2022年6月30日、京都とニューヨークに拠点を構える「+81 gallery」が東京・原宿に新しくギャラリーをオープン。そのオープニングにニューヨーク在住の現代アーティスト、山口歴(MEGURU YAMAGUCHI)の個展「SHADEZ OF BLUE」がスタートした。
![山口歴個展](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/XVhzztBEWRVhSYaLIAeolOtuKCdOnWxP/5d200403-17c4-48cb-bded-98f78e21478b.jpg)
山口歴は1984年東京都出身。両親の影響で幼少期からアートに囲まれて育ち、2007年にニューヨークへ渡る。アーティスト・松山智一のもとでアシスタント経験を積みながら、制作活動を続けた。これまでに多くの個展開催や数々のブランド・企業とのコラボレーションも実現。今後の日本美術界を担う若手現代アーティストである。
本展では、アルミ板を使用した新作群が初展示され、山口歴初の出版書籍『THE UNDERGROUND SPIRITUAL BLUE』も+81 Publishers からあわせて刊行される。国内外から高い評価を得る山口歴の注目の個展をレポートする。
新作は熱を帯びた「青」
![「SHADEZ OF BLUE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/600/400/IWYaVleipjmxEiMPUHpqLXfYrZywCGHH/2378c947-9095-46ab-8cde-0f322e915f59.png)
ギャラリーの中に入ると、本展のメインである新作「SHADEZ OF BLUE」シリーズが出迎える。立体的な作品群の印象が強い山口歴だが、今回の新作3点はより平面的な表現が深められている。
![《SHADEZ OF BLUE NO. 3》(2022)](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/LHCsuwJXwSbBkPnjuPZhaTrINvyyKPzw/4955252b-e2f5-4f86-b99a-34c71472eeb3.jpg)
![《SHADEZ OF BLUE NO. 2》(2022)](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/pnAtpPdybzXSOENXKvxbAZUHIzlEVaNv/ac38a556-d1d6-4f8a-9644-ae0e4ed1db86.jpg)
高さ2メートル以上のアルミ板の上で有機的に混ざり合う色は、今にもゆっくりと動き出しそうだ。これは一から顔料を混ぜて作られたオリジナルのカラーだそう。まるで鉱物のような輝きを放ち、とろりと溶け出している溶岩のようにも見える。“Shades of blue”は、日本語にすると「青の色合い」という意味。静かで熱を帯びた様々な「青」を堪能できる作品だ。
![《SHADEZ OF BLUE NO. 1》(2022)](https://cdn.the-owner.jp/1024/732/oZzLgAYKsGyuQdkRRpaeLMDrDsvgWFTz/583649e7-c71f-40cd-ae36-b9bd66a7fa9c.jpg)
![《SHADEZ OF BLUE NO. 1》(2022)](https://cdn.the-owner.jp/600/400/FBYdwcRNYVcHNhwPTeEgxcrxfIRvXDPK/829ed774-7534-4bca-ac1b-94d142b0d258.jpg)
今回新作の他に、代表作シリーズの一つである「OUT OF BOUNDS」の作品2点も展示されている。山口歴の最大の特徴でもあり、一貫して焦点を当てているのが絵画表現における「ブラシストローク(筆致)」の可能性の追求である。「OUT OF BOUNDS」は「固定概念・ルール・国境・境界線の越境、絵画の拡張」というコンセプトのもと、キャンバスという枠に囚われず、ブラシストロークの形状自体をそのまま実体化させるという制限を取り払った重要な作品群だ。この青の作品は、より躍動的でまた違った表情を見せてくれる。
![《OUT OF BOUNDS NO. 144》(2022)](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/wMUVRcpRPPFigkUxDiPezGICPkmFyJso/8577cca1-048f-4df7-b599-601c791d618a.jpg)
NYの空気を感じる生きた現場
2階へ上がると、山口歴が本拠地を置くニューヨークのアトリエを再現したスペースが広がっている。これはファンにはたまらない展示だ。私物のおもちゃ、カセットデッキ、さらには床に散らばるゴミまでもがニューヨークから持参されたものだそう。壁や天井に描かれた無数のグラフィティは、まさに原宿という場所にふさわしい。ストリートカルチャーに影響を受けた山口歴のバックグラウンドをインスタレーションにしたようなエネルギッシュな空間である。
![「SHADEZ OF BLUE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/600/400/wGIbbprBfIMUJNSwlrTCzngDTvjwLnIt/40e23972-c9a2-40d8-82c7-ba3d4bdf3728.jpg)
![「SHADEZ OF BLUE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/600/400/WGJqYbiDCMGZFFTYUrccXoSBSWIBUuNv/fc05d9ee-155c-4b97-af4c-99e5fe856261.jpg)
![「SHADEZ OF BLUE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/600/400/AUyvlGXmoJkduHffSMLihwxJKRJTdmHx/ff62b94e-b143-4393-b241-224df9d2f363.jpg)
ちなみに、壁に描かれた「GOLD WOOD」は山口歴が設立した〈GOLDWOOD ARTWORKS〉のこと。絵画制作に留まらず、様々な分野の企業とのコラボレーションを含めた横断的・超越的な活動を行っている。この趣旨に賛同するアーティストの中西伶やフォトグラファーの瀬尾宏幸もともに活動しており、今後の動きに注目だ。
![「SHADEZ OF BLUE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/600/400/zUsSyXjquDWCnPMVTCLulZzjvZtfJNZW/8603189e-3291-4104-833d-d4f7f6142bdc.jpg)
そして、2階奥のスペースには、「OUT OF BOUNDS」の作品と今回出版される『THE UNDERGROUND SPIRITUAL BLUE』の装丁前の原稿が展示されている。
この『THE UNDERGROUND SPIRITUAL BLUE』は、単身ニューヨークに渡った山口歴がそのアーティスト生活で綴った自叙伝とスマートフォンで撮影し続けたセルフ写真を中心に構成された写真集であり、作品集でもある。ニューヨークでの刺激的な日常やプライベートなワンシーンなど、これまでのライフスタイルが264ページにわたって収められている。山口歴のインスピレーションを覗き見するような贅沢な内容だ。
![「SHADEZ OF BLUE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/600/400/YgVRDziqnwtURBXLFIHXyNritYWISTBC/105c6cad-1271-40b7-8a89-a40b556657df.jpg)
新作3点のお披露目に始まり、代表作シリーズ「OUT OF BOUNDS」からリアルに再現されたアトリエまで、山口歴のこれまでと今が詰め込まれた個展「SHADEZ OF BLUE」は8月30日まで。期間途中には、新たに作品が追加される予定もあるとか。東京発・世界で活躍中の山口歴が生み出す「青」を見に、足を運んでみてはいかがだろうか。
【Information】
+81gallery Tokyo オープン記念展覧会
「SHADEZ OF BLUE」MEGURU YAMAGUCHI
期間:2022年6月30日(木)〜8 月30日(火)
OPEN:水曜日〜日曜日(12:00〜18:00)
会場:+81 Gallery – Tokyo(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3丁目28–9)
公式:https://plus81.gallery/
初出版本『THE UNDERGROUND SPIRITUAL BLUE』
2022年7月7日発売
取り扱いは、+81 Gallery – Tokyo、またはAmazonにて
![山口歴本](https://cdn.the-owner.jp/600/792/VdluGRsePryBEnlERPouQUlfvJvqEdXa/5552fd19-b545-418c-b36b-2ad709048890.jpg)
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文・写真:千葉ナツミ