人材確保が必要な理由は? 採用・定着を促進させる方法と取組事例を解説
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事業を継続的に発展させるには、人材確保が欠かせない。今回は、人材確保が必要な理由をおさらいしつつ、採用と定着の観点から人材確保を促進させる方法を解説していく。人材確保に関する中小企業の取組事例も紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。

目次

  1. 中小企業が人材確保を促進すべき3つの理由
    1. 理由1.優れた人材は事業の起爆剤となる
    2. 理由2.離職率が高いと無駄なコストが生じる
    3. 理由3.人口減少により人材獲得競争が激化
  2. 人材確保の対策で重要になる2つの要素
    1. 要素1.採用戦略
    2. 要素2.定着に向けた取り組み
  3. 採用戦略で人材確保を促進させる7つの方法
    1. 方法1.求人媒体を検討する
    2. 方法2.求人内容を見直す
    3. 方法3.多様な働き方に対応する
    4. 方法4.採用したい人物像を明確にする
    5. 方法5.自社の魅力を分析する
    6. 方法6.公式ホームページを刷新する
    7. 方法7.面接で自社の魅力をアピールする
  4. 定着によって人材確保を促進させる7つの方法
    1. 方法1.教育体制を整備する
    2. 方法2.納得できる人材評価制度を導入する
    3. 方法3.キャリア支援に力を入れる
    4. 方法4.管理職向けの研修を実施する
    5. 方法5.柔軟な配置転換の仕組みを整える
    6. 方法6.快適な職場環境を用意する
    7. 方法7.社員同士で親睦を深める機会を作る
  5. 人材確保に向けた取組事例
  6. 人材確保は経営者にとって永遠のテーマ
  7. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

中小企業が人材確保を促進すべき3つの理由

まず、中小企業が人材確保を促進すべき理由を3つ解説していく。

理由1.優れた人材は事業の起爆剤となる

企画力やリーダーシップ、高度な技術力を持つ優れた人材は事業の起爆剤となり、会社やほかの社員に多大な影響を及ぼす。結果として、商品開発が進んだり、売上が伸びたり、チームのモチベーションが向上したりする。

少数精鋭の中小企業であれば、一人ひとりの人材に期待される役割も自然と大きくなる。事業を成長させるために、優れた人材の確保は重要な課題といえるだろう。

理由2.離職率が高いと無駄なコストが生じる

人材の採用や教育には多額のコストが生じる。成果を上げる前に離職されると、会社が不利益を被る。

離職率の低下は、採用や教育にかかるコストの削減に直結する。したがって人材の採用だけでなく、定着に向けた取り組みも人材確保において欠かせない。

理由3.人口減少により人材獲得競争が激化

日本の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じた。人口減少社会という言葉が定着し、将来的に人口が1億人を切るという推計もある。人口減少社会において、人材獲得競争はますます激化すると見込まれる。

今のうちに採用や定着に向けた取り組みを見直し、人材確保の戦略を練っておくことが大切だ。

人材確保の対策で重要になる2つの要素

人材確保の対策で重要になる要素は、「採用戦略」と「定着に向けた取り組み」だ。どちらが欠けてもうまく機能せず、どちらかに偏り過ぎても非効率が生じる。両者の重要性を認識し、バランスを意識して戦略的に取り組むようにしたい。

要素1.採用戦略

採用戦略で重要なのは、採用したい人材を明確化することだ。

優秀な人材が欲しいという声を聞くが、優秀な人材が必ずしも長く会社に貢献するとは限らない。また、優秀な人材は自分の能力に見合う待遇や給与を要求しがちだ。優秀な人材を求めるなら、求職者に対して自社が提供できるメリットを考える必要がある。

率直にいうと優秀な人材にこだわるより、自社にマッチする人材を明確化して採用戦略を練ったほうがよい人材を確保しやすい。必要な能力や望ましい人柄などを掘り下げ、自社にマッチする人材にアプローチすることが大切だ。

要素2.定着に向けた取り組み

採用を重視して人材確保に奔走している中小企業も多い。しかし、そもそも採用が必要になる背景には、離職率の高さが隠れていることもある。定着に向けた取り組みをおろそかにするのは、穴の開いたバケツに水を入れるに等しい。

採用だけでなく、定着に向けた取り組みに関しても同時に進めていくことが大切だ。

具体的には、社員がスムーズに業務を行えるよう教育制度を整えたり、納得感のある評価制度を設けたりする方法がある。自分の能力が認められる環境であれば、自然に定着率は上がるはずだ。

採用戦略で人材確保を促進させる7つの方法

続いては、採用戦略で人材確保を促進させる方法を7つ紹介していく。すでにできていること、まだ取り組めていないことを整理しながら読んでほしい。

方法1.求人媒体を検討する

求人媒体は時代の流れとともに大きく変化している。紙媒体の求人広告やハローワークだけでなく、採用・転職サイトや人材紹介会社、SNSなどの利用も検討できるようになった。

同じ求人媒体を利用し続けている場合、求人媒体を見直すだけで大きく採用効率が上がることもある。

採用形態や職種、自社の魅力、採用したい人物像などを踏まえて、最適な求人の出し方を選択するようにしたい。

方法2.求人内容を見直す

競合他社をピックアップし、求職者視点で求人内容を比較分析する。採用形態や給与、勤務時間、休日数、経験の有無などの項目を確認し、自社の立ち位置を確認する。

また、必要な情報や不信感を抱かせる内容にも着目して見直す。新入社員や転職者に協力を仰ぎ、社歴の浅い社員に率直な意見をもらうとよいだろう。

方法3.多様な働き方に対応する

働き方改革やコロナ禍の影響で、求職者が多様な働き方に注目する時代となった。したがって、フレキシブルな勤務体制で求職者に対応しなければならない。

たとえば、フレックスタイム制やリモートワーク、時差出勤の導入、感染対策への配慮、育児・介護に対する支援制度、副業の許可などが考えられる。

方法4.採用したい人物像を明確にする

採用したい人物像を明確にすれば、求人媒体や求人内容、必要な社内制度、求職者にアピールすべきポイントなどもおのずと見えてくる。

採用したい人物像を考えるときは、社内で長く活躍している社員を参考にするとよい。基準が厳しくなり過ぎないよう、必須能力や歓迎スキルなど優先度を分ける。

方法5.自社の魅力を分析する

採用活動は、企業にとっても選ばれる場だ。自社の魅力を分析して適切にアピールすることが、優秀な人材を確保する近道だ。

社風やオフィス環境、教育制度、資格取得の支援など、さまざまな観点で自社の魅力を整理しておきたい。自社の魅力は自社で気づけないこともあるため、社員や取引先から意見を求めるのも効果的だ。

アットホームな社風や技術・経験が身につくといった点をアピールする場合、求職者がイメージしやすいよう情報に具体性を持たせる。たとえば、採用ページに社員インタビューを掲載したり、SNSで社内行事の動画を公開したりする方法が考えられる。

方法6.公式ホームページを刷新する

公式ホームページは求職者にとって重要な情報源だ。自社の魅力が伝わるようしっかり整えておきたい。

デザインだけにこだわらず、オフィスの写真や先輩社員インタビューなど、求職者が知りたい情報を確認できるようにする。

あわせてGoogleマップの写真やクチコミなどもチェックしておきたい。ストリートビューの暗い写真や低評価のクチコミによって、マイナス印象を持たれる可能性がある。

写真を追加したり低評価のクチコミに返信したりするなど、適切に対処しておきたい。

方法7.面接で自社の魅力をアピールする

面接は求職者に自社の魅力をアピールする場でもある。笑顔で丁寧に対応するとともに、求職者の質問には誠実に答えなくてはならない。

希望があれば、面接後に職場見学を実施し、オフィスを案内するとよいだろう。自社の魅力を求職者に伝えきれるよう、模擬面接で面接官を教育しておきたい。

定着によって人材確保を促進させる7つの方法

定着に向けた取り組みは、採用戦略と同時並行で整備していくことが重要だ。続いては、離職率を下げて人材確保を促進させる7つの方法を紹介する。

方法1.教育体制を整備する

スムーズに仕事を覚えられず離職する新入社員もいる。新入社員研修を用意するだけでなく、現場の意見を取り入れながら、実務で役立つ内容に見直さなければならない。

先輩と後輩がペアになり、先輩が後輩を指導するメンター制度を導入するのもおすすめだ。そのほか、資格取得の支援やセミナー代金の補助などの取り組みも考えられる。

方法2.納得できる人材評価制度を導入する

評価内容が不透明で、昇進・昇給の基準が不明瞭だと、社員は意欲的に働けない。反対に、納得感のある評価制度は社員のモチベーションを向上させ、売上アップにつながるケースもある。自社に合った評価制度を検討したい。

評価制度の例として「360度評価」が挙げられる。上司が一方的に部下を評価するのではなく、上司・同僚・部下が対象者を評価する仕組みだ。ほかにさまざまな項目を設け、社内表彰を行うのもよいだろう。

方法3.キャリア支援に力を入れる

キャリア支援とは、社員の能力を向上させながら希望の働き方を実現できるようサポートすることだ。年次に応じて担当業務の幅を広げたり、プロジェクトリーダーに抜擢したり、ジョブローテーションを取り入れたりする方法が考えられる。

面談を通じて上司が一緒にキャリアプランを立てたり、望ましい働き方について確認したりするとよい。

方法4.管理職向けの研修を実施する

離職率を防ぐには、管理職のマネジメント能力を高めることも重要だ。新入社員研修だけでなく管理職向けの研修も積極的に実施したい。

マネジメントの専門家や人材コンサルティング会社に依頼するなど、外部の知恵を借りるのも効果的だ。経営者が直接研修する方法もある。

方法5.柔軟な配置転換の仕組みを整える

ある業務で力を発揮できなくても、ほかの業務で力を発揮できることがある。適材適所の配置転換ができる仕組みを整えておきたい。配置転換で部署間の垣根を取り払うことで組織も活性化しやすくなる。

また、人間関係の悪化が離職理由になることも少なくない。配置転換に柔軟性を持たせれば、人間関係を理由とした離職も減るだろう。

方法6.快適な職場環境を用意する

職場環境は社員の満足度に影響する項目だ。設備投資をする以外にも、職場環境を整える方法は意外とたくさんある。

たとえば、コミュニケーションの取りやすいデスク配置を検討したり、集中したいときにミーティングルームを使えるようにしたりする方法がある。業種にもよるが、好きなデスクを選んで仕事するフリーアドレスを導入するのもよいだろう。

基本的だが、空調管理や明るさにも気を配りたい。空気清浄機や観葉植物を置くのも検討したいところだ。

方法7.社員同士で親睦を深める機会を作る

社員同士の関係性も離職率に大きく影響する項目だ。社員が親睦を深める機会を作るようにしたい。

すでに新入社員の歓迎会や忘年会を実施している場合は、「本当に親睦を深める機会になっているか?」という視点で従来のやり方を見直す。飲み会だけではなく、屋外でのBBQやホテルでの立食なども検討できる。

気軽にコミュニケーションを交わせるチャットツールや、感謝の気持ちを伝えられるサンキューカードを導入する方法もある。

人材確保に向けた取組事例

人材確保に向けて採用戦略を改善した事例について厚生労働省の資料から紹介する。

【A運送会社の女性採用プロジェクト】
人手不足から、「ドライバーは男性」という採用方針を見直し、女性ドライバーを採用することにした。コンサルタントの助言を踏まえ、次のような取り組みを実施したところ、大きな反響があったという。

・独自作成の会社紹介ビデオの上映
・トラックに乗ることができる乗務体験会
・交通安全教室の開催
・子供向けのお絵かき大会
・フードコートの開催

引用:人材確保に「効く」事例集(厚生労働省)

人材確保は経営者にとって永遠のテーマ

人材は一朝一夕で育たず、採用の成果が見えにくい。人材確保は経営者にとって悩ましい問題であり、永遠のテーマといえよう。長期的な視点で地道に人材確保の取り組みを継続していくことが大切だ。

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文:木崎涼

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