ドラッグストアチェーンによる惣菜の取扱いが急増、専門店による事業展開が活発化
~ドラッグストア業界、食品カテゴリーの戦略的活用・惣菜の売場投入が本格化~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、惣菜(中食)市場を調査し、商品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
惣菜(中食)市場規模推移
1.市場概況
女性の社会進出や単身・共働き世帯の増加により、惣菜(中食)市場規模は増加基調にあり、2018年度は小売金額ベースで、前年度比101.9%の8兆9,793億円であった。2018年度の商品別構成比は、和風惣菜24.8%が最も高く、洋風惣菜19.9%、ファストフード19.0%、米飯18.6%、給食弁当6.9%、中華惣菜5.8%、調理パン2.9%と続く。
近年は、ドラッグストアや量販店が消費者の来店頻度の向上を目的に惣菜を取扱いはじめている。惣菜(中食)市場への参入企業の増加により競争が高まるなか、惣菜専門店は差別化を図るため、ITを活用した注文やインターネット通販(eコマース)などのサービス化を検討している。
こうしたなか、IT企業は惣菜専門店に対し、デジタルサービスを活用した事業創出や支援を行っている。一例ではスマートフォンから事前に注文・決済を完了しておくことで、消費者が待たずに受け取れるプラットフォームの提供がある。こうしたプラットフォームを活用することで、店舗側では、漏れなくスムーズに注文に応じることができることから、店内オペレーション(調理・販売業務)は効率化する。惣菜専門店は、店内調理による出来立て惣菜の提供を他チャネルとの差別化としてきたが、さらに、こうしたIT活用により消費者の買物時間を短縮するなど、サービスの向上により競争力を高めつつある。
2.注目トピック
ドラッグストア業界、食品カテゴリーの戦略的活用・惣菜の売場投入が本格化
ドラッグチェーンは高齢化社会への対応を図り、徒歩での来店客を取込むため、従来より小商圏を想定した出店を強化している。ヘルスケアとビューティケアを中核とする事業モデルに変わりはないが、消費者の来店頻度を高めるため、惣菜の品揃えに注力している。マーチャンダイジング(商品計画・商品化計画)は、スーパーやコンビニを参考に低価格を目玉にする手法が採られている。
なかでもドラッグストアチェーンのGenky DrugStoresは、麺類やサラダ、米飯など品目毎に仕入れを行い、2019年7月には自社で地域配送センターの運用を開始、調理から配送に至る作業全てを内製化するなど、惣菜の取扱いを本格化させている。
ドラッグストアチャネルにおける2018年度の惣菜(中食)市場規模は小売金額ベースで、367億円と推計した。今後も集客を目的とした惣菜の取扱いが増加するとみられ、2023年度には1,277億円(2018年度比348%)になると予測する。
3.将来展望
ドラッグチェーンによる取扱いが進むほか、惣菜専門店によるチャネル開拓の一環として、フードコートやカフェ、居酒屋を併設した外食店との複数業態など、多種多様なスタイルでの事業展開が活発化していく可能性がある。また、2019年10月の軽減税率適用により、テイクアウト(持ち帰り)需要の増加を見込む。
こうした業態の多様化、テイクアウト需要の増加などを伴いながら、惣菜(中食)市場規模は毎年2%程度で成長を続け、2023年度には小売金額ベースで、10兆53億円(2018年度比111.4%)になると予測する。