2021年の中古車小売台数は268.5万台と推計
~新車の供給・販売低迷により中古車市場は仕入難となるも需要拡大を継続~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の中古車流通市場を調査し、主要領域別[中古車小売販売、中古車買取、オートオークション(入札会含む)、中古車輸出]の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
1.市場概況
2021年の国内中古車小売台数は268万5000台と推計した。
コロナ禍によるサプライチェーンの寸断が新車供給や新車販売の停滞に繋がったことから、高年式×低走行の中古車を中心とする需要が拡大している。しかし、新車販売の減少で下取車が発生しにくいため、国内中古車販売事業者は可能な限り小売向きな良質中古車の囲い込みを強化しており、中古車輸出業者らとの仕入競争も激化し、オートオークションの平均成約価格は上昇を続けるなど、2021年は仕入難の年となった。
このような状況下、確実な中古車両仕入策として共有在庫サービスの利用が活発化しており、中古車販売においては中古車小売事業に本腰を入れる新車ディーラー、高い知名度や小売力を武器にユーザーからの下取・買取を強化する大手中古車専業、「買取→オートオークション売却」から「買取→小売」へのシフトを加速する大手中古車買取チェーン業者など、資本力のある事業者が存在感を増している。今後は、販売後のアフターサービス体制も含めた利益の確保と顧客の囲い込みがより一層重要になると考える。
2.注目トピック
ユーザー買取力が左右する中古車小売
新車供給や新車販売がコロナ禍前の水準へと回復する時期は未だに不透明である。こうした状況下では需給のアンバランスが継続することで中古車相場の高止まりが予測されるため、中古車販売で利益を確保する上では如何に中古車両を安価に仕入れるかが重要となる。その仕入先ルートとして、競争が熾烈化しているのがユーザーからの中古車買取である。
新車ディーラーは「残価設定型クレジット販売」によって良質な中古車(高年式×低走行な中古車両)が還流しやすいという強みを持ち、新車販売の低迷下で中古車販売がより重要な利益源となるため、こうした下取車の小売活用への本気度を高めている。
一方、大手中古車専業は全国への出店を加速し、小売力や知名度を背景にユーザーからの中古車買取台数の増加に注力し、アフターサービスも含めた生涯顧客の獲得・拡大に取り組んでいる。
また、従来は買取車両をオートオークションで販売していた中古車買取チェーン業者は、「買取→小売」へのシフトを本格化し、中古車買取市場で存在感を高めつつある大手中古車専業との競争を激化させている。
このように、将来的に高まる中古車小売需要を見据え、如何にユーザーからの仕入(=中古車買取)を獲得できるかが、現在の市場環境下では重要と言える。
3.将来展望
日本国内では人口動態の観点からも、今後の新車販売台数の減少は不可避であり、これは中古車の発生量減少にも直結する。そして、自動車の平均使用年数の長期化傾向も加味すると、特に高年式×低走行な中古車両(良質な中古車)の発生量、市場での流通量がさらに減っていく見通しである。
今後は、新車ディーラーや大手中古車専業等の資本力のある中古車販売事業者が小売向きの良質な中古車を囲い込み、顧客との生涯取引を通じてシェアを伸ばしていくと考える。これにより、オートオークション市場では現在以上に高年式中古車の流通量が減少するとみられる。オートオークション市場で大きな存在感を持つ中古車輸出事業者との仕入競争を迫られる中小の中古車販売事業者たちは、独自の仕入先開拓や中低年式車の新規販路の拡大等を図ることが、自社の中古車販売事業の継続・拡大に向けては重要になっていくと考える。
調査要綱
1.調査期間: 2021年5月~2022年3月 2.調査対象: 自動車メーカー、自動車ディーラー、オートオークション・入札会開催業者、中古車販売業者、中古車買取専門業者、自動車ユーザー等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用 |
<中古車流通市場とは> 本調査における中古車流通市場とは中古車小売販売市場、中古車買取市場、オートオークション市場(入札会含む)、中古車輸出市場の4市場で構成される。 |
出典資料について
資料名 | 2022年版 中古車流通総覧 |
発刊日 | 2022年03月30日 |
体裁 | A4 333ページ |
価格(税込) | 181,500円 (本体価格 165,000円) |
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