矢野経済研究所
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2020年の車載モータ世界需要数量は約30億個規模と推計、2030年の需要数量はAggressive予測で約60億個、Conservative予測で約47億個と予測

~半導体不足による減産影響で世界自動車販売台数は減少しているものの、BEVシフトの急速な進展で車載モータの需要数量は続伸の見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、車載モータの世界市場の調査を実施し、モータ搭載システム別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

世界の車載モータの需要数量予測

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1.市場概況

環境負荷が少ない自動車として開発が進む次世代自動車(xEV; HEV、PHEV、BEV、FCV)はもちろんのこと、快適・利便性や安全・安心を目的として内燃機関車(ICE)のパワートレイン、シャシ、ボディ領域それぞれで電動化が進んでいる。部品の電動化に伴い、急速に搭載数を増加させているのがモータである。2020年の車載モータ世界市場は、新車販売台数ベースで前年比88.1%の29億5,335万個と推計した。2020年は新型コロナウイルス感染拡大により、世界的に自動車販売が停滞したこともあり、車載モータ需要量も減少に転じている。

2020年秋以降から2022年にかけて半導体不足やコロナ禍によりASEANエリアなどで自動車部品製造が停止するなど、自動車メーカ(以下、OEM)各社が減産を強いられ、世界自動車販売台数※は減少している。混乱したサプライチェーンが正常化するまでには時間がかかるとみられ、車載モータの需要にも大きな影響を与える見込みである。一方、カーボンニュートラル実現のために中国や欧州各国でBEVへの急速なシフトが進んでいることから電動コンプレッサや主機モータ、電子制御によってADASや自動運転との親和性が高くなる電動パワーステアリングや電動ブレーキの需要が増加している。
※各国工業会データ等をもとにした矢野経済研究所推計値

2.注目トピック

カーボンニュートラルと安全性向上で進むクルマの電動化

2021年10月に開催されたCOP26で、イギリスやインドなど39ヵ国とOEM11社が2035年または2040年までに新車販売台数のすべてをZEV(Zero Emission Vehicle;BEV、FCV)とする宣言内容に賛同した。近年、気候変動に対する取り組みは世界的な潮流となっており、カーボンニュートラルを達成するための動きは加速していくとみられる。

クルマの電動化においては特にBEVを中心に各国政府が普及のためのインセンティブを展開しており、2021年の世界自動車販売台数※に占める割合は5.9%(約464万台)の予測と、2020年の2.6%(約201万台)から倍以上に拡大する見込みである。BEVが急速に普及することで主機モータに限らず、バッテリ、モータ、インバータを冷却する電動ウォーターポンプや電動コンプレッサなど、熱マネジメントに関わる車載モータの需要増加も見込まれる。
また、電子制御によってADASや自動運転との親和性が高くなるシャシ領域においても電動化が進んでいる。先進国ではAEB(衝突被害軽減ブレーキ)搭載義務化を背景に、ESC(横滑り防止装置)が搭載されている。しかし、欧州で実施される自動車安全テスト「EuroNCAP」では2023年から追加されるAEBの新たな試験に対応するため、ESCより高い応答性を持つ電動油圧ブレーキが必須となっている。今後は先進国市場を中心に、xEVに限らずICEでも電動油圧ブレーキの搭載が拡大していくとみられる。
カーボンニュートラル実現のためのBEVシフト、安全基準の厳格化といった潮流が顕在することで、世界の車載モータ需要数は拡大する見通しである。
※各国工業会データ等をもとにした矢野経済研究所推計値

3.将来展望

2020年の世界自動車販売台数の大部分を占める内燃機関車(ICE)であるが、自動車の最大市場である中国や欧州などでBEVシフトが急速に進んでいる影響からシェアを急速に落としていく見通しである。各国政府やOEMが自動車の電動化に関わる目標を示しており、中国では2035年に新車販売の50%をBEV、PHEV、残りはHEVという目標を示し、欧州でも2035年に内燃機関搭載車の新車販売を禁止にする方針を発表している。また、日系OEMも2030年までにBEV販売台数の明確な台数目標を示しており、BEVを中心にxEVの普及は急速に進むとみられる。このように各国政府やOEMが示す、自動車の電動化への意欲的な目標を達成するシナリオを想定したAggressive予測では、2030年の世界の車載モータ需要個数を約60.4億個と予測する。

一方で、「バッテリ価格低減の限界」、「電磁鋼板などの部品不足」、「各国政府のインセンティブ縮小」など、xEV普及においてマイナスとなる要因も出てきており、各国政府やOEMが目指す目標には2030年時点では達しないという見方もある。さらに、コロナ禍の影響による半導体不足などから、OEM各社は2022年現在も減産を強いられており、世界自動車販売台数がコロナ禍以前の水準まで回復するのに2~3年かかる見通しである。このように自動車販売台数とxEV普及が停滞するシナリオを想定したConservative予測では、2030年の世界の車載モータ需要個数を約47.1億個と予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2021年10月~2022年1月
2.調査対象: 自動車システムメーカ、モータメーカ等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
<車載モータ市場とは>
本調査における車載モータとは、スタータやパワーシートモータ、電動ブレーキに用いられるモータなどから次世代自動車(xEV; ストロングハイブリッド[HEV]、プラグインハイブリッド[PHEV]、電気自動車[BEV]、燃料電池車[FCV])で用いられる主機モータまで、サイズや出力を問わず搭載されるモータを対象とするが、カーオーディオやナビゲーションシステムに使用されるディスクドライブ・HDD用モータ等の一部は対象外とする。
対象車両はxEVを含む、すべての乗用車および車両重量3.5t以下の小型商用車に搭載される車載モータとした。
<市場に含まれる商品・サービス>
パワートレイン領域;スタータ、オルタネータ/ISG、電動過給機、電動ウォーターポンプ、電動オイルポンプ シャシ領域;電動パワーステアリング、電動ブレーキ、電動パーキングブレーキ ボディ領域;パワーウィンドウ、パワーシート 次世代自動車システム領域;主機モータ、電動コンプレッサ

出典資料について

資料名2022 車載モータ市場の最新動向と将来展望
発刊日2022年01月31日
体裁A4 303ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

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