社でのコントロールが及ばない難しい状況が頻発しており、対応策のひとつとして植物工場を取得して、自社で野菜を栽培することを検討しているそうです。
まさに仕入れの内製化のためのM&Aと言えるでしょう。

更に同年12月には壱番屋は「成吉思汗(ジンギスカン)大黒屋」を経営する大黒商事も譲受けました。 大黒屋は1店舗のみの経営ではありましたが、観光客のみならず地元の顧客からも愛される人気店でした。創業者の夢が多店舗展開であり、当時1,480店舗を運営する壱番屋に夢を託したM&Aとなっています。

当時1店舗のため壱番屋全体に与える影響は小さなものだったかもしれませんが、各社の不採算店舗の撤退など、市場に優良な空き物件も増えているアフターコロナを睨んでのM&Aだったのかもしれません。 また、2023年3月にも壱番屋は、濃厚豚骨魚介つけ麺を関西に広めたとされる「麺屋たけ井」を運営する竹井を譲受けしています。

このように大手を中心として、アフターコロナに向けたM&Aが増加してきており、2023年2月には「すき家」や「はま寿司」を運営するゼンショーホールディングスは、ハンバーガーの「ロッテリア」を譲受けしました。

IRによればゼンショーの持つ食材調達、物流、店舗運営機能がロッテリアとのシナジーを生むとのことだが、これらも内製化による収益性改善の一例と言えます。

2023年3月には「丸亀製麺」を運営するトリドールホールディングスは英国でレストランを展開するフルハム・ショアの株式を約151.3億円で取得すると発表しました。これまでもトリドールは明確に海外展開に力を入れている企業です。

中堅・中小企業の発展の秘訣はM&Aにあり!

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大手企業の動向を見ていると今後の外食産業の大きな流れが見えてきます。ただ、この流れは大手企業だけのものではありません。
壱番屋が1店舗経営だったジンギスカンの大黒商事を譲受けされたように、大企業と中堅・中小企業のM&Aは想像以上に身近なところにあります。

2022年12月に、サンマルクホールディングスは京都で「喫茶マドラグ」を営むLa Madragueを譲受けしました。

マドラグは食べログの喫茶100名店に選ばれる人気店ですが、売上は4店舗で売上1億4,800万円でしたので、決して大きな規模で展開している企業ではありませんでした。
また公表データによれば、営業損益は2,700万円の赤字で、200万円の債務超過だったそうです。

それでもサンマルクは、この数字であれば自社のノウハウを活かすことで改善可能と判断したからこそM&Aを実行されたのでしょう。

コロナ以前は、食品業界においては外食がM&Aの中心となっていましたが、2020年、2021年と大きくその数を減らしてきました。

それが復調し始めたのが2022年です。
2023年はきっと2022年を上回るペースで外食のM&Aが再度活発化していくことでしょう。

中堅・中小企業のオーナー様にとっても、これまで抱えてきた自社の課題がM&Aで一足飛びで解決できるチャンスとなるかもしれません。
私ども食品業界専門グループでは、食品に特化してM&Aの支援をさせていただいております。是非、一度、ご相談いただけますと幸甚です。

いかがでしたでしょうか?
今後も食品業界専門グループから最新の業界情報をお届けさせて頂きます。

■食品業界専門チームビジョン■
日本全国に点在する優れた食文化をM&Aで存続させ、全国に広める

著者

M&Aコラム
渡邉 智博(わたなべ・ともひろ)
日本M&Aセンター 業界再編部 食品業界専門グループ シニアチーフ
大学卒業後、リクルートに入社。法人営業や営業マネージャー等を経験し、日本M&Aセンターに転職。2020年度には同社で最も多くの食品製造M&Aを成約へと導いた。2022年にはバーチャルレストランのM&Aも手掛け食品業界の最新トレンドにも明るい。著書に「会社を売る力 業界再編M&A最前線」​「The Story 食品業界編」​(共にクロスメディア・パブリッシング)
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