士業をはじめとする専門家にコンサルティングを指南している伊藤健太氏と、
コンサルタントとしても活躍する士業との対談(全3回)で、コンサルティングに取り組む極意に迫ります。
2回目のゲストは、経営計画のコンサルティングに取り組む行政書士法人小川事務所の小川一斗志氏。
“四度目の正直”でコンサル案件受注を叶えた小川氏の成功の秘訣とは?
「自分じゃなくてもいい仕事なのでは…」がコンサルを始めたきっかけ
――小川先生は現在、経営計画策定のコンサルティングも受注されていますが、
行政書士でありながらコンサルティングを始めようと考えたきっかけは何ですか?
小川 行政書士になって7〜8年目のころ、
「自分は本当にお客様の役に立っているのだろうか」と考えるようになったことがきっかけです。
もちろん、書類を作成して申請するといった仕事もお客様に喜んでいただけるのですが、
「この仕事は私でなくてもいいのでは」と感じてしまったのです。
私は建設業に特化しているのですが、「建設業のお客様の粗利益を上げる
コンサルティングができたら、もっと喜んでもらえるのではないか」と思いました。
当時は知識がなかったので、まずはいろいろな本を読み漁り、
いちばん親しいお客様に声をかけてコンサルさせてもらったのですが、
びっくりするぐらい何もできなくて……。
本で得た知識だけで始めたことはもちろん、無料で受けたことも原因でした。
責任が曖昧になって、半年くらいでフェードアウトしてしまったのです。
行政書士法人小川事務所
代表 小川一斗志氏
30歳まで美容師として勤務した後、父が創業した行政書士事務所を継ぐため、33歳で行政書士試験に合格。
2014年、代表に就任。建設業に特化し、許可取得のアフターフォローや、
入札・経営事項審査などのコンサルティングなど幅広くサポート。
――その後は、行政書士業務に専念されたのですか?
小川実は、そのあとも2回ほどコンサルに挑戦しました。
最初の失敗から1年後ぐらいに別のお客様から経営の相談を受け、
「これはもう1回コンサルに挑戦するチャンスだ」と思ったのです。
今度は違う本を読んで提案したものの、本を読んだだけの私の提案が薄くて、
社長に受け入れてもらえませんでした。
その後も「コンサルができないとダメだ」という思いは持ち続けていて、
もう1回、親しいお客様に声をかけて挑戦しました。しかし、それもうまくいかず……。
「3回やってダメなら、もう無理だな」と諦めました。
――三度挫折したにもかかわらず、四度目の挑戦をした理由は何だったのでしょうか?
小川 今から1年ほど前に、伊藤さんの勉強会に参加したことがきっかけです。
といっても、当時はコンサルティングは諦めていたので、
勉強会に参加した目的はWeb集客の強化です。
私は、書類はつくれるのですが、集客ができなかったので、
知り合いの行政書士から伊藤さんの勉強会の評判を聞いて参加しました。
伊藤 私の勉強会では、事務所をこれからどうしていきたいのかを考えてもらうために、
マーケティングの講座であっても、全員に経営計画書をつくってもらいます。
小川さんにも、まずは「自分の事務所を良くする」という目線で
経営計画書作成に取り組んでいただきました。
株式会社ウェイビー
Founder/取締役COO 伊藤健太氏
2009年慶應義塾大学卒業後、2010年に23歳で株式会社ウェイビー創業。
2011年、ウェイビー行政書士事務所開業。
これまで1,200社以上の中小企業、個人事業主の成長支援に従事。
世界経済フォーラムが選ぶ若手リーダー選抜、徳島大学客員教授。
スモールビジネス向け書籍を7冊出版。
小川 事務所の経営計画書をつくったことで、考え方の幅も広がりましたし、
視座も高くなったと感じます。それまでは目標もぼんやりしていたので、
考えが浅かったり、細分化されていなかったり、曖昧な部分がかなりありました。
だから、「『やるぞ』と決めたのに、それっきり」ということが多かったのです。
それが、伊藤さんのコンサルを受けながら経営計画書をつくったことで、
「この計画をもとに毎日やるべきことを一つひとつ実行していけば、
会社は良くなる」という実感が湧きましたし、マーケティングも、何となくの感覚ではなく、
ロジックがあることを知ることができました。
自分が体験したことで、「すべての経営者は、この経営計画書をつくれた方がいい」と感じて、
「もう1回コンサルをやってみよう」と思ったのです。
伊藤 小川さんはもともと、「コンサルにもチャレンジしたい」という思いがあったので、
私のコンサル手法を体感してもらうことで、お客様にも提供できるはずだと考えました。
コンサルする際、「ゴールは何か?」「そのゴールを達成するために
月に何回のミーティングが必要なのか?」などを
しっかりと決められてないケースが多いんですね。
だから、まずは自分自身を実験台にして、私たちのやり方やノウハウを吸収し、
それをそのままお客様に提供してもらえばよいのです。
小川 伊藤さんのコンサルを受けた経験をもとに、
2社の経営計画策定のコンサルティングを受注することができました。
「行政書士の小川さん」ではなく「コンサルの小川さん」を目指す
――四度目の正直で受注されたのですね! どのような経緯で受注に至ったのでしょうか?
小川 1社目は、行政書士として「どうしたら建設工事の入札が取れるのか?」という相談を受けたことが
きっかけです。そのお客様が入札で受注するのは難しそうだったのですが、
この相談の根底には「売上を上げたい」という思いがあると感じました。
そこで、「入札にこだわらずに売上を上げる方法を考えませんか?」という話をしたら、
コンサルをする流れになったのです。
2社目は、事務所のホームページから問い合わせをいただき、行政書士として仕事を受けたお客様です。
その仕事が終わったタイミングで、
「3年後は会社をどうしたいと考えているんですか?」という話を投げかけたんです。
すると、「今ちょうど迷っているところです」というので、
「3年後の目標を目指すには、今やることを変えないといけません。
そのためには、自分の頭の中を明確にすることが必要で、経営計画が有効ですよ」と提案して
受注につながりました。
伊藤 最高のケースですよね! 行政書士業務をフロントにしつつも、そことは別に
「会社を良くしましょう」という提案を受け入れてもらったということですから。
私は小川さんに、「『建設業に詳しい行政書士の小川さん』と呼ばれることと、
『建設業のコンサルタントとして有名な小川さん』と呼ばれるのは、
どちらがいいですか?」と聞いたことがあるんです。
それで、小川さんがコンサルを目指すと腹を決めてくれた。
そこから経営計画のコンサル商品を一緒につくってきたのです。
小川 私は、「お客様に感謝されたい」「ほかの行政書士と差別化したい」という思いがずっとありました。
私にしかできないことができれば、ここからの10年、20年、安心して仕事ができると思っていたので、
それが見えてきたことが本当に嬉しいですね。
1年目から3割バッターを目指さない
――コンサルタントしての道を歩みだした小川さんに、
伊藤さんからはどのようなアドバイスをしていますか?
伊藤 「今の案件を成功させなくていい」と話しています。
成功させなくていいというのは、お客様に迷惑をかけていいということではなく、
自分のなかでは失敗だったと思っても構わないということ。
コンサル1年目を野球に例えるなら、試合に出ない限り、ヒットを打てるようにはなりません。
試合に出たばかりでいきなり3割バッターになれないように、
最初の1年は「とにかく失敗でいい」と割り切ってほしいのです。
また、1件目をうまく進めることにこだわると、次の提案ができなくなります。
真面目な人ほど、「うまくできていないのに、ほかの企業に提案してはいけないのではないか」
と思ってしまうのですが、それは違います。
失敗があるから、いろいろ気付くことができて、何をインプットするべきかが見えてきます。
経験値が増えることが重要なので、失敗しないことより、1歩踏み出すことが大事です。
小川 私はこれまでに3回失敗しているので、もちろん不安はありました。
けれど、伊藤さんがどういう風にコンサルをやっているかを自分が体験したことが大きかったですね。
これまで感覚的にやっていたものを言語化できていく感覚がありました。
また、今までとは違い、お客様の本当の悩みをたくさん聞き出せていると感じます。
お客様は建設業という共通点もあるので、課題も似ていることが多いのです。
ですから、1社目の経験をもとに、次のお客様にはこちらから
「こういう課題があるのではないですか?」と話せるようになりました。
伊藤 前回の対談でも話しましたが、自分の事務所の経営がうまくいっているということが、
コンサルタントとしての大前提。その点、小川さんは経営者としてのキャリアがありますから、
コンサル案件が取れて当たり前なんです。
コンサルタントして成功するかは、向き不向きではなく、“やりたいか、やりたくないか”。
やりたいという思いがあれば努力しますし、スキルは私が言語化して体系化しているので、
“やる気”と“素直に学習すること”が大切だと思います。
――小川先生は、これからさらに挑戦したい領域はありますか?
小川 経営計画書から派生した、採用や人材に関する領域に挑戦したいと思っています。
「社員全員が社長の決めたゴールを本気で目指せる会社づくり」をサポートしたい。
そのためには、理念を共感できる人を採用し、
社員がモチベーションを高く持って仕事ができる環境を整えないといけません。
そのための人事評価だったり、育成プログラムだったりをカバーして、
経営計画の実現をトータルサポートしたいですね。そして、3年後ぐらいには
「建設業の経営コンサルとして有名な小川さん」と呼ばれることを目指しています。
伊藤 士業の仕事を一生懸命やっている経営者ほど「このままでいいのだろうか?」
「ビジネスモデルを変えていかないといけないのではないか?」と考えているはずです。
小川さんは、そう考えるだけではなく、決断して、進んでいる。
小川さんのように行政書士業務の延長ではないコンサルティングで
勝負しようと思っている行政書士はほとんどいませんから、
経験さえ積めば、向かうところ敵なしだと思います。
- プロフィール
30歳まで美容師として勤務した後、父が創業した事務所を継ぐため、33歳で行政書士試験に合格。
2014年、代表に就任。建設業に特化し、許可取得のアフターフォローや、
入札・経営事項審査などのコンサルティングなど幅広くサポート。
Founder/取締役COO
2009年慶應義塾大学卒業後、2010年に23歳で株式会社ウェイビー創業。
2011年、ウェイビー行政書士事務所開業。これまで1,200社以上の中小企業、個人事業主の成長支援に従事。
世界経済フォーラムが選ぶ若手リーダー選抜、徳島大学客員教授。スモールビジネス向け書籍を7冊出版。