50歳で100km走る!
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(本記事は、鏑木 毅氏の著書『50歳で100km走る!』=扶桑社、2022年1月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

体重は軽いほうがいい、でも......

大前提として、100㎞に限らず、ランをするには体重は軽いほうがいいに越したことはありません。変形性膝関節症のリスクは減りますし、循環器系のリスクも軽減します。ラン自体に関しても、重りがなくなるわけですから、軽いほうが有利です。

ただ、勘違いしないで欲しいのは、初めに減量ありきではないという点です。あくまでも 「走れる身体」にするためにトレーニングを行う中で、結果的に体重が減っていくというように考える必要があります。

そのため、食事法も「体重を落とす」ことだけを考えないようにしてください。食事方法を大幅に変えるとか、極端に偏った減量用メニューにするとか、ストレスが溜まるような食事法は必ずリバウンドして逆効果になってしまいます。

理想を言えば、「自然な食事」と自分が感じることができる範疇で、運動をして体脂肪を燃やしつつ、気が付いたら減っていったというのが理想的です。

なぜランナーには「低糖質」なのか?

一方で、ランナーには向いている食事法があります。それが 「低糖質」です。

しかし、これはダイエットのための糖質ゼロなどとは異なります。

では、なぜランナーにとって低糖質が重要なのでしょうか? それは100㎞のような長丁場のランの場合、脂肪をエネルギーとして効率よく使える身体にしておくことが必要不可欠だからです。

私がアメリカで武者修行していた頃、私がカーボローディング(長距離を走る前に炭水化物を摂取すること)している一方で、アメリカのトレイルランナーの間では、「わざわざ糖を取り込むより、すでに身に纏っている脂肪を使うほうが効率的」という考え方だったのです。

ではどうすれば糖ではなく、脂肪を効率よくエネルギーとして利用できる身体になるのか。それは全体としての糖質摂取量を控えめにするだけではありません。血糖値が上がりにくい、GI値(食後血糖値の上がりやすさを示す指標)の低い食品にしたり、血糖値が急激に上がってしまうような食事スタイルを改めることです。

ランナーのための糖質制限

ランナーにとっての糖質制限は、ダイエットのためのそれとは異なります。そのため、糖質ゼロやそれに近いような極端な低糖質にする必要はありません。白米の量を少し減らすとか、タンパク質などの主菜をしっかり摂るようにするなどです。

まずは、ファーストステップとして、主食を今までの70〜80%にすることから始めると良いでしょう。不足分はタンパク質などのおかずで補います。この際、おかずは塩分や脂質が多くなりやすい傾向があるので、そこは気を付ける必要があります。

ファーストステップに慣れてきたら、今度はセカンドステップとして、糖質を50%まで落としてみましょう。

さらに、白米や通常の食パンの代わりにGI値が低い玄米や全粒粉のパンに変えるなど、低GI値の食品にすることでも急激な血糖値上昇を防げます。減らした糖質をこうした質の良い糖質に変えれば、一層効果的でしょう。

このように、まずは「自分が食べているものにどれくらい炭水化物が含まれているか」や、「GⅠ値の高い食品、低い食品」を知ることも重要です。

食べる順番を変えるだけでも変化は起きる

血糖値の上昇を防ぐためには、食べる順番も重要です。

いきなり白米から食べると、血糖値は急上昇しますが、最初に、食物繊維が多い大豆などのマメ科の植物や野菜などを食べておくだけで、血糖値の上昇は緩やかになります。

これは一回の食事の順番だけではありません。実は同じように食物繊維を多く含むものを食べることは、次の食事の血糖値上昇も抑えるという効果があります。また、低GⅠ値の食品は満腹感を持続させることもわかっています。

まずは、こうしたことに意識を向けることから始めて、その効果を実感すれば、スムーズに低糖質に移行できるでしょう。

50歳で100km走る!
鏑木 毅
1968年、群馬県生まれ。日本を代表するプロトレイルランナー。早稲田大学競走部に所属し、箱根駅伝を目指すも、故障で断念。公務員をしていた28歳の時、野山を走るトレイルランニングと出合う。2005年には日本国内の三大レースを制覇。'07年世界最高峰の100マイル(160キロ)レース「UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)」を日本人過去最高位の12位で走破、'09年には3位入賞を果たす。以降、'12年まで連続出場。'19年に50歳にして再びUTMBに挑戦。125位で完走を果たす。

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