タブレットPOSレジ+統合型販売管理で販売状況を瞬時に把握 勤怠管理にも活用へ かゞみや(福井県)

目次

  1. 「鏡屋」が原点で、「透き通るような正直な商売を」
  2. 情報の見える化は2019年だった
  3. 敦賀延伸を前にした嶺南地域への初出店、課題はレジ
  4. タブレットPOSレジの圧倒的な低コストと利便性
  5. リアルタイムの売上グラフ、そして年齢層と男女比の円グラフ
  6. クーポンの確認作業も大幅軽減
  7. 商品の登録も店舗で実施
  8. 年配の店員でも「ムリなくできる」
  9. 「勤怠管理にも活用へ」
  10. 敦賀延伸を機に、嶺南での地盤確保を目指す
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

2024年春に迫った北陸新幹線の敦賀延伸を1年半後に控えた2022年10月、贈答品店を福井市などで手掛けてきた株式会社かゞみやは、JR敦賀駅前の再開発施設に敦賀駅前店をオープンさせた。そこに取り入れたのは、既存の販売管理システムに連動させたタブレットPOSレジ。事務作業の軽減につながった上に詳細な売上状況を瞬時に確認でき、売上増への足がかりとなった。今後はタブレットPOSレジを店員の勤怠管理にも活用する方針だ。(TOP写真:敦賀駅前店の前で、タブレットPOSレジ導入の劇的効果を語る木瀬將盛代表取締役)

「鏡屋」が原点で、「透き通るような正直な商売を」

株式会社かゞみやの設立は1953年10月だが、その原点は「鏡屋」。遡れば、戦国武将の加藤清正が北野天満宮に奉納し、今も大切に保管されている「日本地図鏡」を作った京の鏡師、木瀬浄阿弥(きせ・じょうあみ)にたどれる。その浄阿弥の何代も後の木瀬長兵衛が昆布や新巻鮭を扱う商売を始めた。その際の屋号が「鏡のように透き通るような正直な商売をしよう」と決めた「かゞみや」。以来、福井市を中心とした福井県北部・嶺北(れいほく)地域で贈答品店を展開してきた。

一時期はテレビCMも行い、嶺北地域で贈答品となれば「かゞみや」となり、県南部の嶺南地域でもCMを通じて知らぬ人がいないほどの店になっている。

情報の見える化は2019年だった

嶺北地域で堅実な商売を続ける中、課題となっていたのは売上と仕入で分かれていた管理システムだった。「システムがバラバラだったので、一度不具合があると対応するのが大変だった」(木瀬將盛代表取締役)のだ。このため、2019年には販売管理システムを更新させ、全体を統合したシステムとして管理できるようにした。

敦賀延伸を前にした嶺南地域への初出店、課題はレジ

そのかゞみやが株式会社になってからの5代目、木瀬社長は敦賀延伸を前にした2022年10月、満を持して敦賀駅前店をオープンさせた。30年以上ぶりの新規出店だった。場所は、北陸新幹線の敦賀延伸を前に同駅前に昨秋開業した再開発施設「otta(オッタ)」。おみやげ・ギフト専門店として観光客だけでなく、地元の人たちの取り込みも目指した。

タブレットPOSレジ+統合型販売管理で販売状況を瞬時に把握 勤怠管理にも活用へ かゞみや(福井県)
再開発施設「otta」の芝生広場。親子連れや観光客の姿が多く見られた

準備は開店の1年以上前に始めた。最大の課題はレジだった。従来のPOSレジでは商品登録を店で行えず、売上の分析も閉店後でないとできなかったからだ。

タブレットPOSレジの圧倒的な低コストと利便性

そこで相談したのが、何十年来のつきあいがあるシステム支援会社。タブレットのアプリで会計を済ませるタブレットPOSレジを提案された。今も福井市内など5店舗で使うPOSレジは、「重い上に高くて不便」。それに比べると、「スマートで軽くて、便利。さらには安かった」。木瀬社長は「従来のPOSレジだと1台100万円かかるところ、半分以下で済む。タブレットPOSレジの完勝でした」と話す。

タブレットPOSレジ+統合型販売管理で販売状況を瞬時に把握 勤怠管理にも活用へ かゞみや(福井県)
商品の会計もスムーズな敦賀駅前店

その敦賀駅前店。木瀬社長が笑顔を見せる横では、レジスペースのすっきりしたカウンターで、店員がタブレットを操作しながら顧客に対応。次々に訪れる客を待たせることなく、さばいていた。

リアルタイムの売上グラフ、そして年齢層と男女比の円グラフ

既存の販売管理システムとタブレットPOSレジの連携は予想より時間がかかったが、期待通りの動きをした。木瀬社長が、手にしたスマートフォンの画面を何回かクリックした。すると、敦賀駅前店の売上グラフがさっと表れ、「今日は売れ行きがいい」とにっこり。「平日は午前中に地元の人、午後は観光客、夕方は地元の会社帰りの人たちで売れる」と話した。

タブレットPOSレジ+統合型販売管理で販売状況を瞬時に把握 勤怠管理にも活用へ かゞみや(福井県)
現金にもカードにもスムーズに対応できるタブレットPOSレジ

さらに操作していくと、年齢と男女の比率が円グラフになって現れ、売れた商品の個数や販売金額の一覧もさっと表示された。「POSレジだと閉店後にならないとわからない売れ行きがリアルタイムにわかる。会計時に店員が年齢と性別を打ち込むため、年齢や性別の比率はタブレットPOSレジになって初めて把握できた。これは大変ありがたい」と話す。

クーポンの確認作業も大幅軽減

タブレットPOSレジを導入して作業が大幅軽減できたのが、クーポン処理の確認作業。旅行クーポンだけで国や県、市、旅行会社などさまざまな発行元があり、確認作業は必須。以前のPOSレジでは、売上状況がプリントされたレジ内のロール紙を引っ張り出し、使用されたクーポンと照らし合わせる必要があった。今は、スマートフォンやタブレットの画面上に売上一覧を呼び出して照合できる。木瀬社長によると作業の煩雑さがまったく違うといい、「日々30分から1時間の作業時間軽減につながっている」。

商品の登録も店舗で実施

さらに本社の事務作業軽減につながっているのが、商品登録。敦賀駅前店では、商品名や売価、消費税額、仕入れ値などの情報をすべてタブレットPOSレジで済ませることができるため、本社事務員の手を煩わせることはない。

タブレットPOSレジ+統合型販売管理で販売状況を瞬時に把握 勤怠管理にも活用へ かゞみや(福井県)
カウンターの上もさっぱりしている敦賀駅前店のカウンター

年配の店員でも「ムリなくできる」

事務作業が軽減されて売れ筋商品が手に取るようにわかる上、今のレジよりコストがかからず、カウンターの場所も取らない。いいことづくめのタブレットPOSレジは当然、他店にも導入予定だ。

「課題」と思われがちなのが、50代、60代の年配の店員に使いこなせるかどうか。既存店には年配の店員が多いが、木瀬社長は「さほど難しいわけではないので、だれでも使いこなせる」と気にしていなかった。

「勤怠管理にも活用へ」

タブレットPOSレジの新たな活用方法として木瀬社長が目指している分野が勤怠管理だ。現在はタイムカードを使って出退勤を管理。各店員が毎月出勤簿を記し、事務員がその出勤簿を見ながら毎月の勤務時間を打ち込んで給与に反映させている。タブレットPOSレジを使うと全く違う。店員は出社と同時にタブレットPOSレジに出勤チェックし、帰宅の際にも退勤チェックを行うだけ。出勤簿は不要だ。本社事務員も勤務時間を入力する必要がなく、自動的に給与に反映されるという。タブレットPOSレジによる勤怠管理は、1年以内の導入を目指している。そうなればますます社員の事務負担は軽減され、余力が生まれる。そこで木瀬社長が目指すのは、ECサイトの充実や電話などの顧客対応の強化だ。

敦賀延伸を機に、嶺南での地盤確保を目指す

2015年3月に金沢駅まで開業した北陸新幹線は、石川県内に大きな観光需要をもたらした。敦賀延伸に対する福井県内の期待は大きいが、木瀬社長は「開業効果は、厚底ブーツ。いずれ削れて元に戻る」と気を引き締めてかかる。

タブレットPOSレジ+統合型販売管理で販売状況を瞬時に把握 勤怠管理にも活用へ かゞみや(福井県)
在来線の敦賀駅の奥に見える北陸新幹線の新駅舎

敦賀駅前店で目指す本丸は観光客需要の取り込みではなく、嶺南地域の人たちの取り込みなのだ。その本丸に向け、かつてのテレビCMによる知名度は大きな力となる。そして、もう一つの力が、年齢や性別、売れ筋商品が手元でリアルタイムにわかり、事務負担を大幅に軽減させるタブレットPOSレジだ。

企業概要

会社名株式会社かゞみや
本社福井県福井市城東4-1-25
HPhttp://www.kagamiya.co.jp/
電話0776-26-7001
設立1953年10月1日
従業員数14人
事業内容福井県内の6店とECサイトで越前名産品・贈答用品・地酒などを販売