注目のオークション情報から、NFTのトピックまで。先週1週間のアートトピックを振り返ります。(1ドル=129円で換算)
オークション
▍ウォーホルの「マリリン」が約252億円で落札。オークション史上2番目の高額作品に。 2022年5月9日、ニューヨークのクリスティーズオークションでアンディ・ウォーホルによるマリリン・モンローの肖像画≪Shot Sage Blue Marilyn≫が、約1億9,500万ドル(約252億円)で落札された。オークションにおける美術品としてはレオナルド・ダ・ヴィンチに次ぐ2番目に高い結果。また、20世紀の美術品としての記録も塗り替えた。落札者はメガディーラーのラリー・ガゴシアン。彼は、この作品を自分のために購入したのか、それとも顧客のために購入したのかについては言及を避けている。(artnet news)
▍なぜ「マリリン」は史上2番目に高額な作品となったのか? 前項のとおり、アンディ・ウォーホルの≪Shot Sage Blue Marilyn≫が約1億9500万ドル(約252億円)という高額で落札されたが、この理由についてArtprice社は5つのポイントで解説している。①アンディ・ウォーホルが現在史上の頂点にいるアーティストであること ②ウォーホルのなかでも最良の制作時期の作品であること ③作品のもつエピソード ④ウォーホルが戦後美術のアイコンであり、NFTに通じる問いを発していること ⑤経済状況が極めて良好であること。 こうした条件の下、今回の価格が達成された。(CISION)
▍クリスティーズの21世紀セールが約133億円の売上を達成 2022年5月10日に開催されたクリスティーズのイブニングセールで、10個の新記録が樹立され、総額で1億300万ドル(約133億円)を売り上げた。ゲルハルト・リヒターの≪Abstraktes Bild≫が3,660万ドル (約43.2億円) でこの夜の最高値となり、リヒターの作品として2番目に高額な落札価格を達成した。この作品は、エリック・クラプトンが2001年に購入したリヒター作品3点のうちの1点。オークション開始直前にジャン=ミシェル・バスキアの作品2点が取り下げられたことで予想されていたオークションの総額に影響が出たが、全体として好調な売れ行きとなった。(PENTA)
▍ピカソとドガの彫刻、それぞれ過去最高額で落札される 2022年5月12日、ニューヨークのクリスティーズオークションで、エドガー・ドガの彫刻が4,160万ドル (約54億円) で落札され、フランスの芸術家の作品としてはオークションでの最高値となった。また、パブロ・ピカソの≪Tete de femme (Fernande)≫も、彼のブロンズ作品として高額落札記録を更新した。同作品はメトロポリタン美術館が所蔵していたもので、売却益はすべて新たな作品の購入資金に充てられるという。(news nine)
マーケット
▍若手作家の作品のオークション売上が2019年以降305%急増 Artnet Newsの調査レポートによると、アート市場の中で急速に成長しているのは1974年以降に生まれたアーティストによる作品である「ウルトラ・コンテンポラリー・アート」だという。このカテゴリーのオークション売上は、パンデミックの間にも爆発的に伸び、2019年から2021年にかけて305%急増。こうした若手への人気のシフトは、ミレニアル世代のコレクターの台頭やアジアの影響力の増大が影響していると分析されている。(artnet news)
▍パンデミックの落ち込みの後、オークションで優良アートの価格が高騰 オークション市場において、ハイエンドの作品価格が高騰していることをBloombergが報じている。この傾向はウォーホルの「マリリン」の高額落札など、5月にニューヨークで開催されている一連のオークション結果に現れている。パンデミック期に売り手側が警戒し、一時売り控えていたものの、現在は安心して売却を選択しているために一流の作品が市場に出回りはじめていることが影響している。パブロ・ピカソ、クロード・モネ、ジャン=ミシェル・バスキアなど、ハイエンドな作品は、美術品はここ数年で最も高価になっているという。(Bloomberg)
NFT
▍BeepleとマドンナがNFTの新プロジェクトを始動 デジタルアーティスト Beepleとマドンナがコラボレーションし、マドンナをすべての創造の母として表現した3つのNFTを制作した。3点の作品はいずれもマドンナを3Dレンダリングして制作した非常に生々しい映像作品。マドンナが木や蝶を出産する様子が描かれている。1年ほど前から準備を進めていたというもの。作品はオークションにかけられ、収益金は、ウクライナの女性と子供のための慈善団体などに寄付される予定だという。(ARTnews)
▍InstagramがNFTツールを試験的に導入開始 Meta傘下のInstagramは、NFTの統合機能を試験的に導入することを発表した。InstagramはMetaMaskのような暗号ウォレットをサポートする予定であるという。TwitterがNFT用に六角形アイコンを採用したように、ユーザーがNFTを所有していることを証明し、作品をプロフィール上で紹介できるようにする。現在は米国の一部のInstagramユーザーしか利用できないが、本機能は徐々に展開され、将来的にはFacebookのユーザーも利用できるようにするとしている。(artnet news)
国内の展覧会
▍WHAT MUSEUMで骨董と現代アートの展覧会。名和晃平作品のための特別な展示室も 天王洲にある「WHAT MUSEUM」で「OKETA COLLECTION『Mariage −骨董から現代アート−』」展が開催されている。長年ファッションビジネスに携わってきたコレクターの桶田俊二・聖子夫妻のコレクション作品の「骨董」と「現代アート」を合わせて展示している。注目は、名和晃平の作品のみを展示する、この展覧会のための特別な空間で、名和晃平の代表作のひとつ ≪PixCell-Deer#48≫を様々な角度から鑑賞することが出来る。(OKETA COLLECTION「Mariage −骨董から現代アート−」)
▍京都でレギーネ・シューマン、落合陽一、横山奈美による「光」をテーマにした展覧会 5月14日〜6月22日、京都・鴨川のほとり、東山を望むアートスペース「kōjin kyoto」において、レギーネ・シューマン、落合陽一、横山奈美という国内外3人のアーティストを招き、光をテーマにした展覧会「ゆらぐ be with light」が開催される。キュレーションは南條史生が手がける。ドイツ出身のレギーネ・シューマンは、代表的な蛍光顔料を混入させた特殊なアクリル板を使った作品群に加え、「フルオ・カット」シリーズを展示する。(ゆらぐbe with light)
▍草間彌生、アニッシュ・カプーアらによる「世界の終わりと環境世界」展がスタート 表参道にある「GYRE GALLERY」で、草間彌生、アニッシュ・カプーア、大小島真木らの作品を通してこれからの環境の未来を考える展覧会「世界の終わりと環境世界」展がスタートした。環境問題や核の脅威など、近代の諸概念を根源的に問い直す展覧会となる。(世界の終わりと環境世界)
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文:ANDART編集部