味の素冷凍食品がこのほど開いた事業報告会で、生産本部長生産統括室長を務める桐原正和取締役常務執行役員が生産部門について説明した。
生産戦略として自前主義から脱却し再構築を進めていく。また労働力不足やベテランの引退に備え、AI やロボット、情報技術を使って生産基盤の強化にも取り組む。サステナビリティの取り組みとしては環境配慮のほか、原料の安定調達に向けた取り組みも進めている。
生産部門では注力テーマとして2021年度、
〈1〉生産戦略の転換(生産エコシステムの実践)
〈2〉米飯事業改革計画の実行着手
〈3〉生産基盤強化プロジェクト
〈4〉サステナビリティの取り組み(FFA 全社で環境負荷低減を推進)
――の4点に取り組んだ。22年度もこれを推進する。
第1の生産戦略の転換について、桐原常務は「生産エコシステムがキーコンセプトだ。ROIC向上のためのアセットライトと生産キャパ増強を両立するため、自前主義から脱却した生産体制を構築する」と述べた。
具体的な内容は、
1つが生産パートナーとの協業による生産体制の再構築、2つ目が生産パートナーの強みを発揮できる新製品・新事業の展開、3つ目が商品開発プロセスの協働、4つ目が生産パートナーの品質保証体制のレベルアップ支援――となる。既存パートナーとの取り組み強化とともに、年間3~4件の新規パートナー開拓を目指す。
第2の米飯事業改革は「採算性と資産効率の向上」が目的。計画骨子は、
〈1〉独自価値製品への資源集中による付加価値化の推進
〈2〉千葉工場に新たに生産性が高い低炭素型第2炊飯ラインを導入し、環境対応を推進すること
〈3〉自社生産2拠点体制を千葉工場に1拠点に集約し、来年3月に大阪工場での生産を終了すること
〈4〉自社生産と委託生産を併用し、生産エコシステムを構築すること
――の4点となる。
第3の生産基盤強化プロジェクトにおいて、2021年9月から「DX プロジェクト」と「温室効果ガス排出削減プロジェクト」をスタートした。「狙いは生産部門の使命である、安定生産による事業貢献を果たすとともに、将来を見据えた冷凍食品事業の生産システムづくりをすることと、サステナビリティの観点から、経済価値と社会価値を同時に追求する活動を7工場で展開していくこと」だとした。
DX プロジェクトの1つとして、手作業デマンドを減らすこと、すなわち少人化を自動化やRobot 導入、自動制御の導入によって進める。AI 検査装置を餃子と焼売の製造工程に2機ずつ試験導入した。目視による検品を自動化する。自動運搬ロボットも今年3月、関東工場に3台導入した。餃子の製造工程で、麺帯を成型機に運ぶ作業を、ロボットが行う。これにより6人の省人化につながるという。
生産管理・製造実行管理システムの更新においては、複数のシステム間でデータの一気通貫を実現し、間接作業の無駄を排除する方針だ。高度なスキルをもったベテランのリタイアに備え、標準化とデータベース化によって技術レベルを維持できる仕組みづくりも進める。「共有知識を体系化し、技術・技能・知見の伝達をサポートしたい」考えだ。
温室効果ガス排出削減プロジェクトは第4のサステナビリティの取り組みにも関わる。
同プロジェクトでは367件の省エネテーマに取り組みを始めた。「全員参加でアイデアを数多くこなすことで、大きな成果に繋げたい。7工場から最低2人ずつ、大規模工場からは4人の担当者を任命して、2週間毎に担当者会議を実施、省エネテーマを抽出した」。蒸気駆動コンプレッサーなど省エネ機器も新規導入しており、CO2対策は「製造オペレーションと製造装置・設備の両面から進めたい」としている。
サステナビリティの取り組みとしては、プラ廃棄物削減(「地鶏釜めし」の紙表示対応、包材のモノマテリアル化(72%))、フードロス削減(賞味期限12カ月から18カ月に、20年度15品、21年度33品に拡大)、産業廃棄物の飼料化(大阪、関東工場)――も進めた。
また、サステナブル調達として、枯渇リスクのある原料資源(すり身・豚脂・エビ)の代替技術を開発し、導入にめどをつけた。コア原料であるキャベツやニラなどについては、サプライヤーとの直接取り組みの比率を高めている。直接調達比率は55%に達するという。
〈冷食日報2022年6月7日付〉