肝硬変の恐怖 「沈黙の臓器」肝臓でも自覚症状が表れる
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(本記事は、浅部 伸一氏の著書『長生きしたけりゃ肝機能を高めなさい』=アスコム、2023年4月5日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「肝硬変」になってしまったらどうするか

肝臓の線維化が進むと肝臓が硬くなる

脂肪肝で炎症が起きて線維化が進むと脂肪肝炎になり、それが慢性化すると「慢性肝炎」になります。

慢性肝炎で肝臓の線維化がさらに進んでいくと、肝臓が硬くなって機能しなくなる「肝硬変」になります。

脂肪肝でなく、ウイルス性の肝炎も、線維化が進めば同じように肝硬変になります。

「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓でも、肝硬変にまで進めばさすがに自覚症状が出てきます。「疲れやすい」「食欲が落ちる」などのほか、体重が落ちることもあります。肝臓の血流が滞って、痔になる人もいます。

肝硬変になってしまうと危険だとさんざん脅かしてきましたが、では実際に肝硬変になると、どういうことになるのでしょうか。

例を挙げましょう。肝臓以外にもいろいろな不都合が起こります。

たとえば、血液の「凝固因子」と呼ばれる物質はたくさんありますが、そのほとんどが肝臓で作られています。肝硬変になると、その血液の凝固因子が作られなくなり、ケガをしたときなどに血が止まりにくくなります

また、コレステロールをはじめとして、いろいろな免疫系に重要な物質も不足するので、免疫力がとても落ちて感染症にもかかりやすくなります

肝臓は食べ物に含まれたアミノ酸を材料に、タンパク質を作ります。これは代謝の機能のひとつです。タンパク質にもいろいろな種類がありますが、「アルブミン」はその代表格です。

ところが肝硬変になると、肝臓の代謝機能が十分に働かないので、このアルブミンも減ってしまいます。アルブミンには血管の浸透圧を保って、血液を安定化させる働きがあります。そのアルブミンが減ってしまうことで、血液が血管の中に保たれなくなり、お腹に水(腹水)がたまったり、むくみが出たりします

肝硬変にもA・B・Cの3段階がありますが、進行したB段階の肝硬変から、このような症状が出てきます。肝硬変の人の約半数が、このレベルに進んでいます。

長生きしたけりゃ肝機能を高めなさい
浅部 伸一(あさべ・しんいち)
肝臓専門医。自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科元准教授。
1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学附属病院、虎の門病院消化器科等に勤務。国立がんセンター研究所で主に肝炎ウイルス研究に従事し、自治医科大学勤務を経て、アメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に肝炎免疫研究のため留学。帰国後、2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在はアッヴィ合同会社所属。 専門は肝臓病学、ウイルス学。好きな飲料はワイン、日本酒、ビール。

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