矢野経済研究所
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昨年末、政府の総合経済対策の一環として「新規輸出1万者支援プログラム」と銘打った中小企業向け施策がスタートした。輸出に関心のある事業者を掘り起こし、事業計画の策定から販促支援まで、実務に精通した専門家が伴走支援する。補助金の対象範囲も広く、輸出にチャレンジしたい中小企業の背中を押すことが狙いである。とは言え、施策目標として掲げた「円安を活かした経済構造の強靭化」との表現には違和感を覚える。円安を輸出の契機とすることに異論はない。しかし、安さで訴求した顧客はいずれその価格では満足しない。政府が取り組むべきは「為替に左右されない強靭な経済構造」であって、中小企業のポテンシャルを国際競争力に高めることが施策の本意であって欲しい。

そもそも大手企業のサプライチェーンで鍛えられた中小企業の潜在能力は高い。海外勢もその実力を認識している。しかし、外国語対応力を含め、海外事業部門を持てる中小企業は多くない。つまり、そこに大きなミスマッチ、言い換えれば事業機会があるということだ。筆者はある展示会で、「貴社へ届いた海外からの問い合わせを買い取ります!」とアピールするスタートアップに出会った。社名は株式会社ノーパット(久保勇太社長)※、本業は大型機械、生鮮食品、危険品、小ロットなど言わば “一癖ある” 海外物流に強みがあるロジスティックス企業である。

同社のサービスはシンプルだ。例えば、外国語の引き合いメールを受け取ったA社が同社へこれを転送する。同社がこれを引き継ぎ、相手先との商談を進める。契約が成立すると同社が製品を買い取り、代金を円建で支払う。同社の利益はA社の国内出荷額に上乗せした手数料のみ、つまり、A社にとっては通常の国内売上として実質的な輸出が完結する。そこから先、輸出関連実務は同社の得意とするところだ。対応言語は10ヵ国後、筆者は社内を見学させていただいたが、若い外国人スタッフたちがオンラインで海外企業との商談を進めていた。

同社のビジネスモデルで注目すべきは単なる営業代行でも商社でもないということだ。「外国語の交渉は当社が代行する、製品も当社が買い取る。しかし、商談には必ず中小企業の担当者に同席してもらうなど、買い手である海外企業と作り手である中小企業との直接的な関係づくりを大事にしている。そうすることで取引の継続はもちろん、新たな事業機会の創出につながる」(久保社長)という。コロナ禍による移動制限は直接的な関係性の価値をこれまで以上に高めた。世界が再び開かれつつある今、まさに新たな市場開拓のチャンスだ。地方にはまだまだ自身の実力に気づいていない中小企業も多い。是非とも、円安のその先を見据えた戦略をもって、海外市場に挑戦していただきたい。

※株式会社ノーパット:
買取サービスURL:https://impuser.com
メインサイトURL:https://www.nopat.co.jp

今週の“ひらめき”視点 1.8 – 1.12
代表取締役社長 水越 孝