ライバル企業同士が、環境などの非競争分野で協力するケースが増えている。
日本コカ・コーラとサントリー食品インターナショナルは5月18日、「ボトル to ボトル」水平リサイクル(※)の認知拡大に向けて協業し、2社の啓発ロゴを組み合わせた広告を各地で掲出している。花王とライオンは16日、水平リサイクルで再生材料を一部使用したつめかえパックを初めて製品化したと発表した。
※「水平リサイクル」=使用済み製品を原料として用いて同一種類の製品につくりかえるリサイクルのこと。
どちらの取り組みも各市場を牽引するライバル企業同士が協業したもの。日本コカ・コーラの田中美代子副社長は、次のように話す。「サスティナブルな社会は、一社だけの努力で実現できるものではありません。志を同じくする皆様と積極的に連携しながら、地域社会によりよい変化をもたらしたいと考えます」。
コカ・コーラとサントリーが活動を進める背景には、ペットボトルはリサイクル適性が高く、国内で再資源化の仕組みが整っているため、適切に回収すれば資源として何度も循環利用できるという特徴がある。そして、ペットボトルに再生する「水平リサイクル」をさらに推進することにより、新規資源の使用削減と容器由来の廃棄物削減に貢献したいという両社の考えがある。
2社はこれまでも各社の企業努力で「ボトル to ボトル」水平リサイクルを推進してきた。だが、さらなるボトルtoボトル水平リサイクル率の向上には、「ペットボトルは資源」という認知を広げることと、消費者や関係者の理解・協力が必要になる。そこで、市場を牽引する2社が協業することで人々の関心を集め、「ボトル to ボトル」水平リサイクルの普及・定着を図るねらいだ。なお、今回の協業はリサイクルの啓発(コミュニケーション)に限ったものという。
この「ボトル to ボトル啓発広告」は、広島県で開催される「G7 広島サミット」にあわせて、18日~21日まで東京・広島を中心に交通・屋外広告などへ掲出している。また、一般社団法人全国清涼飲料連合会とともに、「G7広島サミット」の国際メディアセンター(IMC)内へブース出展し、日本国内における「ボトル to ボトル」水平リサイクルの取り組みを紹介している。
一方、花王とライオンは、使用済みの容器を再び同じ種類の容器に戻す水平リサイクルで、再生材料を一部に使用したつめかえパックを製品化した。リサイクルした材料は約10%使用。これまでに花王が回収を実施してきた自治体のものに加え、花王・ライオンの協働で回収の実証実験を展開するイトーヨーカドー曳舟店(東京都墨田区)、ウエルシア薬局で回収したものが、今回のリサイクルつめかえパックに一部活用されているという。
花王とライオンは2020年9月に、プラスチック包装容器資源循環型社会の実現に向けて協働で取り組むことを発表し、洗剤やシャンプーなどのフィルム容器(つめかえパック)のリサイクルに共同で取り組んできた。その協働の成果として、2023年5月29日から順次、花王は衣料用濃縮液体洗剤「アタック ZERO つめかえ用(1620g)」を、ライオンは洗濯用液体高濃度洗剤「トップ スーパーNANOX ニオイ専用 つめかえ用超特大」を、一部店舗で数量限定発売する。
コカ・コーラとサントリー、花王とライオンの協業は、地球環境の保全など、ライバル関係を乗り越えてでも実現するべき目的を共有しているためだ。協働することで、より規模の大きい活動につなげることができ、消費者へのアピールにもなる。持続可能な社会への貢献を各社がビジョンに掲げる中、今後も非競争分野での協業は広がりそうだ。