時の人イーロン・マスク氏、テスラとツイッターの時価総額は?
(画像=KoukichiTakahashi/stock.adobe.com)

米国企業テスラの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスクがツイッター社に買収を提案した。ポイズンピルなど抵抗の動きをみせたツイッター側も4月25日には買収提案を受け入れることを決めた。気になるツイッターとテスラの時価総額を確認する。

ツイッターの時価総額

時価総額とは株価に総株式発行数を乗じた数値で、市場におけるその企業の規模を示す指標だ。企業の価値を評価するものとして最も一般的に使われている。時価総額が大きい場合、当該企業の価値が高いと判断できるだろう。ここでいう企業の価値とは「現在の業績の良し悪し」だけでなく、「将来の成長に対する期待」も含まれる。

では、テスラを率いるマスク氏が買収を仕掛けたツイッターの時価総額はどうだろうか。2022年4月22日時点で発行済株式数は約7億6,358万株、時価総額は約374億米ドル(1米ドル127円換算で約4兆7,498億円、以下同レート)である。2022年4月4日にマスク氏がツイッターの株式9.2%を取得し筆頭株主になったことが明らかになって以後、ツイッター株の株価は大きく上昇した。

4日時点の株価は、米国株式市場で1日終値と比べて一時30%程度も上昇し日中上昇率としては過去4年余りで最大を記録した。これは、スペースX、テスラと次々新事業を立ち上げ天才起業家といわれるマスク氏がツイッターの筆頭株主になることで、ソーシャルメディア業界に改革を起こす可能性への期待が膨らんだことが理由だろう。

同月14日にはツイッターの買収提案が明らかとなり、ツイッター側は本格的な経営改革に乗り出す構えを見せた。ここで時価総額に話を戻そう。時価総額は先述した通り株価と発行済株式数を乗じた数値だ。時価総額分を支払うことでその会社の株式をすべて取得することができる。つまり丸ごと買い取るために必要な金額といえるだろう。

2022年4月22日時点の時価総額は先述した通り。マスク氏は、残りのツイッター株を1日の終値に約38%上乗せした水準である1株あたり54.2米ドル(約6,883円)で取得する方針。米メディアによれば買収が実現した場合の企業価値は、430億米ドル(約5兆4,610億円)強に達するとのことで現在の時価総額を上回る。

テスラの時価総額

一方でこのところのテスラの時価総額は動きが激しい。発行済株式数は約10億3,400万株で2022年4月22日時点の時価総額は約1兆390億米ドル。テスラは、2021年10~12月期決算で売上高が前年同期比65%増、純利益は8.6倍と高い伸びを示したが、2022年1月27日の米市場で株価が約12%下落。1日で時価総額1,090億米ドル(約12兆6,000億円)が吹き飛んでしまった。

これは、製品ロードマップの更新に「サイバートラック」(ピックアップトラック)や「セミ」(電動トラック)を入れていたにもかかわらず、ブルームバーグとの電話会談でマスク氏が年内に新型モデルを市場に投入しないことを表明したことが嫌気されたためだ。将来の新製品情報のあいまいさなど、成長性に疑問を感じる投資家やアナリストは多く、その後も株価は上昇下降を繰り返している状況だ。

テスラのマスクがツイッター買収を提案

2022年4月14日、イーロン・マスクがツイッターの買収提案を明らかにしたことはすでに述べた。イーロン・マスクは、かねてからツイッターを利用してテスラの非公開化計画を表明するなど証券市場に関わる発言を繰り返してきた。一方、ツイッターはトランプ前米大統領や保守系メディア「バビロン・ビー」のアカウントを永久凍結するなど投稿管理を強化している。

イーロン・マスクが買収を目指す理由は、まさに「言論の自由」だ。「あらゆる人たちを受け入れる広場であるべき」と主張し、投稿管理の改革の必要性を強調する。市場では、言論の自由を実現するためのイーロン・マスクの動向に注目が集まっている。イーロン・マスクは、1月から徐々にツイッター株を買い集め、同年4月4日には筆頭株主との報道も聞かれた。

しかし同社の取締役就任の要請は辞退。経営参画ではなく、買収提案に切り替えた。買収するためには、時価総額相当の資金が必要となるがイーロン・マスクはそれを上回る430億米ドルでの買収を提案。資金調達を懸念する声も多いが同年4月21日なって、モルガン・スタンレーなど金融機関からの約255億米ドル(約3兆2,385億円)相当のデットファイナンスを確保した。

またエクイティファイナンスを通じて210億米ドル(約2兆6,670億円)相当を提供すると約束したことが米当局への届出書で明らかになった。

ツイッターは買収防衛策を導入

マスク氏の買収提案にツイッターは反逆に出た。「ポイズンピル(毒薬条項)」という手法の買収防衛策を発表した。一般の株主は、実質的に時価の半額で株式を追加購入できるようにして取得を促すというものだ。

既存株主が株式取得を進めることで敵対的な買収者による取得を阻止するのが目的だ。有効期限は1年後の2023年4月14日としている。

ツイッター、イーロン・マスクの買収提案受け入れへ

4月25日、事態は一気に動いた。ツイッターは取締役会でイーロン・マスクの買収提案を受け入れることを決めた。買収総額は440億ドル。日本円にして5兆6,000億円に上る。買収は2022年中に完了の見込みだ。

市場の注目が集まっていたイーロン・マスクとツイッターをめぐる買収問題は早期の決着となった。
言論の自由を説くイーロン・マスク、ツイッターは今後どう変わっていくのだろうか。巨大企業の買収問題は終わりではなく、始まりに過ぎないのかもしれない。

續 恵美子
著:續 恵美子
ファイナンシャルプランナー(CFP®)。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。こうした経験をもとに、生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などを行う。
無料会員登録はこちら