コロナ禍から経済活動が回復し始めてきた今、鳴りを潜めていたビジネス上の「お酒の席」が戻りつつある。そんな中、バイオテクノロジー企業のユーグレナが遺伝子解析を通じ、お酒に強い遺伝子を持つ人の比率を都道府県別のランキングとして発表した。
東北各県がランキング上位に食いこむ
このランキングは、ユーグレナ・マイヘルスとジーンクエストの遺伝子解析サービスを利用している人の中から、2万人以上のゲノムデータを使って「二日酔い」に関する項目を解析した上で作成されている。
遺伝子解析データによって、少しの飲酒でも二日酔いになりやすいかどうかという観点から「お酒を飲んでも二日酔いになりにくいタイプ(遺伝子型:GG)」、「お酒を飲むと二日酔いになりやすいタイプ(遺伝子型:AG)」、「そもそもお酒が飲めないタイプ(遺伝子型:AA)」の3タイプに分けている。今回の調査では、相対的にお酒に強いと想定されるGG型に該当する人の推定比率を、都道府県別に算出している。
結果は、1位が青森県で68.92%、続いて2位は沖縄県で67.92%、3位は岩手県で67.59%、4位は秋田県で65.92%、5位は山形県で65.88%だった。
上位5県のうち、沖縄県以外の4県は東北勢が占めた。東北は米どころであり、日本酒の製造も盛んな土地柄だ。トップ5には入っていないが、同じ東北勢の宮城県は6位、福島県は13位で上位に食いこんでいる。
一方、焼酎の一大産地である九州各県は中位~下位に位置する県が多かった。最も上位の鹿児島県は15位、福岡県は18位、熊本県は24位で、九州の中で最下位の宮崎県は44位だった。
また、京都府(32位)、大阪府(34位)、和歌山県(45位)、奈良県(47位)など、近畿地方の各府県が下位に入る傾向が見られた。お酒に強いGG型の遺伝子を持っている人が半数を割り込み、お酒に強くない人の方が多いという結果が出たのは43位以降の5県で、上から順に福井県、宮崎県、和歌山県、岐阜県、奈良県となった。
「飲みニケーション」不要派が過半数に
接待は仕事の一部という性格が強い一方で、「仕事の一部」と見なされなくなってきたのが、職場内でお酒を飲みながら親交を深める「飲みニケーション」だ。
日本生命保険が2021年11月に公表したアンケート結果によると、飲みニケーションが不要だと答えた比率は61.9%で、2017年の調査開始以降で初めて過半数を上回った。2020
年の調査で45.7%だったことを考えると大幅な上昇と言える。
アンケートには7,774人が協力した。年代別では、飲みニケーション不要派が最も多いのは20代以下で66.1%、次いで60代以上で63.7%だったところから考えると、若者だけでなく年配者も飲みニケーションの必要性を感じなくなっていることが分かる。また、男性の不要派が55.8%だったのに対し、女性の不要派は67.8%と男女の温度感の差も大きかった。
面白いのは、不要派の理由として最も多かったのが「気を遣うから」である一方、必要派の主な理由は「本音を聞ける・距離を縮められる」だったこと。この両社の回答を総合すると、飲みに行きたがる側は距離が縮まると思って誘うのに対し、酒席に消極的な側は酒席を「気を遣う場、本音でいられない場」と考えており、ギャップが大きい様子がうかがえる。
「まったく飲まない」人も4人に1人
もっとも、職場での酒席に前向きではない人が増えた背景には、より根本的な傾向として「お酒離れ」があるかもしれない。
ワイン情報サイト「ワインバザール」が2019年2月に公表したリポートによると、日常の飲酒頻度に関する設問について、4人に1人に当たる24.7%が「まったく飲まない」と回答した。
調査は20歳以上の男女6,553人が協力した。2016年の調査では「まったく飲まない」と答えた人の比率が23.1%だったため、調査結果を見る限りでは3年間で酒離れが進んだと捉えられる。
以上をまとめると、職場内での飲み会に否定的な見方が広がっているだけでなく、飲酒自体しない人が増えている現状がある。最近はランチミーティングなど、カジュアルな打ち合わせや相談の場も一般的になっており、相手の属性に配慮して交流の場を設ける必要性が増していると言えそうだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)