2021年を象徴する言葉に選ばれるほど急激にメジャーな言葉となった「NFT」。

しかし、「ドット絵の人物」や「猿のイラスト」のアイコンが高額で取引されていく様子をいぶかしげに見る人も多い。また、こうしたイラストが「アート」として扱われることには違和感を感じるかもしれない。

NFTはこれまでのアート作品と何が違うのか?そして、アート業界にどのような影響を与えているのだろうか? (記事中のレートは1ドル=115円で換算)

目次

  1. 従来のアート業界の仕組みを揺るがすNFT
  2. 「キャンバスに描かれた油絵」とは異なる文脈にあるNFTアート
  3. 世代間によっても異なるNFTの捉え方
  4. 「物理的な作品」を購入することと、「NFT作品」を購入することに違いはあるのか?

従来のアート業界の仕組みを揺るがすNFT

「CryptoPunks」のNFTが看板に掲げられた街の風景
(画像=「CryptoPunks」のNFTが看板に掲げられた街の風景)

画像出典:https://www.irishtimes.com/

NFTは、大量の資金が流れているにもかかわらず、ほとんど規制されていなかった業界の取引方法に革命をもたらしたと言われている。

NFTは、ブロックチェーンによって、その作品に関する取引を永久的に記録していくことができる。クリエイターと最初の買い手、その後の所有権や評価の変更に関する情報なども残されていくことになる。

これによって、分散化された透明性の高い市場が実現する。これは、商業ギャラリーやディーラー、オークションハウスといった売り手と買い手との間の情報の非対称性が大きく、不透明な中で繁栄してきた従来のアートマーケットとは対照的だ。コレクターは販売者の真偽を確認し、価格を比較することもできるというメリットもある。

NFTの火付け役となったBeepleの≪EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS≫
(画像=NFTの火付け役となったBeepleの≪EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS≫ )

画像出典:https://www.irishtimes.com/

また、アーティストもそうした情報をたどることで適切な価格や供給情報を受け取ることができ、平等な機会を得ることができるようになる。さらに、これまで美術市場への参入に苦労していたデジタル作品を制作するアーティストたちには、作品を収益化できるきっかけも与えた。

従来のアート業界の構造を揺るがす変化が今起こっているのだ。

「キャンバスに描かれた油絵」とは異なる文脈にあるNFTアート

伝統的なアートの愛好家のなかには、NFTによく見られる「PFP」(プロフィール画像; picture for proof または profile pictureの略)のイラストが「アート」といわれることに違和感を感じる方もいるだろう。

昨年、Bored Ape Yacht Club (BAYC) の猿のイラストのNFTは340万ドル (約3.9億円) で落札され、もうひとつの人気シリーズであるドット絵風の人物像「CryptoPunks」は、昨年1,100万ドル (約12.7億円) 以上で落札された。

340万ドル (約3.9億円) で落札されたBored Ape Yacht Club (BAYC)のNFT。金色の毛皮の特徴を持つBored Apesは全体の1%未満であり、希少価値のあるPFP。

上記のようなPFPプロジェクトでは、一定のデータを用いたアルゴリズムでまとめられている。アルゴリズムによって同じものは2つとないということが保証され、それによって誰もが欲しがるレアなバリエーションが生まれることとなったのだ。

また、「Bored Apes」や「SupDucks」といったPFPプロジェクトは、作品の購入者たちがまだ子供だった90年代や00年代にアメリカで人気を博したアニメ番組のスタイルやユーモアを取り入れており、ノスタルジックな美学を表現しているのも人気の理由のようだ。

「SupDucks」のPFPシリーズ。
(画像=「SupDucks」のPFPシリーズ。)

画像出典:https://supducks.com/

さらに、近年のPFPプロジェクトの多くは、オンラインコミュニティの「クラブ会員カード」のような機能を有している。例えば、そのNFTを所有することで、特別な特典を利用できたり、実績のあるコレクターだけが公式のDiscordサーバーに参加できたりするのだ。

こうした意味でも、「PFP」は従来の「キャンバスに描かれた油絵」とは違った文脈上にあることが分かる。PFPのファンは、NFTは伝統的なアート界の権威に対する大衆の反乱の象徴であるとも主張している。

世代間によっても異なるNFTの捉え方

また、NFTの捉え方は世代間によっても異なるという。国立芸術デザイン大学の講師であるレイチェルオドワイヤー博士によれば、25歳以下の人々とそれ以上の年齢の人々とでは、NFTとの関わり方がまったく異なるという。

若い世代にとっては、NFTは身近なもの?
(画像=若い世代にとっては、NFTは身近なもの?)

画像出典:https://unsplash.com/

NFTや暗号資産へ関心を寄せる若い世代は、経済的に将来の希望を持ちづらい世代であり、この新たな「投資」は希望を見いだせる「賭け」のようなものだと指摘する。

また、若いアーティストたちにとっては、NFTは仲間の中のコミュニケーションに影響を与える1つの要因でもあり、NFTを作ることでDiscordチャンネルに所属したり、逆に仲間はずれにされることもあるという。

若い世代にとっては、この新しい技術はコミュニケーションのためのカードのひとつのようなものであり、上の世代が考えるよりも身近なもののようだ。

「物理的な作品」を購入することと、「NFT作品」を購入することに違いはあるのか?

このように、既存のアート界の感覚とは違って見えるNFTだが、NFTにお金を払うことは、これまでの物理的なアートにお金を払うことには、実は大きな差がないのかもしれない。

複数枚の100ドル札を差し出す様子
(画像=複数枚の100ドル札を差し出す様子)

画像出典:https://unsplash.com/

伝統的なアートの世界でのアートの購入動機には

① その作品を体験したい・同じ空間にいたいという、作品への興味
② 社会的なステータスの獲得や社会貢献
③ 将来的な投資

といったものがあり、通常はこの1つだけではなく、複数の動機の組み合わせによって購入していると言われている。

これを見れば、既存のアート作品を購入する動機とNFTアートを購入する動機には大きな差異がないことが分かるだろう。ただ、新たなテクノロジーは、購入者にこれらの魅力を増幅させて見せているのかもしれない。

サイコロ状の多面体に「NFT」の文字が刻まれている
(画像=サイコロ状の多面体に「NFT」の文字が刻まれている)

画像出典:https://bullandbearmcgill.com/

既存のアート業界の仕組みを揺るがし、これまでと異なる文脈にあるNFTアート。

本記事では比較的良い面にクローズアップしたが、もちろん良いことばかりではない。新しい概念であるが故にセキュリティの問題や詐欺の問題が現在進行形で起こっているし、アートとしての価値も保証されたものではないため暴落する可能性もある。解決していかなければいけない問題も多く残る現在進行形の技術だ。

また、技術的にはNFTは「画像」ではなく、「画像を所有していること」を示すブロックチェーン上のデータの単位であり、必ずしもその画像の著作権を所有しているとは限らない点にも留意が必要だ。

しかし、その作品に価値を感じ、作品を購入して楽しむ感覚は既存のアートを楽しむ感覚と大きくは異ならないといえそうだ。

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文:ANDART編集部

参考)

What the hell are NFTs and what do they mean for art?(THE IRISH TIMES)

THE IMPACT OF NFTS ON THE ART INDUSTRY (The Bull & Bear)

The Future of NFTs: How PFP-Based Projects Took Over the Market (ARTnews)

The future of NFTs: why PFP projects are the new trend (Medium)