ウクライナ侵攻後の世界経済
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(本記事は、戸田 裕大氏の著書『ウクライナ侵攻後の世界経済』=扶桑社、2022年7月2日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

これから買うべき

資産私が一番おススメしたいのは、自分の見えている領域で勝負しましょうということです。自分の知らない領域よりも知っている領域のほうがそこに勝機を見出しやすいと思います。

私はミクロの世界のことをあまりよく知りません。良くも悪くも為替を通じて世界を見てきたので、全体感はある程度理解できていると思うものの、産業の構造や、個別の事情などにはそこまで詳しくないのです。

ですから私が取引をするのはマクロ経済を反映しやすい代表的な株価指数や、ドルや人民元などの外貨が大半です。個別企業への投資はたまに考えたりもしますが、まだ一度も取引したことはありません。

インデックス投資や通貨投資を推奨しているわけではなくて、自分の特技や特性は何なのか?そしてそれをわかったうえで、私の場合には大きな対象物に投資をしたほうがよいと考えています。

たとえば、医療関係の仕事に従事していればその領域については他の人よりも詳しいでしょうから、そこに一日の長があるということです。もちろんインサイダー情報と呼ばれる内部情報をもとに取引をしてはアウトですが、それを伝えたいのではなくて、知っているもの、見えているものに投資をしようということです。

私の場合、アメリカへの株式投資(現金を活用した資産形成)は今後も続けるつもりです。アメリカはその基軸通貨性からドルが国内に還流しやすい制度を整えており、また株主への権利保護が充実していることが大きな理由です。また破壊的なイノベーションを生み出す企業が続々と出てきて、母国語である英語ですぐに海外展開できることも大きな強みでしょう。

これ以外に資産を配分するとしたらイスラエルを検討します。

通貨も強含んでいますし、英語が通じ、グローバルに展開する企業が多いからです。またスタートアップに続々とチャレンジする国民性も魅力で、頭の回転が速い人が多いのも魅力な点です。

その次にインドでしょう。ですがインドの場合は通貨が弱いのと、ここは日本も含めてアジア全域の弱みでもありますが効率的な資本市場と言いますか、そもそも資本主義が骨の髄までは染みわたっていないので、そう考えるとイスラエルのほうが高パフォーマンスを発揮する気がします。

本文で何度も出てきたトルコですが、それでも私が投資することはないと思います。そもそもイスラム圏の国は経済成長しにくい印象がありますし、エルドアン大統領がインフレを抑制する意向がないので、リスクはかなり高いです。トルコは長年インフレと、それを抑えるための高金利に悩まされているのですが、その理由は国内の産業の競争力が弱いからにほかなりません。政治的な重要性と経済成長のポテンシャルがあることに疑いの余地はないですが、投資先としてどうかというと、現時点では私の選択肢に入りません。

金融商品と投資対象の分類とリスクリターンの関係について図にまとめましたので、投資や資産形成の参考にしてください。

ウクライナ侵攻後の世界経済
(画像=『ウクライナ侵攻後の世界経済』より)
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戸田 裕大(とだ・ゆうだい)
株式会社トレジャリー・パートナーズ代表取締役。2007 年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10 年間、外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして1日に数十億ドルの取引を執行するとともに、日本のグローバル企業300 社、在中国のグローバル企業450 社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019 年9月、CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けに、トレジャリー業務(為替・金利)に関するコンサルティング業務を提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(小社刊/ 2020 年)がある。

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