コロナ影響によりJR上場4社の平均年収が激減?!
(画像=kawamura_lucy/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスの感染拡大はさまざまな企業の業績に大ダメージを与えた。JR各社も例外ではない。人々が外出を自粛せざるを得なかったことで、移動需要が落ち込んだからだ。そして業績の悪化で、JRの従業員の年収も激減?

上場しているJR4社の従業員の平均年収を比較

日本で旅客の移動を担っているJRグループの企業は6社ある。「JR北海道」「JR東日本」「JR東海」「JR西日本」「JR四国」「JR九州」だ。

この6社の従業員の平均年収の推移を比較したいが、残念ながら上場していない企業の平均年収について、正確な金額が分からないため、上場している「JR東日本」「JR東海」「JR西日本」「JR九州」の4社の従業員の平均年収について、過去5年間における推移を調べていく。

上場4社すべてで従業員の平均年収が減少する結果に

以下が上場しているJR4社の従業員の平均年収の推移だ。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を本格的に受け始めたのは、2021年3月期(2020年4月~2021年3月期)からで、その前の会計年度である2020年3月期と比べると、従業員の平均年収はどのように推移しているか、確認してみてほしい。

コロナ影響によりJR上場4社の平均年収が激減?!

上記の表から分かるように、上場している4社全てで、2020年3月期から2021年3月期にかけて従業員の平均年収が減少している。減少率で示すと以下の通りだ。最も落ち込みが激しいのがJR九州で8.6%減、続いてJR西日本が7.6%減と続く。

コロナ影響によりJR上場4社の平均年収が激減?!

軒並み業績が赤字に転落、各社が賞与減額に動く

このように、従業員の平均年収が下落するのも無理はない。JR上場4社、いずれも2020年3月期から2021年3月期にかけて最終損益が黒字から赤字に転落しているからだ。

具体的には、JR東日本は1,984億円の黒字から5,779億円の赤字に、JR東海は3,978億円の黒字から2,015億円の赤字に、JR西日本は893億円の黒字から2,332億円の赤字に、JR九州は314億円の黒字から189億円の赤字に転落している。

このような業績の悪化に伴い、JR各社は賞与の減額に動いた。例えばJR東日本の場合、以下のように減額している。

コロナ影響によりJR上場4社の平均年収が激減?!

2020年の夏の賞与から2021年の冬の賞与にかけ、全てで前期の同時期の賞与額と比べ減額する結果となっている。ちなみに、2020年の夏・冬の合計は「4.6ヵ月分+5,000円」、2021年の夏・冬の合計は「4.0ヵ月分」だ。

2021年の夏・冬の賞与が2022年3月期の従業員の平均年収に影響を及ぼすことを考えると、2022年3月期の有価証券報告書はまだ公表されていないが、恐らく2021年3月期に引き続き、平均年収は2期連続で落ち込む結果となりそうだ。

コロナ禍さえ完全収束すれば……

JR各駅のホームで働く従業員は、多くの人が行き交う中で感染リスクと対峙しながら業務にあたっている。それなのに平均年収が下がったというのは、何ともつらい状況だ。

しかし、この状況は新型コロナウイルスが完全に収束すれば、改善するはずだ。コロナ禍で抑制されていた観光需要などが盛り返す「リベンジ消費」が本格化すると、JRの利用者は増え、業績が回復する。そうすれば賞与の金額も元の水準に戻っていくはずだ。

最近では「まん延防止等重点措置」が全面解除となり、今後こそ本当に新型コロナウイルスはいよいよ収束に向かうのでは、と期待している人も多い。

再び新たな変異株が登場し、また感染が再流行する可能性は常につきまとうが、JRで働く従業員も同じ気持ちなのではないだろうか。いまはただ、コロナ禍の完全収束を祈るばかりだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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