損益計算書とは? デキる人は知っている”P/L”の中身と作り方
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中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
税理士・税理士事務所所長。中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

損益計算書は、会社の「稼ぐ力」を表す財務諸表の一つで、どの会社でも作成されている。損益計算書に記載されている項目は定型であるため、自社と他社の業績を損益計算書で比較できるなど、役立つシーンは多い。この記事では、損益計算書の仕組みや作成方法、貸借対照表との関係、損益計算書の数字の見方などについて解説する。

目次

  1. 損益計算書とは
    1. 損益計算書はどうやって作られる?
    2. 損益計算書と貸借対照表の関係性
  2. 損益計算書は作成目的4つ
    1. 1.自社の業績を把握するため
    2. 2.他社と自社を比較するため
    3. 3.融資先や取引先に自社の信頼性を示すため
    4. 4.投資家保護のため
  3. 損益計算書の見方
    1. 売上総利益とは
    2. 営業利益とは
    3. 経常利益とは
    4. 税引前当期純利益とは
    5. 当期純利益とは
  4. 損益計算書の報告式と勘定式の違い
  5. 損益計算書から見る利益率
    1. 損益計算書に記載される利益率の種類
    2. 損益計算書の平均的な各利益率は何%?
  6. 損益計算書は自社の経営の健全性や安全性の判断にも必要
  7. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

損益計算書とは

「損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)」とは、会計期間ごとの会社の損益を表す書類だ。 貸借対照表等と同様に、財務諸表や決算書の一つだ。 法律上の扱いとしては、会社法によって全ての会社に作成が義務付けられている「計算書類」の一つである。

大会社は、決算後の定時株主総会後、「貸借対照表(B/S: Balance sheet)」とともに公告しなければならない。上場会社は、金融商品取引法によって有価証券報告書への添付による提出が義務付けられている。税法では、法人税の申告書や所得税の青色申告書への添付が求められている。

損益計算書はどうやって作られる?

損益計算書に記載される数字は、企業活動において収益や費用が発生した時に行われる日々の仕訳の集計結果である。

例えば、レジで商品5万円を現金で売上げた時の「現金5万円/売上5万円」の仕訳や、店舗の家賃10万円が引き落とされた時の「地代家賃10万円/普通預金10万円」の仕訳の下線部分が、損益計算書に集計される。

損益計算書と貸借対照表の関係性

損益計算書は、会計期間中の収益と費用から会社の「業績(利益)」を表し、貸借対照表は、決算日時点の「財政状態(資産・負債・純資産)」を表す。

損益計算書の数字は、決算によって毎年度0円にリセットされるが、貸借対照表の数字は、事業開始時からの累積値となる。

決算において損益計算書を0円にリセットする際、「当期純利益」は貸借対照表の「繰越利益剰余金」に振り替える処理が行われる。つまり、損益計算書上の利益は、貸借対照表の純資産として累積され続けるという関係にある。

損益計算書は作成目的4つ

それでは、損益計算書は何を目的として作成されるのだろうか。ここでは、損益計算書の4つの目的について解説する。

1.自社の業績を把握するため

損益計算書は、会計期間ごとの収益と費用を計算する。この「期間損益計算」を用いて過去の業績と今の業績を比較することで、今後の経営に活かすことができる。

2.他社と自社を比較するため

損益計算書には統一された様式があり、企業はそれに従って作成する。したがって、自社の事業にとってライバルである競合他社の業績と比較できる。

3.融資先や取引先に自社の信頼性を示すため

損益計算書は、金融機関による融資の判断や企業が取引をしても大丈夫かどうかの判断材料としても用いられる。

4.投資家保護のため

上場会社の場合、損益計算書などの財務諸表は、投資家が正しい投資判断を行うために活用される。

損益計算書の見方

損益計算書は、売上高の金額から始まり、利益や費用を加減しながら最終的には当期純利益を表示する。下記の、損益計算書の作成例で確認していただきたい。

利益(+)と費用(▲)をわかりやすくするため、右側に簡単な計算例を入れている。

損益計算書とは何のためにある? 作成方法や見方を解説

売上総利益とは

「売上総利益」は、売上高から売上原価を差し引いたもので、「粗利(あらり)」とも呼ばれる金額である。「売上原価」とは、小売業や卸売業などでは商品の仕入れ、製造業では製造にかかった材料費・労務費・経費などのことだ。

売上原価の金額は、下記のように計算される。

【売上原価の計算式】
売上原価=A+B-C

A:商品の期首棚卸高
B:当期商品仕入高
C:商品の期末棚卸高

期首の在庫(A)に、期中に仕入れた在庫(B)を加えて、期末に残った在庫(C)を差し引くことで在庫の減少分を算定し、それを売上原価としている。

製造業の場合、製品(半製品を含む)の期首棚卸高(A)、当期製品製造原価(B)、製品の期末棚卸高(C)となる。

損益計算書によっては、A~Cの項目と金額も記載される。

ただし、企業活動は複雑であるため、単に「売上原価」として表示し、詳しい内容として明細書を別に添付することもできる。製造業では、売上原価の計算方法を詳しく補完するため、「製造原価報告書(C/R:Cost Report)」を作成する。

営業利益とは

「営業利益」は、売上総利益から、販売費と一般管理費を差し引いた利益である。販売費及び一般管理費とは、販売業務や一般管理業務で発生した全ての費用のことだ。

会社によってさまざまな費用が考えられるが、一般的には、給与や賞与、法定福利費といった人件費、オフィスの家賃や光熱費、広告宣伝費、研究開発費、外注費などが該当する。

経常利益とは

「経常利益」は、営業利益に、営業外収益・営業外費用を加減した利益である。営業外収益・営業外費用とは、営業活動以外の原因から生じた収益と費用であり、臨時的な損益に該当しないものだ。

具体的には、下記のような収益と費用が該当する。

・営業外収益:受取利息、有価証券利息、受取配当金、有価証券売却益、仕入割引など
・営業外費用:支払利息、社債利息、社債発行費償却、創立費償却、開業費償却、貸倒引当金繰入額、貸倒損失、有価証券売却損など

つまり、売上総利益・営業利益までが、その会社の主たる営業活動に基づいて生じた損益であり、経常利益は、その営業活動に起因する損益ではあるものの副次的な損益となる。

税引前当期純利益とは

「税引前当期純利益」は、経常利益に、特別利益・特別損失を加減した利益である。特別利益・特別損失とは、営業活動以外の原因から生じた収益と費用のうち、臨時的に生じた損益のことだ。

具体的には、固定資産売却損益、投資有価証券売却損益、前期損益修正損益、災害による損失などが該当する。

当期純利益とは

「当期純利益」は、税引前当期純利益から法人税等(法人税、法人事業税、法人住民税など)を指し引いた額である。法人税は、税引前当期純利益の金額に、税法のルールで加算・減算調整を行った所得金額から計算する。

損益計算書の報告式と勘定式の違い

前述の事例のような損益計算書の様式を、「報告式」という。一般的な損益計算書には、この報告式が用いられている。これに対し、損益計算書には「勘定式」という様式もある。
勘定式の場合、収益や費用の勘定科目やその残高が示される。

例えば、前述の報告式の損益計算書を勘定式で表現すると、次のようになる。(勘定科目は適当に選択)

損益計算書とは何のためにある? 作成方法や見方を解説

報告式では、売上原価や販売費及び一般管理費、営業外収益などのように大まかな損益の構成は分かるものの、具体的に何が原因で発生した損益かまでは把握できない。これに対し、勘定式であれば、損益の発生原因がわかる。

ただし、勘定科目の残高が知りたいときは、「試算表(T/B:Trial Balance)」のほうが便利である。試算表とは、損益、資産や負債に関する全ての勘定科目の残高を一覧にした表のことだ。

一般的な会計ソフトでは、試算表を適宜出力できる。勘定科目ごとの残高や前期との増減を見る時は試算表が便利なため、実務で損益計算書の勘定式を使うメリットはほとんどない。

損益計算書から見る利益率

損益計算書によって自社の利益率を確認できるが、どのような利益率があるのだろうか。

損益計算書に記載される利益率の種類

売上高に占める売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益の比率を、それぞれ売上総利益率、営業利益率、経常利益率、当期純利益率という。

自社の各利益率を把握しておけば、他社の損益計算書を見た時、どちらに稼ぐ力があるかを判断できる。

損益計算書の平均的な各利益率は何%?

それでは、売上総利益率、営業利益率、経常利益率、当期純利益率は何%くらいが平均的なのだろうか。これを知るには、経済産業省による『経済産業省企業活動基本調査』が役立つ。

同調査では、全国約3万社の企業を対象に、それぞれの売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益などを調査している。特に、調査対象企業のうち、製造業・卸売業・小売業については、これらの個別の平均値を公開している。

2019年度の調査結果をもとに、製造業・卸売業・小売業の売上総利益率、営業利益率、経常利益率、当期純利益率を見てみよう。

損益計算書とは何のためにある? 作成方法や見方を解説

【調査対象企業について】
上記の調査は、37,162社(うち有効回答は29,268社)のうち、対象産業になった2万7,921社に対する調査である。

(参考)経済産業省:『2020年経済産業省企業活動基本調査(2019年度実績)の結果(速報)』より抜粋

損益計算書は自社の経営の健全性や安全性の判断にも必要

損益計算書とは何か、どうやって作られるのか、貸借対照表との関係、数字の見方、平均的な利益率などを解説した。

なお、損益計算書の値と貸借対照表の値などを用いれば、「ROA(総資産利益率)」や「ROE(自己資本比率)」など、資本効率性や安全性といった指標を導き出すことができ、より多角的な比較が可能となる。

自社の経営状態の健全性を分析する際に、適宜活用してもらいたい。

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