アジアの投資ファンドがビットフライヤーを買収? 業界激動でビッグニュースが相次ぐ
(画像=KoukichiTakahashi/stock.adobe.com)

日本の仮想通貨業界では最近、ビッグニュースが多い。コインチェック(Coincheck)がアメリカ市場に上場するというニュースもその1つだが、コインチェックのライバルとも言えるビットフライヤーを投資ファンドが買収する報道も、業界関係者を驚かせた。

日本初の仮想通貨取引所として誕生したビットフライヤー

ビットフライヤー(bitFlyer)は2014年4月、日本初の仮想通貨取引所としてスタートし、現在、国内最大規模を誇る。ビットフライヤー創業者の加納裕三氏は、日本における仮想通貨の普及に尽力した人物の一人だ。日本の仮想通貨の歴史はビットフライヤーなしには語れない。

そんなビットフライヤーに関して、日本経済新聞が2022年4月2日、「暗号資産のビットフライヤーHD、投資ファンドが買収へ」という記事を掲載した(ビットフライヤーHD=ビットフライヤーホールディングスは、ビットフライヤーの運営企業の持株会社)。

報道によれば、シンガポールと日本に拠点を持つ投資ファンド「ACAグループ」がビットフライヤーホールディングスを買収することについて、大筋合意に至ったという。日経新聞の記事では「創業者の加納裕三氏を除く株主連合と株式の過半数の取得で大筋合意した」とされている。

ちなみにこの報道を受け、ビットフライヤーホールディングスは翌日4月3日に、「一部報道について」というプレスリリースを出し、以下のように説明した。

「昨日、一部の報道において当社の買収検討に関する内容がありましたが、当社が発表したものではありません。また、買収に関しては、現時点で決定された事実はありません。今後、公表すべき事実が決定された場合には速やかに公表いたします」

売却に至る理由は?

では、ビットフライヤーの売却に至る理由は何なのか。現時点でその背景について、はっきりとしたことは判明していないが、ビットフライヤーはこの3年で社長が4回交代しており、経営に何らかの問題が生じていた可能性はある。

また近年、仮想通貨取引所を運営するコストが上昇していることも、今回の売却に関連しているかもしれない。

仮想通貨取引所の運営会社は法令遵守(コンプライアンス)に関する費用がかさむようになり、収益性が以前より低くなっている。このようなことを背景に、すでに取引所ビジネスから撤退する企業も相次いでいる。

仮想通貨業界における注目ニュースが相次ぐ

冒頭でも触れたが、最近、仮想通貨業界において注目のニュースがいくつも飛び出している。コインチェックのアメリカ市場での上場は、ビットフライヤーの売却話と並ぶビッグニュースと言える。

コインチェックは2022年下期にも、米ナスダック市場で上場する見込みだ。アメリカ市場で日本の仮想通貨取引所が上場するのは過去に例がなく、このニュースは世間の耳目を集めた。

コインチェックはSPACという「特別買収目的会社」と合併することで、ナスダック市場に上場する見通しだ。アメリカでは過去に米国の仮想通貨取引所「Coinbase」が上場しているが、株価低迷が続いており、コインチェックの上場後の株価の推移は注目を集めそうだ。

ディーカレットの全株式売却は業界再編の象徴

2022年2月、日本における仮想通貨取引所のひとつであるディーカレットについて、運営会社のすべての株式が香港企業アンバー・グループの日本法人に売却されたと報じられた。

ディーカレットは仮想通貨取引所として現在も存続しているが、元の運営会社は全株式を手放したことで、仮想通貨事業から撤退したという。日本国内で仮想通貨取引所同士のシェア争いがさらに過熱する中、ディーカレットの売却は業界再編を象徴するものとなった。

なおアンバー・グループは、グローバルに仮想通貨関連事業を展開している企業で、ディーカレットの買収に伴い、日本市場に参入することになる。

アンバー・グループの日本ディレクターである李維克氏は「今後の日本の暗号資産業界におけるさらなる発展への貢献と、規制に準拠しつつ、日本の皆様により素晴らしいサービスを提供できることを非常に楽しみにしております」とコメントしている。

仮想通貨業界の動向はいかに?

仮想通貨で資産運用をする人が増え、それに比例するように仮想通貨取引所に関するニュースも以前より多く報じられるようになった。2022年はこの後どのようなニュースが飛び出すのだろうか。仮想通貨に投資している人は、業界動向をしっかりとウォッチしておきたいところだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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