〈定量的特徴を示して差別化を図る、ブランドポジショニングを確立〉
日本ハムは5月31日、東京都内でメディア関係者向けに食肉セミナーを開き、同グループの食肉事業の取組みを紹介した。
「ニッポンハムグループ Vision2030」のもと、食肉事業本部が2030年に向けて目指す「持続可能な食肉ビジネスモデルの構築」に向けた各種の取組みや、主要ブランドについて理解を深めてもらうために企画したもの。
そのなかで、食肉ブランド戦略の一環として、主要ブランドについて遊離アミノ酸や脂肪組成などの“成分再検査”を行い、それぞれの特徴を定量的に表記する「見える化」に取り組んでいることを紹介した。
50以上におよぶ自社ブランド食肉(国産・輸入)について成分検査を行い、官能的な要素が強く、数値化が難しい「味(うま味、甘味)」「テクスチャー(柔らかさ、噛み応え)」「香り(焼肉香、甘い香り)」といった評価項目について、それぞれ定量的特徴を見出していく。さらに、他社ブランド食肉も分析し、自社ブランドポジショニングを確立させ、営業活動に生かしていく。得られたデータ・知見をもとに生産段階(飼料・畜種など)にも反映させたい考えだ。
当日は、木藤哲大副社長食肉事業本部長、名本真一食肉事業本部食肉マーケティング推進室室長、日本ハム中央研究所品質科学センターの加藤美紗子研究員(リーダー)が説明に立った。
それによると、成分検査は昨年から中央研究所がブランド食肉について実施しているという。
このうち、「国産 玄米牛」は、味の濃さに関わる遊離アミノ酸総量とうま味に関わるグルタミン酸量が比較対象牛肉(乳用肥育牛)よりもそれぞれ2倍・3倍多く含まれていることが判明したという。「アンデス高原豚」も、一般豚に比べてグルタミン酸量が約1.7倍、脂の口どけに関わる不飽和脂肪酸が1割強多いことが分かった。
「国産鶏肉 桜姫」では、遊離アミノ酸総量が一般鶏よりも8割多いという。こうして得られたデータをもとに、「うま味が強い・弱い」「柔らかい・固い」といったポジショニングマップに落とし込み、目指す差別化ポイントは何か、「自社を知り、他社を知る」活動を進めていくという。また、得られたデータ・エビデンスは、日々の営業活動に役立てるほか、販促資材などを通じて一般消費者にも優位性を伝えていきたい考えだ。
中央研究所の加藤研究員によると、これらブランドを含めて2021年の段階で10以上のブランド食肉について検査を実施したという。今後もほかのブランド食肉について検査を行っていくとともに、一度検査したブランドについても、その結果から改善点を見出し、生産の段階から見直していくことを繰り返す作業も進めていくという。
「すでに成分検査を行ったブランドのなかには、期待した通りの結果が出ているものもある一方、なぜこのような結果が出たのか検証する必要がある部分もある。いま検査を行っている目的は、(各ブランド食肉が持つ美味しさの能力など)スペックを知るところから始めている。柔らかさや香りなど、それが何から起因しているのか、ひとつの要因なのか複数の要因なのか、それを明確にして、最終的には生産に落とし込み、理想とするお肉をつくることが最終ゴールだと思う」とコメントしている。
木藤副社長は、「輸入・国内を問わず、当社のブランド食肉はすべて中央研究所で成分検査を進めていく。結果を踏まえ、当社のインテグレート商品であれば、飼料の改良などより何らかのこだわりを付けていくことも考えられる。海外産ではサプライヤーに対して、我々としてはこのような差別化をしていきたいと、飼料や品種、抗生物質など、我々の方から要求して、定量的な違いを導き出していくことを考えている。インテ以外にもそれが可能だと思う。また、『桜姫』など上がってきたデータに関して、それをどのようにしたらもっと高めることができるのか、(飼料に)何かを加えたらどう数値が変わるのか、テストも継続していきたい」と話している。
〈畜産日報2022年6月2日付〉