電気代が「遅れて」値上がり、「電力難民」問題も浮上
(画像=umaruchan4678/stock.adobe.com)

電気料金が継続的に値上がりしている。大手電力会社10社の2022年5月分の電気代は、過去5年間で最も高い水準になり、6月以降も上昇が続く見通しだ。家計にも事業にも大きく影響する電気代高騰の背景に加え、「燃料費調整制度」や「電力難民」についても解説する。

1年で約1,700円上昇

NHKの報道によると、5月分の電気料金は大手10社すべてで値上がりした。使用量が平均的な家庭の1ヵ月分の電気料金と、4月分からの値上がり額は以下の通りだ。

東京電力の2021年5月分の電気料金(使用量が平均的な家庭)は6,822円だった。1年間で約1,700円上昇したことになる。

なぜ値上がりが続くのか?

電気代の値上がりはなぜ続いているのか。また「燃料費調整制度」という言葉も耳にするが、どのような仕組みなのか。

背景には不安定な世界情勢

電気料金の大幅な値上げ傾向は、2021年の秋から続いている。この頃、新型コロナウイルス感染症拡大がいったんの落ち着きを見せ、世界的に経済情勢が回復したことで原油などのエネルギー需要が増えた。

さらに2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が起き、世界情勢は緊迫した状況が続いている。これらの影響を受け、原油や石炭、液化天然ガス(LNG)などの燃料価格が大幅に高騰した。

そして、為替市場ではウクライナ侵攻などの影響を受けて円安が急速に進み、国内企業は大きな打撃を受けている。2022年3月時点で、石炭やLNGの平均輸入価格は1年前と比較して約2倍に高騰した。

電力大手10社の2022年3月期決算では、東北電力・北陸電力・中部電力・中国電力・四国電力の5社が最終赤字となり、いずれも経営状況は厳しい。

「燃料費調整制度」とは?

電気料金には、利用者の負担が大きくなりすぎないように、燃料価格の上昇分を料金に上乗せできる上限が定められている。これを「燃料費調整制度」という。

燃料費調整制度により、各社が設定した燃料費の基準価格の1.5倍を超えると自社負担となる。6月までに関西電力・東北電力・中国電力・四国電力・北陸電力・沖縄電力の6社が上限に達した。

また、この制度では高騰した燃料価格は最短で2ヵ月後に利用者の料金に適用される。例えば、2022年1~3月分の平均燃料価格は、6月の電気料金に上乗せされる仕組みだ。そのため、電気料金の変動はエネルギー市場の動きとタイムラグがあり、やや遅れて反映される。

新電力にも影響、「電力難民」問題も

燃料高騰の影響は、大手電力会社だけでなく「新電力」と呼ばれる小売電気事業者にも大きな打撃を与えている。

新電力とは、2016年の電力小売り全面自由化に伴い新規参入した事業者だ。今回電力の調達コストが急増したことで安定供給ができなくなり、営業停止に追いこまれたり、市場を撤退したりした企業も少なくない。

大手電力会社にとっては本来、新電力はライバルだ。新電力が電力を供給できなくなるなどしたら、契約が切れた企業を取りこみたいところだろう。しかし、そもそも大手も電力供給が不十分で、安定価格での提供ができない状況である。

新電力から電力の供給を受けられず、大手にも契約切り替えを受け入れてもらえない企業は「電力難民」と呼ばれ、問題になっている。2022年5月末時点では、少なくとも大手電力会社8社が新規契約の受け付けを停止している。

今後はどうなる?

6月以降の電気料金はどうなっていくのか。

使用量が平均的な家庭の電気料金で比べてみると、6月分の電気料金は北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・九州電力の5社が上昇する。値上がりは10ヵ月連続だ。東京電力の場合、使用量が平均的な家庭の電気料金は、5月分から60円値上がりして8,565円となる。

大手10社のうち残りの5社は5月分で燃料費調整制度の上限に達しており、東北電力も6月分で上限価格となる。

さらに、都市ガス大手4社も同様の背景から、いずれも値上げを続けている。東京ガスの6月分の料金は、平均的な使用量の家庭の場合は5,808円で、5月分から24円上昇している。大阪ガスも24円値を上げ、6,360円となる。

値上がり続きで家計・事業への負担増大

緊迫化するウクライナ情勢の影響などによる世界的な燃料価格の高まりを受け、電力会社の経営が悪化した。大手電力会社による電気料金の値上げが続き、家計や事業への負担は増えるばかりだ。また、燃料費調整制度によって燃料価格の変動は遅れて電気料金に反映されるため、7月以降も値上がりが続く場合がある。

家庭でも企業でも節電を心がけるなどある程度の対策はできるが、電気代だけでなく、原油高や円安による消費者物価や企業物価が全体的に高まっている。経済の混乱は避けられない状況だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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