「円安ドル高」の進行が止まらない。2022年の年初は115円前後で推移していたが、いまや約130円だ。そして円安とは別に、米国市場ではエネルギー関連株の上昇が顕著で、米ドルで米国のエネルギー関連株に投資していた人はダブルで恩恵を受けている。
ダブルの恩恵でウハウハな人たち
米ドルでアメリカのエネルギー関連株に投資している人は、「円安ドル高」の恩恵と、「エネルギー関連株の上昇」の恩恵の両方を享受しており、2022年の年初からかなりの運用益を出せている人が多い。
円安ドル高による恩恵と、エネルギー関連株の上昇による恩恵について、それぞれ分けて解説していく。
円安ドル高による恩恵について
ドルを保有している人にとっては、円安ドル高の進行は歓迎すべきことだ。「円安」や「円高」の概念と日本円に換算した場合の価値の変動については、実際に外貨で投資をした経験がない人にとっては少し分かりにくいかもしれない。以下、実際に数字を挙げて説明しよう。
まず円安ドル高についてだが、「1ドル=100円」が「1ドル=110円」と変化した場合、円安ドル高が進行した、ということになる。当初は100円で1ドルを手にすることができたが、円安が進むと110円を払わなければ1ドルを得られない。これが、円安(=円の価値が下がる)というわけだ。
では、円安が進行する前と円安が進行したあとで、保有しているドルを日本円に換算した場合、どのように価値が変動するか考えてみよう。
1ドル=100円のときに100万円で1万ドル買い、そのまま1ドル=110円になるまでドルを保有していたとすると、日本円の価値は以下のように変動する。
※実際は手数料なども考慮する必要がある
<100万円をドルに替えて円安が進行した場合の日本円の価値の変化>
円安ドル高になっても保有しているドルの量は変わらないが、日本円の価値は100万円から110万円に増えていることが分かる。1ドル=100円が1ドル=110円になったことで、日本円にして10万円の含み益が発生しているわけだ。
2022年の年初にドルを購入していると……
もし、2022年の年初に1ドル=115円の時点で円をドルに替えていたとする。この記事を執筆している2022年4月28日時点では1ドル=128円台まで円安が進行しており、100万円をドルに替えていた場合、日本円の価値は以下のように推移する。
<100万円をドルに替えて円安が進行した場合の日本円の価値の変化>
先ほどと同様に、1ドル=115円時点で100万円をドルに替えていた場合を想定すると、年初から約5ヵ月間、ドルを保有しているだけで11万2,960円の含み益が発生していることになる。1,000万円をドルに替えていた場合は、112万9,600円もの含み益が発生する。
エネルギー関連株の上昇による恩恵について
円安ドル高の場合の恩恵について理解したところで、年初から現在にかけてのアメリカのエネルギー関連株の株価の上昇についても説明しよう。
そもそも、アメリカのエネルギー関連株に投資する場合は、円をドルに替えなければ株式を購入できない。年初に円をドルに替えてアメリカのエネルギー関連株を購入していた場合、自然と円安ドル高の恩恵を受けることになる。その上で、エネルギー関連株の上昇の恩恵も受けられるわけだ。
エネルギー関連株の株価の変動の参考になるのが、「XLE」というアメリカのETF(上場投資信託)だ。XLEはエネルギー関連株で構成されたETFで、XLEの基準価額(※株式でいう株価のこと)は年初来で30.83%高となっている。
もし、年初に100万円を8,695ドルに替え、その全てをXLEに投資していたとすると、8,695ドルが30.83%増え、1万1,375ドルになっている。その1万1,375ドルを1ドル=128円のレートで円換算すると、以下のようになる。
1万1,375ドル × 128円 = 145万6,000円
年初の100万円が、円安ドル高の進行と米国のエネルギー関連株の上昇により、145万6,000円まで膨らんだ、ということを示している。
株式投資における「先見の明」の重要性
円安ドル高が進行したのは、日本と米国の金利差が開いたことが要因のひとつとされている。米国のエネルギー関連株の上昇が続いているのは、世界的なエネルギー不足の懸念が高まっており、原油価格が上昇しているからとされている。
原油価格が上昇するとエネルギー関連株も上昇しやすい。ちなみに、エネルギー不足の懸念が高まっているのは、ロシアがウクライナへ侵攻したことにより、産油国ロシアに対して各国が経済制裁に踏み切っているからだ。
このような現在の状況を年初時点で予測し、円をドルに替えてアメリカのエネルギー関連株に投資していた人は、大きな利益を得ている。株式投資において先見の明があることが非常に重要なことを改めて感じさせる。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)