アサヒビール・塩澤賢一社長と松山一雄新社長
(画像=アサヒビール・塩澤賢一社長と松山一雄新社長)

アサヒビールは2月22日、帝国ホテルで会見を開いた。3月16日付で新社長に就任する松山一雄専務取締役兼専務執行役員マーケティング本部長、取締役会長に就任する塩澤賢一社長が会見を行った。

【塩澤賢一社長】

2月14日に発表したが、新社長に松山が就任する。私は、アサヒグループジャパンの濱田賢司社長から「経験を活かして新社長を支えてほしい」ということだったので、会長に就任する。

2019年3月に就任して社長は4年間務めたが、1年後にはコロナパンデミックが始まり、3年間は厳しい環境のなかで経営することになった。私は1980年代に使われた“いつもいいことアサヒから”をモットーに、ワクワクするイノベーションをつくっていこうと打ち出した。そして「生ジョッキ缶」や「スーパードライ」の36年目にして初のフルリニューアル、「マルエフ」などに結実した。

また“ボリュームからバリューへ転換”すべきと訴えた。これが社内に浸透して、スマートドリンキングなどの成果につながった。2022年12月期の国内酒類の売上収益は108.9%の7,862億円、事業利益は111.9%の792億円と、増収増益を果たした。少しずつだがバリュー経営に近づいていると自負している。

国内酒類の陣頭指揮を執ってきたのが松山だ。マーケティング本部長として常に「お客様を真ん中に据える」と言ってきた。異業種のマーケティング経験を活かしてもらい、いわば酒類しか知らない私たちに大きな気付きを与えてくれた。これから私も会長として支えることで、ワクワクする価値の提供と、ビジョン「すべてのお客様に最高の明日を」の実現に尽力したい。

〈松山新社長「イノベーションのためにリスクを負える組織風土を目指す」〉
【松山一雄新社長】

グループの中核であるアサヒビールの社長、身の引き締まる思いだ。私の経営方針の大方針は「全社員でお客様にとって世界で一番魅力的な、ワクワクするビール企業にしよう」ということ。2018年9月に入社したが変わらないビジョンだ。

私は入社する前、一消費者として海外品と比べて日本のビールはうまいと思っていたが同時に微妙な思いもあった。味もパッケージも飲用シーンも似たり寄ったりで、市場縮小しているのにシェア競争ばかりしている、と。消費者にとってはイノベーションの起きない退屈な市場になってしまっているのではないか、もったいないな、と思っていた。

入社して思ったのも、最高の品質とコスト競争力、社員は意欲とボリュームの最大化への実行力もあるのに、経営資源も社員の気持ちもお客様に向かっておらず、ゼロサムの同質化競争から脱却できず、ボリュームからバリューへの転換ができていないということだった。私は一消費者として、ワクワクしたいという考えから、これまでのいわば常識にも挑戦しつつ、生ジョッキ缶、スマドリ宣言、マルエフ、スーパードライフルリニューアルなどにつなげてきた。

これからもバリュー経営とビジョンを堅持しつつ、社長として、具体的には、まず第1に「自分たちの未来は自分たちで作るという未来志向」だ。歴史や伝統を踏まえつつ、前例のない価値創造、ビジネスモデルに挑戦しよう。外部環境への対応に留まらず、未来のあり方からバックキャストした取り組みをしよう。

第2に「真ん中にお客様を据えるを徹底する」こと。マーケティングやR&D(研究開発)だけでなく、バリューチェーン全体で行わなければ意味がない。行動を変える。第3に「驚き・イノベーションを創発し続けること」。これもバリューチェーン全体でだ。イノベーションを起こすために、必要であれば、リスクを負う勇気と覚悟を奨励できるような組織風土にしていきたい。

第4に私の信条である「事業は人なり」の実践。ワクワクする提案ができるには社員がワクワクしていなければならない。お互いを認め合い、信頼し合い、明るく元気に切磋琢磨できる、自由闊達な組織にしたい。第5に「本業として取り組むサステナビリティ経営」の推進だ。以上の5つを旗印として、新しい経営をしていく。

最後にビールはじめ酒類は嗜好品であり、必需品ではないかもしれない。しかし正しく付き合えば、人生に彩りを与え、豊かにしてくれる良きパートナーだ。邁進していきたい。

〈酒類飲料日報2023年2月24日付〉