大事な決断はこの時に 脳のパフォーマンスのピークタイムとは
(画像=One/stock.adobe.com)

(本記事は、白濱 龍太郎氏の著書『ぐっすり眠る習慣』=アスコム、2023年2月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

大事な用事や決断は目覚めから4時間後に設定する

睡眠から目覚めた直後の人間の身体は、エンジンをかけたばかりのクルマのようなもの。自律神経のバランスは、リラックスさせて身体の機能を休める「ブレーキ」役の副交感神経から、エネルギッシュな活動をうながす「アクセル」役の交感神経に切り替わる途中の段階です。

では、どうすればアクセル全開の状態へとスムーズに切り替わるでしょう?

そのために必要なのが、強い光による刺激です。これがシグナルとなって、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップして眠気が弱くなり、交感神経が優位な状態へと移行しやすくなります。このメカニズムは、外から差し込む太陽の光で作動します。

おすすめは、起床後に3000ルクス以上の光を10分程度浴びることです。外の直射日光は10万ルクス、ベランダは3000~5000ルクスのため、ぜひ起床後5分程度、窓際やベランダでストレッチをしてみてください。

朝のうちにしっかり太陽光を浴びることで、体内時計が調整されるというのも重要なポイントです。太陽光に直接あたらなくとも、強めの光を見るだけで効果があります。雨の日や、テレワークで自宅の外に出ないような日には、起床から4時間以内、午前中のうちに窓から外の景色を眺めてみてください。これだけでも、体内時計を調整することができます。

人間の脳は基本的に「起きてから時間が経過するほど働きが 鈍く(にぶ) なる」ものです。さすがに起きた直後はまだエンジンが十分に回っていない状態ですが、しばらくすると一気にピッチが上がって、活発に働きはじめます。そのピークがくるのは意外に早く、起床から約4時間後。午前7時に起きる人なら、午前11時前後がピークです。

ぐっすり眠った翌朝には、ドーパミンというホルモンが脳内にしっかりチャージされた状態となります。ドーパミンはやる気や集中力、幸福感などを高める効果のある神経伝達物質で、日中のエネルギッシュな活動の源となるもの。起床からしばらくすると、活発に働きはじめます。そしてドーパミンからは、交感神経の活動を高める効果のあるノルアドレナリンが生成されます。この働きによって積極性が高まり、血圧や心拍数が上昇。日中の活動に適したコンディションとなるわけです。

脳のパフォーマンスは午前中にピークを迎えて、そこからはなだらかな坂道を下るように、ゆっくりと下降していく。そう考えると、重要な会議などは、集中力だけでなく積極性や決断力も高まる午前中にやったほうがいいでしょう。

重要性や緊急性が高く、思考力や決断力が要求される用件から順番に片づけていくのが、もっとも効率がいい「1日のワークフロー」です。朝からメールチェックをして、いつの間にか午前中が終わるというのは、あまりいい仕事の方法ではないといえます。

結婚や転職、不動産のような大きな買い物といった「自分の将来を左右するような重要な決断」も、最終的なジャッジは午前中がいいかもしれません。重要な案件であればあるほど、頭が冴えている午前中に片づけるようにすべきでしょう。

ぐっすり眠る習慣
白濱 龍太郎(しらはま・りゅうたろう)
睡眠専門医
筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学修了(医学博士)。公立総合病院睡眠センター長などを経て、2013年に「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を設立。これまで2万人の睡眠に悩む人を救ってきた。自身がオンオフを切り替えるのが苦手だったという過去から、いかに睡眠が日中の活動に影響するかを実感し「睡眠投資」という考えを発信。マイクロソフト、PHILIPSなど世界的企業での講演や、東京オリンピックでは選手村で選手をサポートするなど、ビジネスやスポーツ界からの信頼も厚い。慶應義塾大学特任准教授、国立大学法人福井大学客員准教授、武蔵野学院大学客員教授、日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフ、ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員などを兼歴任。『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』『いびきを自分で治す方法』(アスコム)など著作多数。「世界一受けたい授業」(日本テレビ)、「めざましテレビ」(フジテレビ)などメディアにも広く出演している。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます