「一棟買い」と「区分所有」はどっちが賢明な投資なのか
(画像=moonrise/stock.adobe.com)

不動産投資として人気が高いマンションやアパートだが、購入の方法には「一棟買い」と「区分所有」がある。区分所有と比較して、一棟買いにはどのようなメリット・デメリットがあるのか。いわゆる「空室リスク」など、マンション経営の落とし穴や対策も解説する。

「一棟買い」の3つのメリット

マンション投資を検討する時、重要な選択となるのが購入と所有の方法だ。マンションごと購入する一棟買いと、部屋ごとに購入する区分所有という選択肢がある。

一棟買いの場合、空室リスクの影響が小さいことに加え、自由な経営がしやすく、また不動産の担保価値が高いというメリットが挙げられる。

1.空室リスクを抑え、安定収入を

マンション投資の大きな懸念は空室が出ることだ。購入の時点で、空室リスクをできるだけ減らす対策が必要になる。区分所有の場合は、1部屋に対し借り手がいれば収入は100%だが、いなければ0%となってしまう。

一方で、例えば50室のマンションを一棟買いした場合であれば、10室に借り手が見つからなかったとしても残りの40室で80%の収入は得られる。そのような意味で、空室リスクを抑えることができ、比較的安定した利益が見込めるのがメリットだ。

2.自由なマンション経営がしやすい

不動産の価値を上げて近隣マンションと競合するため、修繕やリノベーションを検討することがあるだろう。また、周辺地域のニーズに合わせて入居条件を変更し、借り手を増やすことも重要だ。マンションごと所有している場合は、オーナーである自身の判断でこれらを自由に行うことができる。

しかし区分所有となると、共有部分の修繕や大規模なリノベーションを自己判断で行うことはできない。入居条件の変更にも管理組合の同意が必要だ。思うような経営ができず、結果的に不動産の価値を下げてしまう可能性もある。

3.土地所有による高い担保価値

区分所有と異なり、一棟買いでは一般的に建物だけでなく土地も所有する。その分、資産としての担保価値が高く評価される傾向にある。所有不動産を担保に金融機関から融資を受け、次の不動産投資を計画している場合などは、担保価値がより重要だ。

一棟買いの3つのデメリット

上記のような利点がある一棟買いだが、デメリットも存在する。購入費用やランニングコストの高さ、リスク分散のしにくさ、流動性の低さなどだ。メリットだけでなく、これらのデメリットも正しく理解しておきたい。

1.購入費用やランニングコストが高額

区分所有であれば、マンションの1室だけの購入からでも不動産投資を始められる。しかし一棟買いの場合、その購入価格は高額になり、融資を受けるなど資金の準備も大変だ。当然ながら、経営に失敗した場合の損失も大きいのがデメリットである。

また、経営にはランニングコストがかかる。老朽化などに対する内装・外装の修繕費を自身で負担しなければならない。固定資産税や都市計画税などの税金も高額になる。

2.災害や事故のリスクが分散しにくい

万が一、地震などの災害で被害を受けた時、一棟所有ではすべてが被災し大きな損失が出る可能性もあるだろう。死者が出ることで、思いがけず事故物件となってしまうこともある。

区分所有では、複数のマンションに少しずつ部屋を持ち、運用するケースが多い。一部の部屋が災害などの被害を受けても、異なる地域で区分所有していればリスクを分散させることができる。

3.不動産市場での流動性が低い

一棟買いではそもそも不動産が高額なため、市場での流動性が高いとは言い難い。売却しようとしても、すぐに買い手が現れるとは限らない。早く売却する必要があれば、価格を下げざるを得ないこともあるだろう。

空室リスクはどう対策する?

空室リスクは、不動産投資とは切っても切り離せない問題だ。どのように対策していくべきか。

空室・空き家は今後ますます増える?

現在、全国的に空き家が増え、社会問題にもなっている。総務省統計局の2018年の調査によると、空き家数は848万9,000戸で過去最多だった。空き家は、全国の住宅の13.6%を占めている。このうち約半分の約460万戸が、マンションなど共同住宅の空室だ。少子高齢化が進み、人口減社会に突入している日本では、今後さらに空室が増えると考えられる。

また現状、空室率は地域ごとに差がある。一般的に都市部では空室率が低いと考えられるが、新築物件の建設が続く供給過多なエリアや、特定の入居需要に頼るケースでは、空室リスクが高まることもある。

状況に応じた対策が必要

例えば、近くに大学があることに期待して学生向けマンションに投資したとする。しかし、周辺に同様のマンションが多く建築されたり大学が移転したりすると、入居者が減ってしまうかもしれない。一方で、郊外であっても近隣に競合物件が少ない場合や、特定の属性の入居者に頼らないことで、空室リスクを抑えられることもある。このように状況に応じた対策が必要だ。

また前述のように、区分所有ではなく一棟買いであれば、満室にすることができなくても収入がゼロになる可能性は低い。

メリット・デメリットを知って的確な投資を

マンション投資における一棟買いと区分所有の違いやメリット・デメリットについて解説した。どちらが賢明な投資かは資金や状況、エリアなどによって異なるだろう。

いずれにしても、購入・維持のための費用や、検討しているエリアの環境、空室リスクなど、さまざまな要素から、より適した投資方法・経営方法を見つけることが重要だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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