マクドナルドの「コロナ禍一人勝ち」がついに終わる?
(画像=wolterke/stock.adobe.com)

コロナ禍での勝ち組といえば、マクドナルドだ。「巣ごもり」で増えた宅配需要をとらえ、店舗での食事を避けたい人のテイクアウト需要には「モバイルオーダー」の仕組みの充実化などで対応した。しかし今、この1人勝ちの状況に陰りが見えてきている。なぜか。

コロナ禍でも売上を伸ばしたマクドナルド

新型コロナウイルスは、多くの飲食企業の業績にダメージを与えた。感染防止に向けた国や自治体からの時短営業の要請や外出を控える消費者が増えたことから、売上を大幅に落とした企業が多かった。廃業を決めた飲食店も少なくない。

しかしマクドナルドに関しては、コロナ禍においても業績を落とさなかったことで知られている。以下はマクドナルドの2020年と2021年の月次の売上高の推移だ。

日本で最初の緊急事態宣言が発令されたのが2020年4月だが、その年の6月こそ前年同月比減となっているものの、そのほかの月は前年同月比で売上が増加している。

<マクドナルドの2020〜2021年における売上高の月次動向(前年同月比)>

マクドナルドの「コロナ禍一人勝ち」がついに終わる?
出典:日本マクドナルドホールディングスIRページ(※売上高は「全店売上高」)

マクドナルドが「勝ち組」になれた理由

マクドナルドがコロナ禍でも売上高を伸ばせたのは、デリバリー需要とテイクアウト需要をしっかりと受け止めることができたからだ。

デリバリー需要に関しては、「マックデリバリー」や「ウーバーイーツ」の対応店舗を大幅に増やして対応した。テイクアウト需要に関しては、アプリをインストールしなくても「モバイルオーダー」をブラウザから利用可能にし、スタッフが駐車中の車に商品を届ける「パーク&ゴー」も開始した。

ちなみに、以下が2019年12月期から2021年12月期にかけての同社の決算概要だ。この期間、売上高を伸ばし続けているだけではなく、本業の儲けを示す「営業利益」も増え続けている。2020年12月期は前期比11.7%増、2021年12月期は前期比10.3%増だ。

<マクドナルドの2019年12月期〜2021年12月期における業績の推移>

マクドナルドの「コロナ禍一人勝ち」がついに終わる?
出典:日本マクドナルドホールディングス決算短信

今期の営業利益の伸びは1.4%増にとどまる見通し

マクドナルドは、コロナ禍においても売上を伸ばし、営業利益の2桁%増を果たしてきたが、冒頭触れた通り、1人勝ちの状況に陰りが見え始めている。同社がこのほど発表した2022年12月期の連結業績の見通しによれば、今期の営業利益の伸びは1.4%増にとどまる見込みだ。

<マクドナルドの2022年12月期の連結業績見通し>

マクドナルドの「コロナ禍一人勝ち」がついに終わる?
出典:日本マクドナルドホールディングス・プレスリリース

日本マクドナルドホールディングスの発表の中では、営業利益を押し下げる要因については触れられていないが、報道などによれば、同社は原材料費の高騰や先行投資などが押し下げ要因だと説明しているという。

ほかのファストフードチェーンがマクドナルドの宅配戦略やテイクアウト戦略を真似しはじめたことも業績にマイナスの影響を与えているかもしれない。

営業利益の伸びの鈍化はあくまで一時的なこと?

ただし、短期的にマクドナルドの営業利益の伸びが鈍化しても、それはあくまで一時的なことかもしれない。同社が営業利益を押し下げる要因と説明している先行投資は、将来の業績向上のために必要なことだからだ。

さらにマクドナルドは成長に向け、2022年度から2024年度を対象とする中期経営計画を発表しており、「ブランド」「メニュー・バリュー」「店舗・デジタル・ピープル」への投資を加速するという。

これらの先行投資が実を結べば、営業利益がまた2桁%増に戻るはずだ。今期のマクドナルドの業績にももちろん注目だが、来期、来々期以降の決算で先行投資がしっかりと利益に結びついているかにも、関心が集まりそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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