飲食・サービス業のDXのキモは「店舗状態の見える化」。『ClipLine』が組織構造を変革する

コロナ禍で大打撃を受けたひとつが飲食・サービス業界だ。時短営業だけでなく、感染症対策の衝立てや消毒液の設置、キャッシュレス化など、営業形態そのものの変更が余儀なくされた。中でも急激に求められたのがIT化、DXの波だ。ソーシャルディスタンスを保った非接触、非対面の教育方法やマネジメント体制の構築が促された。

ClipLine株式会社は、サービス業の生産性を改善するマネジメントツール『ClipLine』を提供している。主要顧客は多店舗展開する大手の飲食・サービス業チェーンだ。今回、話を伺った代表取締役社長の高橋勇人氏は、コンサルタントとして大手外食チェーンを業界1位に押し上げた実績を持つ。

そんな高橋氏からみた、多店舗展開する飲食・サービス業の抱える構造的な課題と、今後改善すべき点について伺った。

「人が商品」の飲食業界の難しさの本質は構造問題にあり

多くのサービス業、とりわけ、多店舗チェーンを展開する飲食業を見てきた中で、人を相手にするサービス業界の難しさを高橋代表は強調する。

「サービス業の場合は、全国各地に散らばる数万人の店舗スタッフ一人ひとりのパフォーマンスが直接、企業の業績に影響しかねません。

『顧客接点』の意味において、店舗スタッフは言わば「製造業の商品」に当たります。『気持ちのいい接客をしてくれなかったから』と、お客様が次から来店しなくなったり、SNSにネガティブなコメントを流したりする可能性があるからです。つまり、スタッフの接客態度や提供サービスの品質がダイレクトに、その企業全体の顧客満足度を大きく左右します。

本部は当然、店舗スタッフ一人ひとりの品質管理を徹底する必要がありますが、簡単に平準化することはできません。

飲食業界では、高校生から80代くらいの方までがひとつの店舗で働いていることもあります。外国人もいる。働く動機も各人バラバラ。多種多様でばらつきのある集団に向かって、上から一方的に押し付けて言われたとおりにやってくださいと伝えても、その通りにはならない。ここに、人相手の難しさがあります」

一方、教育する側にも「ばらつき」は発生するという。同じマニュアルや教科書を使っていても、教える先生によって内容理解のし易さが変わることは誰もが経験済みだろう。

「店長さんやスーパーバイザーさんなど、教える側の指示の仕方で、生徒たち、つまり店舗スタッフの成績や、業務そのものを好きになれるかどうかが大きく変わってしまいます。しかしこれは誰も悪くない。あくまで構造的な問題です」

いくらマニュアルがあっても、数万規模の人間相手に同じ仕事をさせることは並大抵のことではない。本部が企画やマニュアルを作っただけで、そのまま店舗スタッフに隅々まで浸透することはない。

本部や経営層をトップに、エリアマネージャーやスーパーバイザーなどが複数店舗をマネジメントし、さらに傘下に店舗と店長、店舗ごとのメンバーがいる。ピラミッド構造での教育の過程で「伝言ゲーム」や「俺流」「解釈」が入り、正しく伝わらなくなってしまうからだ。ではいったい、構造問題をどうしたらいいのだろうか。

「できることを増やせば」顧客満足度と売上が上がる

大手飲食チェーンの抱える課題は多岐に渡り、階層ごとに課題が存在する。サービス残業の問題や衛生管理、コストや原価管理、商品開発、出店開発、組織改革、人事制度改革などだ。

高橋代表はコンサルタントして14年間、前半は主にITを活用した企業改革の推進を、後半は多店舗展開している企業の経営支援を行ってきた。起業に至ったのは、ITを駆使すれば、多店舗展開する飲食・サービス業の課題を解決できるのではないかと考えたからだった。中でも課題意識を持っていたのが、現場だった。

「本社の商品開発や経営支援などは、直接私たちがコンサルティングできます。ところが、衛生管理や労務管理、原価のコントロールなどは、店舗スタッフ一人ひとりを教育しないと改善しません。そこにタッチできない課題がありました。原価率が適正な商品を作るよりも、現場のメンバーがちゃんとレシピ通りに原価率を守って作れているか、そちらのほうがよほど重要で難しいのです」

現場が正しく動けるかどうかは、組織の構造的な問題にあると見抜いていた高橋代表は、「『できる』をふやす」をミッションに掲げて『ClipLine』のサービス開発を開始した。

「人間を機械に見立てて同じように作業させる、という発想では開発していません。人間には個性があり、個性を活かすカタチで、みんなができることを増やしたいと考えました。できることが増えるとみんながハッピーになり、ハッピーになれば従業員満足度が高くなる。

そこに立脚して初めて、顧客満足度を高めることができ、ロイヤルカスタマーが増えて売上・利益が増えます。この好循環の連鎖はサービス・プロフィット・チェーンと呼ばれていますが、この考えに私たちも共感し、当社サービスにも反映させています」

暗黙知を形式知化して自発的な創意工夫を引き出す

『ClipLine』のもう一つの大きな特徴に知識創造経営『SECIモデル』を採用している点が挙げられる。一人ひとりの現場スタッフが持つ知識や経験=暗黙知を引き出し、店舗やエリア、全社で共有することで企業の組織力向上につなげるフレームワークのことだ。

「そもそも、本社にいる本部の人が現場の課題を全て知っているかというと、その限りではないと思っています。現場では、マニュアルで想定していないことが起こるのが実態です。その際に重要なことは、現場スタッフの創意工夫です。現場のあるべき姿を本部が正しく伝えつつ権限移譲すれば、スタッフの創意工夫を引き出すことができます。暗黙知をいかに活かせる体制にするかが、構造改革のキモになります」

構造改革のために、『ClipLine』では主に動画が活用されている。たとえばハンバーガーの作り方や商品棚の並べ方、POSレジの打ち方など定形の作業はすべて動画で学習するようにするのだ。100人、1000人と新人の導入研究で繰り返し教えていたことが、1本の動画で済むようになる。動画データは分身となり、資産化して蓄積されていく。マネジメント側は直接、会わずとも非対面で伝えられるようになる。

各店舗スタッフは全員がIDを持つ。マニュアル通りの作業ができているか録画し、アップロードできる。いつでもどこでも、マネジメント側はスタッフと形式知化された暗黙知を共有できるようになる。また、動画や画像を一覧化して現場へのマニュアルやオペレーションの浸透度合いを確認できるようもなる。

動画はYouTubeやNetflixのUI・UXを参考にマイページを設けるなどして、分かりやすく直感的に「自分ごと化」されるようなインセンティブ設計がなされているという。

「私たちはつねに、現場のスタッフの方々が使ってくれることを最優先して開発しています」

「現場への権限移譲」は一見すると「品質を高く保つ平準化」と真逆の考えに思えるが、矛盾はしない。方向性の誤った創意工夫は動画で補足できるからだ。むしろ自主性が育まれ、お互いの店舗の好事例を共有することなどでサイロ化を防ぎ、全体の風通しをよくすることができる。こうした仕掛けで、一人ひとりの「できること」が増えていく。

ただしClipLineは、システムの導入がゴールではない。コンサルタントがハンズオン(実地)で入り、スモールスタートして、徐々に展開店舗数を増やす。映像制作やカスタマーサポート、データ検証、経営コンサルティングなどの支援を行いながら、売上の向上など目標の達成まで併走する。事実、売上や顧客満足度の向上、新人育成時間の圧縮などで大きな成果を上げている。ちなみに料金体系は単価×店舗数の課金モデルだ。

今後は、より『ClipLine』がリーチできる範囲――顧客満足度や売上データと連携できるようにバージョンアップしていく予定だという。また、大手だけでなく小規模の店舗数で展開している企業にも活用してもらえることを目指しているそうだ。

DXがアナログ運営に破壊的なインパクトをもたらす

コロナ禍以降、とりわけ飲食業界は2極化が進んだという。

「DXに対する意識は飛躍的に上がりました。ただ、業績が落ちて商談が止まってしまった企業と、コロナ禍以降、業績を伸ばした業態があります。

いずれにしても、コロナ禍でリモートへの需要は高まりました。リモートでマネジメントができる『ClipLine』には追い風です。

飲食業界に限らず多店舗展開のサービス業はまだまだアナログ的な運用が課題です。どの店にどんなスタッフがいるのか、本部の人は顔が見えていない。自社に対してブランド愛を持って働いているコアなスタッフがどれくらい在籍しているのか把握しておらず、店長任せになってしまっている。現場スタッフの顔が見えていない。

本部はモニタリングとフィードバックを、現場は自発性を持てる仕掛けが必要です。そのためには一人ひとりのIDと動画活用、現場の創意工夫を引き出す施策が必須。手前味噌ですが、データをデジタル化して蓄積しPDCAを回すことで、絶大なインパクトをもたらすことができます」

<会社情報>
ClipLine株式会社
〒141-0031
東京都品川区西五反田7丁目22番地17号 TOCビル7階20号室
https://corp.clipline.com/

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