2018年度の教育産業全体(主要15分野計)は前年度比0.9%増の2兆6,794億円、主要15分野のうち9分野が市場拡大
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の教育産業市場(主要15分野)を調査し、サービス分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
教育産業全体市場規模推移(主要15分野計)
学習塾・予備校市場規模推移
1.市場概況
2018年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、前年度比0.9%増の2兆6,794億円となった。
教育産業全体市場の主要15分野のうち、前年度より市場規模が拡大した分野は、「学習塾・予備校市場」「幼児向け英会話教材市場」「学生向け通信教育市場」「幼児向け通信教育市場」「資格・検定試験市場」「幼児受験教育市場」「幼児体育指導市場」「企業向け研修サービス市場」「eラーニング市場」の9分野であった。
少子化の進行によって、学生や未就学児向けの教育サービスは、需要層の減少で厳しい市場環境にあるなか、昨今では大学入試制度改革や英語教育改革といった教育制度改革をはじめ、幼児教育・保育の無償化、働き方改革関連法の施行など、法改正や規制、制度改革によって、教育関連業界は様々な影響を受けている。
2.注目トピック
学習塾・予備校などの教育現場においてデジタル教材・AI教材の導入が進む
近年、学習塾や予備校などの教育現場において、タブレット端末やPC、スマートフォンを使用したデジタル教材、さらにはAI等の最新のデジタル技術を活用したAI教材の導入が進んでいる。
AI教材などのデジタル教材を活用することで、生徒および講師は、日常的に学習の成果や理解度、課題箇所など、学力の把握や管理が可能になる。さらに、AIが分析した情報をもとに、講師やスタッフは生徒個々人に対して適切な指導・支援が行えるため、生徒の学習意欲の向上が図れるなど、学習サービスの質の向上と、講師・スタッフの業務効率化にもつながる。講師の確保がままならない教室においても、学習サービスの質を落とすことなく、講師の負担軽減や教室運営の効率化が想定される。
現状、学習塾や予備校などでは、講師による対面授業が主流であるなか、デジタル技術を活用した学習サービスは対面授業と分け隔てるのではなく、相互補完することで、より効率的、かつ効果的な学習指導サービスの提供につながり、学習効果の最大化が期待される。
国内では業界や産業問わず、人材難や人手不足が問題となるなか、学習塾・予備校業界においても優秀な講師や教務スタッフの確保は厳しさを増している。加えて、人材採用コストならびに人件費の高騰は深刻な問題となっていることから、今後、人的資源に依存しない学習サービスの提供を可能にするビジネスモデルの確立は学習塾・予備校事業者の大きな課題であるものと考える。こうした事業者の抱える課題解決の一つの施策として、AI等のデジタル技術を活用したデジタル教材は、今後も普及、拡大していくとみる。
3.将来展望
2019年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、2兆6,968億円を予測する。
少子化の進行によって、学生や未就学児向けの教育サービスを手掛ける事業者の多くは、厳しい事業環境にある。このような状況下、教育産業の中核をなす学習塾・予備校では、顧客となる学生層の縮小によって獲得競争が深刻化することから、今後も業界再編の進行が予想される。
また、投資余力のある大手事業者は、幼児教育、英会話、情操教育、保育、学童保育、介護サービスに加え、今後、需要の高まりが期待される在日外国人向けの教育サービス・就職支援サービスなどの周辺サービスへの積極的な投資による事業領域の拡大を推進する動きをより一層強化していくものとみる。