2019年度の国内民間企業のIT市場規模は前年度比3.4%増の12兆9,180億円と予測
~製造業や金融業を中心に、デジタルトランスフォーメーション(DX)が増加基調へ~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2019年度の国内民間企業のIT投資実態と今後の動向について調査を実施した。
国内民間IT市場規模推移と予測
今後3年間でIT投資が増加するソフトウェア
1.市場概況
国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、2018年度が前年度比2.8%増の12兆4,930億円と推計した。今後は、2019年度が前年度比3.4%増の12兆9,180億円、2020年度は同1.6%増の13兆1,240億円、2021年度は同1.5%増の13兆3,200億円と予測する。
2018年度はワークスタイル変革に関する取組みが引き続き堅調に推移した他、民間企業の収益力の高まりなどから、大規模システムの更改も目立った。また、2020年1月に予定されているWindows7のサポート終了に向けたWindows10への買い替え需要も旺盛である。これらの流れは2019年度も続くと予測する。
2.注目トピック
今後3年間でIT投資が増加するソフトウェアはERPが8年ぶりに首位に
法人を対象としたアンケート調査においては、毎年、今後3年間でIT投資が増加するソフトウェアについて尋ね、回答を得ている。2019年調査(回答社数482社、最大3つまで複数選択可能)では「ERP(基幹業務統合管理)」が41.9%で8年ぶりにトップに立ち、これまでトップであった「セキュリティ関連ソフトウェア」と同率1位となった。
ERPがトップになった背景には、経営環境の変化にあわせて基幹システムを更新する動きが進んでいることや、ERPパッケージのクラウド化が進んでいること、SAPのERP保守サポート期限が2025年に迫っていることなどがあると考える。
3.将来展望
近年は、製造業などの企業でグローバル競争力を強化する機運が高まっており、これをデジタルで支援するビジネス(DX:デジタルトランスフォーメーション)に対するIT投資案件等も増加基調にある。また、市場を牽引してきた金融業についても、基幹システム更新等の大型案件が落ち着いたことで大きな伸びは期待できないとも思われたが、参画するプレイヤーが多様化し、ITを活用したサービス(FinTech)を展開する企業が拡大基調にあるなど、IT投資は順調である。
2020年度以降の国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、同年度から商用サービスの提供が始まる第5世代移動通信システム(5G)関連の投資を期待できるが、近年の市場の伸びの反動を受け、その成長は緩やかになると予測する。