2022年4月時点で、メジャーリーグでは東北出身の4人の選手が活躍している。その中の菊池雄星と大谷翔平の2人は、ともに岩手県出身だ。また2022年4月10日に28年ぶりの完全試合を達成した佐々木朗希も岩手県で生まれ育っている。「なぜ岩手県から野球のスター選手が次々と生まれるのか?」と感じる人もいるのではないだろうか。
そこで今回は、野球界のヒーローを輩出している岩手県について数字から探っていく。
早起きランキング1位
総務省統計局の「2016年度社会生活基本調査」によると、岩手県は全国「早起きランキング」で1位となっている。全国平均の起床時間は6時32分で、岩手県は6時17分だった。早起きをする理由としては、以下のような要因が推測される。
- 日の出が早い地理的条件
- 農業などの1次産業が多い県
- 車での通勤者が道路混雑前に家を出るなど
運動選手について言えば、岩手県の広さが早起きと関連している説もある。北海道に次ぐ面積、四国4県に迫る広さを持つ同県では、遠征するための移動距離が長く県内の試合に出かけるだけでもかなりの時間が必要となる。必然的にスポーツをする人は、子ども時代から早起き習慣が身についているのかもしれない。
夜更かしランキング45位
早起きの裏返しとも言えるが「夜更かしランキング」では、47都道府県中45位。平均が23時12分という中で、岩手県は30分近く早い22時43分となっている。上位を占める大都市圏と比較すると約1時間も早い就寝となっており健全さが際立つ。
地方では閉店時間の早い店が多く、岩手県の県庁所在地である盛岡市でさえ夜間営業の店舗は限られている。
交通機関の主軸となるバス路線も最終便が22時台であるため、自然と帰宅の足が早まるのだろう。早い時間に帰宅して、明日に備えて早めに床に就く……ごく当たり前の日常が傑物を生みだす生活の土台となっているのかもしれない。
睡眠時間ランキング4位
岩手県の睡眠時間の長さは7時間54分で全国4位だ。1位の秋田県との差は8分程度あるが、全国平均よりも14分ほど長い。もっとも、数値だけを見ると早寝早起きをしているだけで睡眠時間が極端に長いというわけではない。
しかし、このわずかな違いの積み重ね、健康的な睡眠サイクルの構築がすべてのパフォーマンスにつながっている可能性もあり、こうした岩手県の生活スタイルが優秀なスポーツ人材の育成を支えているのかもしれない。
なが~く働くランキング3位
また、「なが~く働くランキング」も興味深いデータだ。全国平均時間の5時間55分に対して岩手県は6時間20分で3位。岩手県の県民性でよく言われるのが「典型的東北人であり、頑固だが妥協しないコツコツとした仕事ぶり」だ。よく話題に取りあげられる大谷選手の行動からもこうした気質が垣間見られる。
日ハム時代には、先輩たちの誘いに応じず自主トレを優先。渡米した後も、休日も一人休まずトレーニングに励んでいる様子がたびたび報じられている。日本でも大きな話題となった2021年シーズン後、年末に日本に戻っても浮足立つ姿は全く見られず、滞在場所とトレーニング場の往復に終始したと伝わっている。
早寝早起き、生活リズムを崩さず、よく働く……生活調査の数字からは、岩手県民の理想的な生活スタイルが浮かびあがる。
地域満足度変化ランキング1位
基本的な生活スタイル調査とは別に一般社団法人ストレスオフ・アライアンスが実施している「地域満足度」を調べたデータがある。同法人は2020年9月に、コロナ禍における「地域満足度」の順位の変化(コロナ禍前後での変化の大きさ)を比較した都道府県ランキングを発表した。
この調査では41位から9位にジャンプアップした岩手県が1位となっており、前回調査から満足度が大幅に上昇したことが注目されている。
この背景にあるのが、地域満足度の高さと自粛期間中の満足度の関連性だ。コロナ禍にあって地域満足度が高い人には「自粛期間中のリラックス方法が豊富である」という傾向が見られる。自宅やその周辺での過ごし方が満足度に大きく影響しているのだ。
都道府県別の人口密度の低さで、岩手県は北海道に次ぐ2位だ。今回はコロナ禍という非常時ではあるが、岩手県民は豊かな自然や土地の広さ、きれいな水や空気といった、普段意識していなかった恵まれた環境を再確認できたのではないだろうか。また、これらも優秀なスポーツ人材を育てる岩手県の強力なポテンシャルであると考えられるだろう。
岩手に行ってみればわかる
岩手県から優れたアスリートが生みだされる理由は一つではない。無数にある要素が複雑にからみ合い理想的な条件が整った結果と言えるだろう。大谷翔平は、佐々木朗希が注目された際、なぜ岩手から傑出した野球選手が生まれるのかと聞かれ、「(岩手に)行ってみればわかります」と答えたそうだ。
ここまで紹介した岩手県に関する様々な数字から、その言葉に通じるものを少しは感じられたのではないだろうか。