オタク市場,2019年
(写真=Morumotto/Shutterstock.com)

「オタク」の主要分野のうち、アニメ市場とアイドル市場は今後も拡大傾向

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2018年度の国内の「オタク」市場を調査し、主要分野における各分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

表1. 「オタク」主要分野別市場規模推移

表1. 「オタク」主要分野別市場規模推移

図2. 劇場版主要アニメ比較(2019年4~6月期における劇場公開)

図2. 劇場版主要アニメ比較(2019年4~6月期における劇場公開)

1.市場概況

本調査における「オタク」市場は分野により好不調はあるものの、アニメ市場とアイドル市場は好調に推移している。

2018年度のアニメ市場規模はアニメーション制作事業者売上高ベースで、前年度比8.2%増の2,900億円と推計した。堅調な映像制作部門に加え、Netflix(ネットフリックス)のオリジナルアニメ配信の本格進出や国内外における映像配信事業が好調に推移し、拡大傾向にある。

また、2018年度のアイドル市場規模はユーザー消費金額ベースで、前年度比11.6%増の2,400億円と推計した。「ジャニーズ」「AKB48」グループを中心に引き続き中核となるファン層が市場を支えるとともに、他のアイドルグループの台頭も継続しており拡大傾向にある。

2.注目トピック

独自の解析手法「Xビジネスエンジン」による劇場版主要アニメ比較

2019年4~6月に公開された主な劇場版アニメを矢野経済研究所独自の解析手法(Xビジネスエンジン)※1を用いて分析(調査期間は2019年4~6月の3ヶ月間)した(図2参照)。

本分析結果から、「積極的支持」(魅力度・温度ともに高い)のゾーンにポジショニングされた作品は、「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」の2作品となった。

これらの作品は、1回のメディア露出あたりの反響が大きく、且つ作品に関心がある人の間で情報のシェアが積極的に行われていることから、Xビジネスエンジンの指標におけるブランドパワー(熱量、魅力度、温度という独自指標における総合評価)が強いという結果になった。

この2作品は、「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」が魅力度で12作品中トップ、「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」が温度で12作品中トップとなった。「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」は、熱量が約10万回と全体の3位と高スコアであることから、ある程度メディア露出も多いことが推測されるが、それだけに依存しないパワーが窺える。一方、「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」は、6月15日公開で調査期間の終盤だったこともあり熱量は高くなかったが、2018年10月から放送されたTVアニメの続編として、ファンの期待値が高かったことにより拡散率の高さにつながったと見られる。

※1. Xビジネスエンジンとは、矢野経済研究所が蓄積・保有する産業別市場規模データと独自に開発した、「リサーチAI(商品・サービス・ブランド計測システム)」を元に、商品、サービス、技術、ブランド、または企業そのものに対する評価を立体的に可視化し、売上高、企業力との相関分析、中核となるユーザー層の反響・支持度合いや、提供するコンテンツやサービスの魅力度合いなどのポテンシャル評価を可能する解析手法である。

※2. 「熱量」はインターネット上の検索数と口コミ数の総量であるユーザー反響数について、球(バブル)の大きさを用いて相対的に示している。また座標軸である「温度」はユーザーの発信する情報の拡散状況を指数化し、「魅力度」はユーザー反響数とメディア露出数から、ユーザーがメディアに左右されず、いかに自主的に反響したかを指数化している。両軸の交点は本調査(2019年4~6月に公開された劇場版主要アニメ比較)における「温度」と「魅力度」の平均値を示している。

3.将来展望

「オタク」の主要分野のうち、アニメ市場とアイドル市場は今後も拡大傾向にあるもの予測する。

2019年度のアニメ市場規模はアニメーション制作事業者売上高ベースで、前年度比6.9%増の3,100億円を予測する。アニメの年間制作本数は減少傾向にあるものの、引き続き国内外における映像配信事業の拡大が見込まれており、拡大傾向にあるものと考える。

2019年度のアイドル市場規模は、ユーザー消費金額ベースで、前年度比6.3%増の2,550億円に拡大すると予測する。アイドル市場は引き続き、「ジャニーズ」「AKB48」グループのファン活動が市場を下支えし堅調に推移すると見込まれるが、2019年はジャニーズ事務所とAKB48グループの活動低下に影響する出来事が起きており、急速にメディアや大衆、ファン層の支持を失うことは考えにくいものの、成長率は鈍化するとみる。