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愛媛県経営支援課の髙尾浩司課長 (画像=M&Aコラム)

事業承継セミナー「愛媛県内の経営者のための経営の打ち手カンファレンス」が2022年7月6日、松山市のANAクラウンプラザホテル松山で開催されます。帝国データバンクの全国企業「後継者不在率」動向調査によると、愛媛県内の後継者不在率は62・4%で、四国では最も高く、全国平均を上回る数字となりました。セミナーを後援する愛媛県経済労働部経営支援課の髙尾浩司課長と、公益財団法人えひめ産業振興財団の髙石淳専務理事に愛媛県内の産業構造や課題となる事業承継の支援策などを伺いました。

バランスの取れた産業構造が強み

愛媛県経済労働部経営支援課の髙尾浩司課長:愛媛県は、第二次産業が集積する東予地域(県東部)、第三次産業が盛んな中予地域(松山市を中心とする県中央部)、そして、第一次産業が中心の南予地域(県南西部)とそれぞれに特色ある産業が集積し、全国的にも珍しいバランスの取れた産業構造となっています。東予地域ではパルプや製紙産業、江戸時代には別子銅山で栄えた住友グループの企業城下町として、現在は重化学工業地域に変わり、ものづくり企業が集積しています。

瀬戸内海を望むしまなみ海道はサイクリストの聖地として、観光産業の更なる発展も期待されます。中予地域は道後温泉や松山城を有する観光地として、商業、観光、サービス業等の第3次産業が集積しています。愛媛といえば鯛めしとみかんですが、その食文化を支える南予地域は漁業や柑橘栽培など第一次産業が盛んで、全国からワーケーションでも注目を集めています。

経済活動の回復期における原材料・エネルギー価格高騰のマイナス面

コロナ禍、原油や物価高騰により愛媛県内でも厳しい経済環境が続いています。アンケートによると、県内企業の7割がコロナや物価高騰の影響を受けていると回答しています。2022年のゴールデンウイークは、3年ぶりに緊急事態宣言もまん延防止等重点措置もない連休となり、県内は多くの観光客でにぎわいました。

いよいよ経済活動の回復期を迎えたと言えるかもしれません。一方で原材料とエネルギー価格の高騰も加わり、金融機関などと連携して企業の資金繰りの支援や補助金給付などの対策を拡充しています。コロナ後を見据えて、産業間の垣根を越えたDX(デジタルトランスフォーメーション)や生産性向上の取り組みを支援しています。

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総合支援拠点「CONNECTえひめ」を新設

社会問題化する後継者不在の黒字廃業等を減らしていくため、事業承継への普及啓発活動も展開しています。県は経済団体や金融機関等と連携して、ポストコロナに向けて県内企業の経営基盤を守り、新たな取り組みを支える窓口として、県内事業者の抱える経営課題を総合的に支援する総合支援拠点「CONNECTえひめ」を開設しました。

愛媛県独自の事業承継補助金でサポート

企業を支える関係機関のハブ的な役割を担い、事業承継やM&A、DXなどへの対応をワンストップで戦略的に進めていきます。官民連携で事業承継を推進していくため、国の支援制度も充実していますが、支援の隙間を埋めるために県独自の補助金も新設しました。令和4年度愛媛県事業承継計画作成支援事業は、後継者らへの事業承継に向けた進め方の計画を作成するために専門家利用の補助を対象としています。後継者の育成や事業承継の準備・実行には数年以上の期間が必要です。円滑な事業承継を推進していくために支援制度などを有効的にご活用ください。

事業承継は行政機関だけの支援で推進することはできません。経営者にとって事業承継の悩みはなかなか周りに相談できず、ニーズが表面化しにくいという現状もあります。後継者不在によって優れた技術やノウハウが失われてしまうことは地域経済にとって大きな損失になります。県民から信頼される地元テレビ局が事業継承をテーマにしたセミナーを企画することで、企業や事業者の皆さまが事業承継を身近な課題として、考えるきっかけになることを期待しています。

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えひめ産業振興財団があるテクノプラザ愛媛 (画像=M&Aコラム)

移住者増加と若い世代の起業の高まりを見せる愛媛

愛媛県内の企業や事業者の経営支援を担い、創業支援など起業家をサポートする公益財団法人えひめ産業振興財団。国が全国に整備した事業承継・引継ぎ支援センターの窓口業務も担当しています。

公益財団法人えひめ産業振興財団の髙石淳専務理事:愛媛県内の企業のうち9割以上が中小・零細企業で、雇用者数は約8割を占めています。県内の後継者不在率は四国で最も高く、2011年以降から高止まりの状態が続き、経営課題となっています。後継者が見つからず、「自分の代で終わりにする」と考える方も多くいらっしゃいます。事業だけではなく、農業など一次産業でも同じ悩みがあります。県内の経済と雇用を維持・発展させていくためには、事業承継の支援を更に強化していく必要があります。

愛媛にも共通する人口の転出超過

愛媛県が抱える社会課題として人口の転出超過が挙げられます。大学進学等で県外に出た若者がUターンで地元に戻ってくることが少なく、そのうち女性の割合も高くなっています。少子高齢化で自然減の社会構造に加えて若者や女性が県外に流出してしまう現状は次世代を担う人材難にもつながります。若者と女性が働きやすい職場環境を企業が整備するだけではなく、ITをはじめとする県外企業の誘致なども求められています。

事業承継のメリットには企業が持つ唯一無二の技術の伝承があります。愛媛県では高い技術力や優れた製品を持つ「ものづくり企業」を特集し、PRする「えひめが誇るスゴ技」を展開しています。若者が高い技術力を持つ企業に関心を抱くきっかけにもなってほしいです。

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えひめ産業振興財団の髙石淳専務理事 (画像=M&Aコラム)

年間五千人が移り住む愛媛の魅力を守るために

希望と言える明るい兆しも愛媛にはあります。コロナ禍で移住がクローズアップされましたが、愛媛県では2021年度に県外から過去最多の4,910人の移住者を迎え入れることができました。働き方や暮らし方を考え直す人々に愛媛県が評価されたと考えています。よく語られる「自然が豊かで人々が温かい」という一般論ではありません。愛媛は通勤・通学時間が全国的にも短く職住近接が街の魅力となっています。松山市など中予地域は教育、医療、商業機能もそろったコンパクトシティとしての価値が暮らしやすさにつながっています。南予地域では大手釣具メーカーのワーケーションに向けた取り組みも進んでおり、さらに県内で「転職なき移動」の流れをうまく取り込みたいと考えています。

起業の盛り上がりもあります。創業支援の補助金の申請には、20枠のところ予想を超える60件もの応募がありました。若い世代や現役世代の方々のなかで起業への意欲が出てきたことを実感しています。しまなみ海道が広がる東予地域では、移住者が創業して地域を活性化する流れも生まれています。移住者や起業家の新しいアイデアと実行力がこれからの愛媛県には必要です。官民が連携して新しい力を支援してまいります。

愛媛県内の経営者のための経営の打ち手カンファレンス 【参加費無料】

日 程:2022年7月6日(水) 14:00~17:10
会 場:ANAクラウンプラザホテル松山 エメラルドルーム(愛媛県松山市一番町3-2-1)
主 催:株式会社愛媛朝日テレビ
協 賛:日本M&Aセンター、バトンズ、セールスフォース・ジャパン、アマゾンジャパン 後 援:愛媛県、公益財団法人えひめ産業振興財団
開催方法:会場参加及びライブ配信、アーカイブ視聴
講演:
「事業承継を成功させるために知っておくべきM&Aとは」 株式会社日本M&Aセンター 「いまから始める営業DX」  株式会社セールス・フォースジャパン
「生産性向上を実現するビジネスマーケットプレイス」  アマゾンジャパン合同会社 「経営者におけるネットマッチングプラットフォームの活用」 株式会社バトンズ

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