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(写真=artapartment/Shutterstock.com)

アミューズメント市場は4年連続で上昇するも、2018年度は伸び幅に落ち着きが見られる

~2019年度以降は伸び率は緩やかながらも上昇は続く~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は2018年度のアミューズメント市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

アミューズメント産業市場規模

アミューズメント産業市場規模

1.市場概況

 2018年度のアミューズメント産業(業務用アミューズメント機器販売高、アミューズメント施設売上高)の市場規模は6,512億円と推計した。アミューズメント機器の販売高が2017年度から回復したものの、オペレーション売上高の上昇幅が小さくなり、前年度比101.9%と微増に止まっている。
 業務用アミューズメント機器の販売高は1,562億万円となった。現在のアミューズメント施設で主力製品とされるプライズゲーム機と景品類で販売高が10ポイント以上上昇したのに対し、テレビ(ビデオ)ゲームや音楽ゲーム、メダルゲームで販売高が減少し、全体では2.1ポイントの上昇に止まった。2019年度以降については、プライズゲームの販売に落ち着きが見られるものの、音楽ゲームやメダルゲームでは、新製品の投入により、販売高の回復が見込まれ、全体の販売高が引き続き上昇すると予測される。
 アミューズメント施設の売上高(オペレーション売上高)は4,950億円となった。2010年代以降、全体的な店舗数の減少と共に市場の淘汰が進んだことにより、現在は大手企業や地方の有力企業が運営する好立地、好収益の店舗が残っている。その結果、1店舗あたりの売上高が上昇し、2018年度の売上高も2017年度の水準を保つこととなった。しかしながら、2017年度における売上高の上昇は風営法の規制緩和で未成年者の施設立入時間が延長されたことも大きく影響しており、規制緩和の効果が落ち着いたこ2018年度は上昇率が緩やかになると推計した。2019年度以降は、1店舗あたりの売上高の上昇が引き続き見込まれるものの、新たな規制の緩和など、経営環境を好転させる材料はなく、売上高は横ばいから微増で推移すると予測される。

2.注目トピック

eスポーツへの取り組みを強化~アーケードゲーム独自のeスポーツ文化確立を目指す~

 2018年2月に「一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)」が発足し、日本国内で「eスポーツ」への注目が急激に高まる中、アミューズメント産業でもeスポーツへの取り組みを強化する動きにある。既に大規模なeスポーツイベントとして、コナミグループでは、2011年より「KONAMI Arcade Championship」、(株)タイトーでは2015年より「闘神祭」を開催しているが、年々開催地域と対象となるゲーム機器、参加者、観客の数が増え、現在はゲームファンの間で一大イベントと位置づけられている。大会規模の拡大に伴い、取材希望のメディア、協賛企業の数も増えていき、大会のさらなる発展が見込まれる。この流れを受け、(株)バンダイナムコアミューズメントでも2018年より「鉄拳7」を活用したeスポーツ大会を開催しており、大規模な大会は今後増えることが予測される。
 なお、 アーケードゲームにおいては、高度なテクニックを披露して人々に賞賛されたいプレイヤー、上手なプレイを観て仲間と共に盛り上がりたいオーディエンスの双方が多く存在しており、eスポーツとの親和性が高い。彼らのアーケードゲーム対するモチベーションを維持する上でも、各企業ではアーケードゲームにおけるeスポーツ文化の確立を目指している。

3.将来展望

<アミューズメント機器メーカー>

 ビデオゲームや音楽ゲームでは、プレイに際して高度なテクニックや知識が要求されるため、新規プレイヤーが中々増えない状況が続く。そこでアミューズメント機器メーカーでは、人気のIPを活用した製品開発を行ない、新規ファンの獲得を目指している。実際、2016年に登場したカードゲーム「艦これアーケード」では、IPのファンがゲーム結果に応じて提供されるオリジナルカードを求め、アミューズメント施設へと殺到した経緯があり、IPを起用した製品は、未経験者をアーケードゲームに触れさせる大きなきっかけとなっている。
 一方、既存のユーザーに対しては、オンラインシステムを活用したバージョンアップ、ゲーム大会を中心としたイベントを定期的に実施し、利用頻度の向上に努めている。特にゲーム大会はユーザーのゲームで遊ぶモチベーションや製品へのロイヤリティを高める上で大きな効果を発揮しており、eスポーツの拡大と連動する様に、リピーター確保のための重要な集客戦略の1つになると考えられる。

<アミューズメント施設運営企業>

 全国規模で店舗を展開する大手企業、及び地元で地盤を固めてきた地方の有力企業における売上高は増加傾向にあるが、その一方で、中小規模の企業や店舗で閉店、廃業は依然続いている。また、多くのアミューズメント施設が入居する大型商業施設の新規出店ペースが全国的に緩やかになっており、高い集客と収益の見込める物件も限られている。
 その様な中、地方の有力企業ではM&Aを積極的に展開しており、店舗を急速に拡大すると予測される。一方、大手企業では、既存店舗のリニューアルや活性化、スクラップ&ビルドを中心に行ない、収益力を強化すると同時に、アスレチック遊具やVRなどを用いた新業態店舗の展開、並びに中国や東南アジア諸国への海外展開に注力し、活路を見出していくと考えられる。