2020年代の実用化を目指して、技術開発や実証事業が進むCCUS
~国内における2030年度のCCUS技術によるCO2回収量を300万t-CO2/年と予測~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のCCUS市場を調査し、技術動向や有力プレイヤーの動向、将来展望について明らかにした。ここでは、国内のCCUS技術によるCO2回収量予測を公表する。
国内のCCUS技術によるCO2回収量の推移・予測
1.市場概況
地球温暖化防止のために締結されたパリ協定は2016年に発効し、工業化以前と比較して世界の平均気温上昇を2℃未満、可能であれば1.5℃未満に抑えることを目指している。日本においても、2050年カーボンニュートラル宣言によりCO2に代表される温室効果ガスの排出量削減に向けた動きが加速している。
一方では、再生可能エネルギーへの急激な転換はエネルギー安定供給の観点から困難であり、暫くは調整電源として稼働が予想される火力発電所からのCO2排出量の削減が課題となる。他にも製鉄所やセメント工場、ごみ焼却施設などCO2の排出量が多い産業分野においても同様の課題を抱えている。この課題への対策として、技術開発や実証事業が進んでいるのがCCUS(回収・有効利用・貯留=Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)技術である。
CCUS技術の核となるCO2分離・回収技術の主な方法としては化学吸収法や物理吸収法、膜分離法などが挙げられ、日本国内において、2020年度にCCUS技術により回収したCO2の量を45万t-CO2/年と推計した。CO2を分離・回収するための省エネルギー及び低コストな技術確立が必要であり、国内企業各社が2020年代の実用化を目指して実証事業を進めている。
また、分離・回収したCO2の行先きとしては、地中への貯留や資源としての活用などが候補となる。例えばCO2貯留は国内でも複数の実証事業が行われている。また、CO2有効利用技術についてはポリカーボネートなどの化学品合成での原料活用などで、一部既に商用化されている。
2.注目トピック
DACなどネガティブエミッション技術動向
カーボンニュートラルの実現に向けて、大気中に排出・蓄積されたCO2を除去するDAC(Direct Air Capture)のようなネガティブエミッション技術の研究開発が行われている。
大気中のCO2濃度は400ppm程度であり、通常の石炭等の燃焼後排ガス中のCO2濃度と比較すると2~3桁低く、大気中のCO2分離回収にかかるコストは極めて高価になると言われている。
そのため、DACを実用化するためには、より高性能なCO2分離材料の開発に加え、大量の空気を効率的に吸脱着可能なプロセスの構築が必要となる。部材開発の動きとして、例えば固体吸収材は室内などの閉鎖空間だけでなく大気中にあるような低濃度のCO2の分離回収への適用も検討されている。
3.将来展望
日本国内では、2020年代にCCUS技術の実証事業や技術開発が進むとともに、徐々に実用化プロジェクトが増えていく見込みである。CCUS技術による国内のCO2回収量は2021年度の50万t-CO2/年から、2030年度には300万t-CO2/年、2050年度には3,850万t-CO2/年にまで拡大すると予測する。
世界でCCS(回収・貯留=Carbon dioxide Capture and Storage)プロジェクトを先導して実施しているアメリカなどと比較すると、日本は陸地における貯留のポテンシャルが低く、CO2を貯留する場合はその殆どが海域になると考えられる。そのため、日本国内においてCCUS技術を普及させていくには、回収したCO2の使用先としてカーボンリサイクル技術の発展が欠かせない。日本においてCCUS技術が本格的に発展するのは、一部のカーボンリサイクル技術が普及しだす2030年度以降となると推測する。
今後、カーボンリサイクル技術については経済産業省による「カーボンリサイクル技術ロードマップ」の道筋を達成すべく、低コスト化・技術確立が促進されていく見通しである。
調査要綱
1.調査期間: 2021年12月~2022年2月 2.調査対象: CCUS技術の研究開発および技術提供を行なう事業者(エンジニアリングメーカー、機械メーカー、発電事業者など)、地方自治体、ファンドなど 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)ならびに文献調査併用 |
<CCUSとは> CCUS(回収・有効利用・貯留=Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)技術とは、火力発電所や工場などからの排気ガスに含まれるCO2を分離・回収し、資源として作物生産や化学製品の製造に有効利用する、または地下の安定した地層の中に貯留する技術である。 |
<市場に含まれる商品・サービス> CO2分離・回収技術、CO2有効利用技術、CO2貯留技術 |
出典資料について
資料名 | 2022年版 CCUS(CO2回収・利用・貯留)技術の動向&将来展望 |
発刊日 | 2022年02月28日 |
体裁 | A4 134ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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