C to C,個人間取引市場,2019年
(写真=Foxy burrow/Shutterstock.com)

フリマアプリの好調からCtoC物販市場規模は1兆円突破

物販・サービスいずれの分野も、一部の大手企業が市場拡大を牽引

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、2018~2019年における国内CtoC(個人間取引)市場を調査し、現況、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

図1.CtoC物販分野 市場規模(流通総額ベース、単位:億円)

図1.CtoC物販分野 市場規模(流通総額ベース、単位:億円)

図2.CtoCサービス分野 ジャンル別市場規模(成約総額ベース、単位:億円)

図2.CtoCサービス分野 ジャンル別市場規模(成約総額ベース、単位:億円)

1.市場概況

個人が自身の所有物の売買、及びスキル・サービスなどの依頼・提供といった取引を直接行う個人間取引(CtoC)は、フリマアプリなど各種CtoCサービスの普及による取引の利便性の向上や認知度の高まりから、物販、サービスの両分野別市場とも拡大が続いている。

特にサービス分野では、個人の住居で旅行客の宿泊を受け付ける民泊が近年は注目度が高い。昨今増加が著しい訪日外国人観光客による利用から、その認知度が高まり、エアビーアンドビーなど世界規模で事業を展開している事業者を中心に、国内CtoC市場規模も急拡大している。近年は、国内の事業者もCtoCサービスを立ち上げ、市場へ参入を試みている状況である。

近年は、商品、ジャンル問わず展開している総合型サービス(メルカリ、ココナラ等)が消費者に知られるようになり、CtoCサービスへの関心の高まりを受けて取引対象商品・サービスや利用者層を限定した商品・サービス特化型のビジネスが見られるようになった。しかし、2018年以降、近年参入した小規模サービスが、物販・サービス分野ともに多数が撤退。市場の構造がいっそう大手物販・サービス企業に寡占される状況となりつつある。

2019年以降の市場も、上記の傾向は変わらず、物販市場はメルカリ、サービス分野も、民泊サービスであればAirbnbなど、有力な大型サービスが売り上げを拡大し、市場を牽引する状況が続いている。

2.注目トピック

CtoCビジネスを対象にした法改正・法律適用議論が進む

物販・レンタル・サービス・金融など、各種CtoC市場の成長に伴い、近年はサービスの利用メリットやビジネスとしての将来性に注目が集まる一方、サービス上での取引トラブル、また悪質なサービス利用なども社会的に認知されるようになり、規制あるいは問題発生の抑止を目的とした、法改正や法律適用議論も活発である。

 2018年に実施された法改正では、特に近年拡大を続けていた民泊に対する実質上の個人オーナーに対する規制の影響が大きかった。新法により、CtoCビジネスを利用する個人にも、特に出品者側ユーザーで資格登録などが求められるケースとなり、手軽に副収入を得られるこれまでのCtoCビジネスのメリットを覆す結果となった。民泊オーナーの対応が進まなかった事や、行政側の要請により、違反した民泊への宿泊予約をCtoCビジネス事業者が強制的に取引をキャンセルにしたなどの混乱が生じたため、民泊市場は市場規模が初めて前年比で縮小したと推計された。

 現状、CtoC取引に参加する個人に対する規制議論は、悪質な取引の抑制を図ったもので、2019年夏時点では、民泊を除き、今後のCtoC市場参入事業者による努力を見て一旦は規制を見送る状況となっている。

しかし、上記の決定は将来に亘って規制議論を行わない主旨のものではなく、今後のCtoC市場内では、CtoCビジネス事業者による悪質なユーザーの摘発、また、チケット不正転売禁止など、現在の法改正にあわせ自主的な取引ルールの設定・管理といった自助努力が、法規制による個人間取引メリットの喪失と、ひいてはCtoC市場自体の衰退を避けるうえで必要とされる。

3.将来展望

国内CtoC市場は、2018年も市場規模の拡大トレンドは変わらず、物販分野の最大手サービス企業の「メルカリ」は、2019年6月期の決算もユーザー数及びプラットフォームの流通総額は引き続き二桁増を記録している。

また、物販分野であれば殆どの商品分野で「メルカリ」、「ラクマ」、「ヤフオク!」の3サービス、また民泊であれば「Airbnb」、スペースシェアであれば「スペースマーケット」といった分野ごとに独占的なプラットフォームが2~3種ほどに存在するなど、CtoC市場の寡占化が進んでいる。つまりCtoCビジネスは規模が大きくモノをいうビジネスであり、供給側、需要側とも参加するユーザーの獲得が何よりも大きなビジネスの基盤となることを表している。

今後の物販・サービス分野CtoC市場のポテンシャルとして、展開している企業側の見解として、若年者層ユーザーのCtoC市場参入は、ある程度進んだと考えており、今後年ごとの伸びは鈍化に向かうと考えられる。それに伴い、今後の有力企業のターゲットは、現在サービスを利用していない、また人口の多い中・高齢者層をターゲットとして市場の拡大を図る方針を打ち出している企業も増えている。

今後のCtoC市場は、大手プレイヤーを中心に、各種小売業と共通の決済機能を導入するなどして、新たなユーザーの獲得を図るなど、これまでCtoC市場の中で進めてきた事業から一歩外に踏み出した形の事業が拡大していくと考えられる。