「野菜ダシ」を使った長崎ちゃんぽん
(画像=「野菜ダシ」を使った長崎ちゃんぽん)

給食企業のソシオフードサービスが食事を提供する長崎市の高齢者施設では、野菜の下処理の際に出た切れ端を捨てずに煮出した「野菜ダシ」を使った長崎ちゃんぽんが人気だ。食堂の栄養士である山崎陽子さんは、野菜ダシを使うと、「優しく、まろやかな味わいになる」と効果を語る。施設では、健康維持のために塩分量などを管理しているが、野菜ダシにはやさしい味わいがあり、塩分量を抑える利点がある。また、のどの渇きを感じにくい高齢者にとって野菜ダシのスープは無理なく水分補給ができ、健康維持につながる効果を発揮する。

この野菜の切れ端からダシを煮出す取り組みは、最近では食品ロス削減への意識の高まりも相まって「ベジブロス」という言葉で普及しつつある。野菜をダシとして加熱することで、ポリフェノール、含硫化合物、カロテノイドなどの植物が持つ「フィトケミカル」と総称される成分が多く染み出ることから、免疫力アップなどの健康効果も期待できる。高齢者の健康維持として、SDGsの目標3(すべての人に健康と福祉を)や、食品ロス削減として目標12(つくる責任 使う責任)に貢献する取り組みとして注目が集まっている。

同社がキャベツの芯やにんじんのへたなど、切れ端をダシに使うようになったのは15年前にさかのぼる。当時の調理師が、施設での生活の中でも、長崎の郷土料理であるちゃんぽんを美味しく食べて喜んでもらいたいという想いから考案。「野菜の甘味や旨味が染み出たダシを使った方が味は良くなる」と考え、提供したらたちまち人気メニューに。

現在では、野菜ダシを長崎ちゃんぽんだけでなく、スープやカレー、ハヤシライス、ラーメンにも活用して施設利用者に親しまれる味となっている。献立に付け合わせて添えるスープがない日には、「スープが好きなのに、今日はないのね」と話す利用者もいるほどだ。

山崎さんは「他施設から移られてきた利用者様の健康診断の数値が改善されてきたという報告もある。大量の野菜の切れ端を煮出したダシを使う献立が多いことで、栄養素を摂取する量が他の施設よりも多いことが関係しているのかもしれない」と分析。「看取り介護まで行う当施設の食堂では、利用者様に少しでも長く食事で美味しく栄養を摂っていただきたい」と取り組みへの想いを話した。

野菜ダシの作り方は以下のとおり。

〈1〉野菜の切れ端を集める、
下処理の際に出た野菜の切れ端は、キャベツの外葉や芯、にんじん、玉ねぎのへたをメインに使う。

〈2〉野菜の切れ端を煮出す
野菜の切れ端は、煮出す前に必ず流水で丁寧に洗う。長崎市の高齢者施設では1度に60食分を調理するため、寸胴鍋の中に野菜の切れ端を5〜6キロ投入し、鍋の7分目まで水を加え、およそ2時間かけて煮出す。

鍋の7分目まで水を加え、およそ2時間かけて煮出す
(画像=鍋の7分目まで水を加え、およそ2時間かけて煮出す)

〈3〉野菜の切れ端をこす
野菜の切れ端が十分にくたくたになったら、それらをこして野菜ダシが出来上がる。

同社は今後も、SDGsを経営の根幹に据えて、給食委託を受ける施設への食事提供に取り組む考えだ。