伊藤忠食糧 萩原氏
(画像=伊藤忠食糧 萩原氏)

最大輸入国である中国の動向は、ゼロコロナ政策の緩和が進まないなか、ごまの買い付けが停滞している。中国が買い付けをどうスタートするかが分岐点になる。

世界のごま生産量は500~550万t、貿易量は250万t前後。中国は100~110万t輸入するため、影響力が強い。ゼロコロナ政策を緩和し、経済活動を優先したときに、中国がどのような反応を示すか。年明けの春節に向けて、動向を注視したい。

中国の輸入量は9月時点で89.1万t。過去最高だった昨年を下回っているが、需要は堅調だ。港湾在庫は11月21日時点24.0万tで昨年同月比ではやや高水準である。今年も100~105万tに達しそうだ。輸入量の増加は、需要の底堅さに加えて、国内生産量の減少を補填する側面もある。中国の生産量は例年25万t~30万tだが、新穀は12万t前後を見込む。産地動向では、収穫期を迎えたナイジェリアは、中国の買付停滞で価格は緩んでいるが、通貨の為替が不安定かつ輸出コスト上昇を受け、横ばい傾向だ。

大雨や洪水による品質懸念、良グレード品の確保難、12月上旬に控える韓国テンダーやインドの減産による買付参入などにより、相場は反転堅調となる見込み。

アフリカ最大のごま産地であるスーダンは、播種面積が昨年比25%減、洪水や降雨の影響が懸念されるものの、旧穀のキャリーオーバー4万tに加え今季生産量約55万tを見込んでおり、港湾状況やコンテナ不足が解消されつつあり、概ね順調とみる。

〈主産地インドの収穫量も注目、日本の輸入量は昨年の約15万tから18万t前後に戻る〉
エチオピアは、2年間続いた内戦が11月2日に停戦合意した。新穀の収穫期であり、作柄は昨年に比べると良好、政府公式の発表は23万tとあるが、この数量は単収500kg/haを前提としているため、実態は16万t(単収350kg/ha)と現地シッパーは見込んでいる。

エジプトは、トルコに次ぐ金ごまの産地である。右肩上がりで日本への輸出量を増やしており、トルコの代替として重要な産地になってきた。トルコには日本と同程度のごま需要があり、自国消費でプレミアムがつくため、価格が高い。価格は、トルコ産3,000~3,500ドルに対して、エジプト産は2,000~2,200ドル。顧客の中には、原材料価格を抑えるため、エジプト産に切り替える動きもある。

それぞれの金ごまの特徴は、トルコ産は香りが強くコクがあり、エジプト産は淡白な風味とされている。用途に応じて使い分けができる。

世界のごまの主産地であるインドでは、カリフクロップの収穫が進んでおり、収穫量が注目されている。今季はラニーニャ現象を受けて15%減少、20万tを切る可能性がある。自国消費(加工輸出)の不足をアフリカ産から補填する動きも考えられ、マーケットへの影響が危惧される。

相場は、搾油用は5オリジン(ナイジェリア、ブルキナファソ、タンザニア、モザンビーク、ウガンダ)1,550~1,600ドル、食品用はナイジェリア産1,800ドル前後、エチオピア産1,900ドル前後、スーダン産1,850ドル前後となっている。

日本のメーカーの状況は、コロナ行動制限緩和により業務用が回復してきている。昨年の日本の輸入量は約15万tだったが、18万t前後に戻ってきそうだ。為替の円安の影響を含む原料高、諸コスト上昇が収益を圧迫しており、価格改定せざるをえない状況だ。

商社としては品質確保、原料価格をなるべく抑える努力を続ける。

〈大豆油糧日報2022年12月23日付〉