三菱UFJ銀行が市場規模拡大を続ける「NFT」へ参入 みずほや三井住友はどうする?
(画像=JHVEPhoto/stock.adobe.com)

日本のメガバンクの一角を成す三菱UFJ銀行が、最近話題の「NFT」(非代替性トークン)に参入することを発表した。日本の銀行としては初のことで、NFTの発行支援や取引市場の運営などを検討するようだ。今後もこのような動きは相次ぐのか。

三菱UFJ銀行がNFTへの参入を発表

三菱UFJ銀行がNFTへの参入を発表したのは、2022年3月3日のこと。「Animoca Brands株式会社との協業について」というプレスリリースを出し、Animoca Brands(アニモカブランズ)とNFT関連事業で協業することに基本合意したと明らかにした。

三菱UFJ銀行が協業するAnimoca Brands株式会社は、香港企業の日本法人だ。この香港企業は2014年に創業し、NFT関連ビジネスのほか、仮想通貨の基幹技術である「ブロックチェーン」を使用したゲームや、米Meta(旧Facebook)が参入したことでも知られる「メタバース」関連の事業を手掛けている。

プレスリリースでは、三菱UFJ銀行が有する「顧客ネットワークや安心・安全な取引に関する知見」と、Animoca BrandsのNFTに関するノウハウを融合し、「NFTの発行・出品等の支援から、購入・保管に向けたサービス提供」を検討するとしている。

NFT市場は新興市場であるだけに、ユーザーが投資詐欺などに巻きこまれるリスクも少なくない。三菱UFJはこうした状況下において、利用者が安心できるサービスを提供できれば、十分に勝機があると判断したようだ。

そもそもNFTとは? 市場規模が拡大している理由は?

今、三菱UFJ銀行のようにNFT分野への参入を発表・検討する企業が増えている。NFTの市場規模は、まだ黎明期ながら急速に拡大しており、この時期に参入することで多大な先行者利益を得ることができる可能性があるからだろう。

しかしそもそも、なぜ今NFTの市場が拡大しているのだろうか。その理由は主に2点ある。NFTという技術的イノベーションに対する注目度が高いことと、NFT化された作品の価格が高騰していることだ。

NFTの技術的イノベーションとは?

NFTは「Non-Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)」の頭文字を取ったもので、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれる。簡単に説明すると、あるデジタルデータの著作者と保有者の権利を、ブロックチェーンを使って証明する技術だ。

この技術により、仮にそのデジタルデータを第三者が複製して保有しても、そのデータはニセモノだと判別できるようになる。つまり、元のデジタルデータの希少性を確保し続けることができ、これが革新的な技術だという評価を受けている。

NFTはもともと、ネットゲームの中でアイテムが唯一のものであると証明するための技術として誕生した。しかしその後、アート作品などをNFT化して唯一性を持たせる流れが生まれ、NFTの取引所も誕生し、NFT化されたアート作品が広く売買されるようになった。

NFT化された作品の価格が高騰

NFTの技術自体、注目に値するものだが、現在、NFTの市場が急速に拡大しているのは、NFT化されたアート作品の価格が高騰する例が相次ぎ、NFTを購入する投資家が増えているからだ。

NFTを購入する投資家が増える一方で、アート作品をNFT化して販売する人も増え、すでにNFTの販売に乗り出している著名人や大手企業・団体も少なくない。つまり、NFTの需要と供給が両方増えており、市場が拡大しているのだ。

市場調査会社Emergen Researchが発表したレポートによれば、2020年のNFT市場は3億4,000万ドル規模で、2030年にはおよそ1,000倍の3,500億ドル規模にまで拡大すると見ている。

銀行とNFTのビジネスの親和性は低くない

このようなNFTの有望性を考えると、三菱UFJ銀行のようにNFTに参入する邦銀が今後相次ぐことは十分に考えられる。

仮想通貨が登場した当初、金融業界はブロックチェーン市場を静観していた。しかしその後、日本の大手銀行もブロックチェーン技術の革新性に気付き、相次いで市場参入を発表した。これと似たような流れがNFTに関しても起きる可能性がある。

銀行とNFTのビジネスの親和性も低くない。三菱UFJ銀行が考えているように、銀行側がNFT作品の売買の安全性を保証してくれれば、投資家は安心してそのNFT作品を取引できる。

こうした点に目をつけ、ほかの日本のメガバンク、すなわち三井住友銀行やみずほ銀行がどう動くかが、今後の注目点であると言えそうだ。今、NFTに参入しなければ、将来の巨額の収益機会を逃すことになるかもしれない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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