食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

J-オイルミルズは11月16日、オンラインで2022年度上期の決算概況と中期経営計画の見直し説明会を開催した。

佐藤達也社長は、課題であるマーガリン事業の9月単月黒字化達成を強調し、通期計画は期初予想を据え置くとした。中計の見直しでは「長徳」や「スマートグリーンパック」など低負荷を強みとする独自商品の育成・拡充を掲げ、北米とアセアンに経営資源を投入し、「国内油脂事業一辺倒だった事業モデルからの脱却を目指す」とした。

上期の営業利益は、油脂事業は価格改定もあり増益となった。スペシャリティフード事業は原料価格の上昇を補えず減益となったが、マーガリン事業については、「収益性向上の施策で9月単月は黒字化を達成した。2022年度の黒字化、2023年度からの利益貢献を目指す」と説明した。また、7月からの価格改定が浸透していく中、業務用油脂の粗利益率は、下期に昨年並みに回復する見込みとしている。

通期予想は期初計画を据え置く。営業利益は、油脂事業で8億円から10億円に上方修正し、スペシャリティフード事業は、「上期のビハインド分を反映し、2億円からブレイクイーブンに変更し、10億円の実現を目指す」とした。

〈中計の目標達成を2年延期、国内油脂事業一辺倒から脱却、海外の営業利益構成比7%に〉
第6期中期経営計画の見直しでは、当初掲げていた目指す姿や戦略目標に変更はないとするが、「事業環境の大きな変化に耐えうる対応力の高い体制とすべく、事業基盤を強化し、収益を回復していくための期間として、定量目標の達成年度を2年延期する」と説明した。最終年度は2026年度となり、営業利益110億円、ROE8%の変更はない。

ただ、原料コストの状況により販売価格が大きく変動すること、資本効率を重視した成長を図るといった理由で、売上高、営業利益率は定量目標から除外するとした。「まずは成長への投資強化を行うため、営業利益を2020年度水準まで回復させる」とした。

そのために、外部環境に応じたマージンコントロールにより、適正な価格形成を行っていく。また、商品ミックスの改善により高付加価値商品の構成比を上げていく。さらに、不採算事業の収益化を早期に行い、SKU削減による生産効率アップや海外生産、価格改定などで収益化を実現する。加えて土産や外食マーケットの需要回復効果も一定程度見込んでいるとした。

中計見直しの方針として、「構造改革」、「成長戦略」、「投資戦略」を挙げた。「構造改革」では、サプライチェーンマネジメントの改革と生産拠点の改革を掲げる。国内の各生産拠点の位置付けを再整理し、近場生産・近場出荷の実現や付加価値化を検討していく。マレーシアに保有する油脂加工品の生産拠点を活用し、日本向け生産を行うなど、海外を含めた生産拠点の最適化も進めていくとした。

「成長戦略」では、低負荷を差別化された強みとして掲げており、労働や環境への負荷、経済的な負荷を解決する商品群の拡大を図る。油脂事業では、長持ち油や「カーボンフットプリントマーク」の取得推進で、環境意識の高いユーザーを取り込む。

また、「スマートグルーンパック」を起点に、こめ油や健康などの機能性が負荷された油など、成長カテゴリを中心に展開を図る。スペシャリティフード事業は「ビオライフ」をはじめ、乳系や肉系のプラントベースフード(PBF)の商品ラインアップを、他社とのアライアンスを含め拡充していくとした。

「投資戦略」では、アセアン、北米の2地域を海外の重点地域に位置づける。アセアンではマーガリンやショートニング、テクスチャー素材、北米ではソイシートやビタミンK2など、好調な既存製品の用途と地域の拡大を図るとともに、独自の価値を持つ業務用油脂商品の海外展開の検討など、新規事業領域の拡大を成長投資機会の探索と合わせて実現していく。そのための推進体制と海外人財プールを強化し、成長戦略を加速させていき、「国内油脂事業一辺倒だった事業モデルからの脱却を目指す」とした。

2026年度の営業利益110億円のうち、PBFの成長、油脂加工品事業の収益回復を受け、スペシャリティフード事業は構成比23%を目指す。また、既存事業の成長により、海外での営業利益構成比を7%まで伸長させる。高付加価値品の粗利益率の構成比を57%とし、汎用品の構成比と逆転させることも計画している。

〈大豆油糧日報2022年11月18日付〉