せっかく新しい見込み顧客に会えたのになかなか案件化しない。どの企業もぶつかる壁である。案件化しないと、せっかく出会えた新しい見込み顧客が収益化することはなく、マーケティング投資も無駄になってしまう。今回は、新しい見込み顧客とそれっきりの関係にならずに着実に案件化させるためのポイントを紹介しよう。
延岡高校、慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒生として米系金融機関であるシティバンク銀行入行。営業職として同期で唯一16ヶ月連続売上目標を達成。 2007年、日本の営業マーケティング活動はもっと効率的にできるという思いから営業支援・コンサルティング事業を展開する株式会社エッジコネクション創業。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が経営に苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア等で発信中。1200社以上支援し、90%以上の現場にて売上アップや残業削減、創業前後の企業支援では80%以上が初年度黒字を達成。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数。
目次
ポイント1:「困ってなければこの商談は発生していない」と思う
商談の際、こんなことを言われたことはないだろうか。
「特に今、課題はないんですよねぇ。」
そんなわけないのだ。
商談が実施されているということは、お問い合わせいただいたか、こちらからのテレアポやDMに反応してくれたか、きっかけはどうあれ、話を聞きたいと思っていただけたから、その商談が行われているのである。
もちろん、以下のようなケースでは相手が困っていない商談も起こりえる。
・飛び込み営業:突然相手の状況も考えずに押し掛けるため
・紹介営業:仲立ちしてくれた紹介者の顔を立てるために時間を作ってくれることがあるため
・勘違い:先方が商談目的を勘違いしているケース
裏を返せば、上記3つ以外のきっかけで設定された商談は、必ず相手がなにがしかの課題感、課題感とまで言語化できていなくても、“もやもや”くらいは抱えているからこそ、商談につながったのである。
「必ず課題感やもやもやを抱えているので、それを聞き出してお客様と共有する。」
そのようなマインドを持って商談に臨むことが、まず身につけなければいけないポイントである。
ポイント2:自己紹介用資料と提案用資料を分ける
今、あなたが使っている営業資料はどのような構成になっているだろうか?
もし、営業資料をそもそも使っていないという場合、ぜひ使ってほしい。
営業資料は、資料に沿って商談を進めることで、再現性高く同じ流れの商談ができるというメリットを持つ。よって、良い営業資料が完成すれば、質の高い初回商談を量産できるのである。
そんな営業資料だが、こんな使い方をしていないだろうか。
「本日はよろしくお願いします。」から始まり、営業資料を一通り説明して、「御社の状況はいかがでしょうか?」とフリートークに入り、そこで特に課題感を得られなければそのまま商談終了。
これだと、次につながりにくい初回商談になってしまう。
思い出してほしいのがテレビショッピングである。
「今回、ご紹介するのはこちら!」
とプレゼンターが概略を説明した後、周囲のタレントと
「そうは言っても、油汚れは落ちないでしょ~」
「いやいや、そんなことはありません!ほら見てください!」
「おぉ~!!」
といったやり取りが展開され、
「でも、お高いんでしょ~??」
「なんと19,800円です!!」
「安い!!」
と価格紹介にて終わる。
プレゼンターは最初の概略説明で、油汚れも落ちることはもちろん、値段まで紹介して良かったわけだが、しない。
そうしないと、タレントさんの仕事がなくなるというのもあるが、最初にすべてを一方的に紹介すると見ている側の心境もどうだろうか。なんとなく納得感が低くなってしまうのではないだろうか。
これが、資料をワンセットにするデメリットである。
商談相手が一方的に話を聞いていると、自社の求めるものと近いものが資料や話の中に出てきても、「近いけど、少し違うな。」と結論付けられてしまう可能性が高いのである。
よって、以下のような流れを想定して資料を準備してほしい。
自己紹介(会社案内) → フリートーク → 提案(実績紹介・サービス紹介)
こうすることで、提案が最後にくるので「近いけど違うな。」と結論付けられることがなくなる。
そして、「お考えのこととは少し異なりますが、ただ、規模が違うだけでほとんど同じような実績がこちらです。」と言いながら提案に入れ、「求めていた会社だ!」と思わせることができる確率が高まるのである。
これが、資料を2つに分けるメリットだ。
ポイント3:「本日のアポイントはあなたが承諾したからですよ」とわからせる
ポイント2で説明した流れで商談をすると、会社案内の後にフリートークに入ることになる。
その際、「特に困ってないんだよね。」という人はゼロではない。
自分が問い合わせをしてきたのに、自分が「はい、話を聞きましょうか。」とアポイントを承諾したのに、である。
この、「困ってない」という状態を作られると、人間は自分が発した言葉に一貫性を持たせようとするので、課題感やもやもやを聞き出すのがほぼ不可能なくらい難しくなる。
よって、「困ってない」を言わせないことが重要なのだ。
では、どうするか。
フリートークの出だし、もっと言えば、会社案内の最後くらいのイメージで以下のような言葉をぶつけ、「困ってない」と言える余地をなくしてしまうのだ。
「以上が弊社のご紹介でした。それで・・・本日、お時間をいただけたということは、弊社のようなサービスについていろいろと情報収集をされていたり、何かしらお考えのことがおありだったりで、この場をいただいていると思ったのですが、その辺りはいかがでしょうか?」
暗に、「あなたが望んだから私はここにいるんですよ。」と伝えるのである。
これで、8~9割の商談にて「困っていない」と言われることがなくなるだろう。
「そうなんですよねぇ。実は…」とスムーズにフリートークに入っていける。
これが3番目のポイントである。
ただ、まれにこのようなフレーズをぶつけても「暇だったからアポイントOKしただけなんですよね。」などと言う人がいる。
ではどうするか。そんな場合は、「少しの課題感もないですか?」などと追いかけてはいけない。
「そうなんですね。そうしましたら、特に必要でなければ、これ以上お時間をいただくのも申し訳ないので、本日は会社案内のみで、今後、何かしら課題のようなものが浮かんできましたらご連絡いただけましたら幸いです。」
と、引くのである。そうすると、ほとんどのケースで、「ちなみに、うちと近い会社の実績はあるの?」などと、話をつなげようとしていただける。
なぜなら、商談とは何かしらの課題感やもやもやがあるからだ。
最後の重要なポイント:連絡を取り合う時期をきちんと決めて終わること
ここまでのポイントをおさらいしよう。
ポイント1:「困ってなければこの商談はない」と思う
ポイント2:自己紹介用資料と提案用資料を分ける
ポイント3:「本日のアポイントはあなたが承諾したからですよ」とわからせる
これら3つを抑えることで、
「必ずこの商談は次につながるはずだ!」と思いながら初回商談に臨み、
「本日のアポイントはあなたが承諾したからですよ」とわからせるので斜めに構えられる事が減り、
資料を2つに分けたことで「ちょっと違うのですが、このような実績があるのでお力になれると思います!」と提案に入れるようになり、
結果として、次につながる可能性が高い初回商談が展開されるようになる。
ここまで抑えての最後のポイントは、次に連絡を取り合う時期をきちんと決めて終わる、ということである。
どれだけ初回商談がうまく運んでも、予算申請時期の兼ね合いや体制変更を控えているなどですぐに案件化しないこともある。そんな時に「また時期がきましたらよろしくお願いいたします。」で終わるのは、もったいない。
当然、「見積もりください。」など直近で受注の可能性が出てきたら、即座に対応するのが当たり前。しかし、そうでなくても、以下のようにして次に連絡を取り合う時期を取り決めるのである。
「見当違いの時期にたびたびご連絡してもご迷惑かと思いますので、ご指示いただいた時期にご連絡したいと思うのですが、先ほどの話ですと2か月後くらいでしょうか?」
こうすることで、2ヶ月後には「先日の件、あれからどうですか?」という連絡ができ、そこで話がまだ進んでなければ、同様にして次の連絡時期をすり合わせれば良い。
こうすることで、一度商談したお客様が将来的な見込み顧客に確実になっていくのである。
以上が、初回商談を案件化させるための4つのポイントである。
確実に落とし込み、初回商談から最大限の受注を生み出してもらいたい。