日本の仮想通貨取引所「Coincheck」(コインチェック)がアメリカ市場に上場する計画が明らかになった。2022年内に上場する見通しだが、過去にアメリカで上場した仮想通貨取引所は、思うように株価が上昇しておらず、コインチェックの行く末にも注目が集まる。
コインチェックの上場計画をマネックスグループが発表
コインチェックの上場計画を公表したのは、コインチェックを傘下に有するマネックスグループだ。2022年4月5日に発表したプレスリリースによると、今後設立予定のコインチェックの持株会社を、米ナスダック市場に上場させることを計画しているという。
ナスダック市場における上場は、「SPAC」(特別買収目的会社)との合併によって行う予定だ。このような上場の仕組みを「SPAC上場」と呼び、すでに株式市場に上場しているSPACと合併することで、通常のIPO(新規株式公開)よりもスピーディーに上場することができる。
報道発表によれば、コインチェックの持株会社が合併する予定なのは「Thunder Bridge Capital Partners Ⅳ, Inc.」だという。ちなみに、このSPACはすでに上場しており、現在の株価は9ドル台後半で推移している。
Thunder Bridge Capital Partners Ⅳ, Inc.の現在のティッカーシンボル(※日本における証券コードのこと)は「THCP」だが、コインチェックの持株会社と合併後は、ティッカーシンボルが「CCG」に変わる予定だ。SPAC上場時期は「2022 年下半期中」としている。
コインチェックは業績好調、売上高・利益ともに増加
コインチェックの日本における存在感は抜群だ。取り扱っている仮想通貨の数も国内最大級である。
マネックスグループが2022年1月に発表した決算によれば、主にコインチェックの事業で構成される「クリプトアセット事業セグメント」の営業収益(=売上高)は、2021年4~12月期は255億200万円で、前年同期の65億9,300万円から約3.8倍になっている。
セグメント損益では、2021年4~12月期は149億4,200万円のプラスで、前年同期の32億5,100万円から約4.5倍となっている。なお、2021年末における口座数(※本人確認済みの口座)は153万口座で、2021年4~12月にかけて新たに33万口座が増えたという。
このように業績が好調なコインチェックがアメリカ市場で上場することから、「株価の上昇は確実」と感じる人もいるかもしれないが、実際どうなるのだろうか。
アメリカで過去に上場したCoinbaseの株価の推移
過去に、アメリカ市場に上場した仮想通貨取引所の株価がどう推移しているかは、コインチェックの上場後の値動きを占う上で参考材料になるだろう。
2021年4月、アメリカで最大規模の仮想通貨取引所であるCoinbase(ティッカーシンボル:COIN)が上場した。上場後のCoinbaseの値動きは以下のとおりである。株価は上場後に下落し、2021年末にかけて回復基調に入ったが、その後は下落が止まらない状況だ。
上場後の初値は381.00ドルだったが、2022年4月13日時点の株価は、初値からは59.3%安の154.79ドルとなっている。さらに、Coinbaseの株価の動きを、アメリカを代表する株式指数S&P500と比較すると、以下の通りだ。
黄線がS&P500の値動き、青線がCoinbaseの値動きである。S&P500の値動きは「米国株投資の平均点」に例えられる。Coinbaseはこの平均点を大きく下回る値動きをしている状況だ。
SPAC上場を選んだことがどう影響するか
コインチェックがSPAC上場で米国市場デビューすることも気がかりだ。SPAC上場した企業の中には、この1年で株価が大きく下落した銘柄が多い。もちろん、SPAC上場した中にも優良企業は存在するが、SPAC上場自体にネガティブなイメージを持つ株式投資家も少なくない。
すでに上場しているCoinbaseの株価下落、そしてSPAC上場へのネガティブなイメージなど、悪材料をはねのけて、コインチェックは上場後に株価を上昇させることができるのか、その動向に注目していきたい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)