矢野経済研究所
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課題と可能性の間で揺れ動くLiBのリユース・リサイクル、従来の枠を超えた新たなビジネス領域の拡大に向けた取り組みが今後重要に

~2021年の世界の車載用LiB廃棄重量は9万6,850tの見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、リチウムイオン電池を対象に世界のリユース・リサイクル動向を調査した。

リチウムイオン電池 リユース・リサイクル世界市場の動向

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1.市場概況

 近年、気候変動対策や持続可能性(サステナビリティ)の重要度が急上昇したことを受け、世界各国の政策によるxEV(HEV、PHEV、BEV)推進の流れは加速しており、搭載されるリチウムイオン電池(以下、LiB)も市場拡大のスピードを増すことが予測される。
そのため、将来の大量廃棄が想定されるLiBへの対応として、LiBのリユース・リサイクルについても関心が高まっている。また、リユース・リサイクルにおける重要なポイントの一つに、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)などのLiB電池材料の資源リスクがある。
また、EUは2020年に発表した新たな電池規則案にLiBリサイクル材使用の強制化を盛り込んでいる。この電池規則案の発表以降、LiBのリユース・リサイクルへの注目度が更に高まり、将来を見据えてリサイクル材を確保するための取り組みが加速している。

2.注目トピック

車載用LiBの廃棄状況

 2021年の車載用LiBの世界廃棄重量は9万6,850t(見込)と推計する。地域別に構成比をみると、2021年は中国が94%を占めている。これは、2015年前後から政策主導でPHEV市場、EV市場が世界に先行して成長したことにより、LiB廃棄量の増加も先行していることが要因である。
廃棄される車載用LiBの回収量は地域によって事情は異なるものの、想定よりも下回っている状態にある。中国では国の認定を受けたホワイトリスト企業以外にも廃棄されたLiBが流入しており、日本ではBEVやPHEVが中古車として輸出されている。こうした状況が、廃棄される車載用LiBの回収量の低下につながっているとみられる。

3.将来展望

 LiBのリユース・リサイクル世界市場は今後の成長が期待される市場だが、その成長スピードを左右する車載用LiBの廃棄量については現状、各地域とも想定よりも少ない状況にある。今後の市場拡大に向けては、こうした回収課題を克服することが必要となる。また、リサイクルについてはLCA(Life Cycle Assessment)の観点からCO2排出量を抑えた技術に対する注目度が高まっており、このような新たなリサイクル技術動向についても注視しておく必要がある。

調査要綱

1.調査期間: 2021年8月~2022年1月
2.調査対象: リチウムイオン電池(民生小型、車載用、ESS用)のリユース、リサイクル事業、技術
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<リチウムイオン電池のリユース・リサイクルとは>
本調査におけるリチウムイオン電池のリユース、リサイクルとは、廃棄や交換等で不要となった使用済みリチウムイオン電池を新たに別の用途で二次利用するリユース、並びに使用済み電池からCo、Ni、その他金属材料を抽出し、リチウムイオン電池の正極材の原材料やその他用途で再利用するリサイクルを対象とする。
なお、車載用リチウムイオン電池の廃棄重量、リチウムイオン電池のリユース容量・リサイクル回収量は、各地域におけるLiBを搭載したxEV(HEV、PHEV、BEV)の生産台数をベースに、本調査で得た定量情報および定性情報を加味して算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
民生用小型リチウムイオン電池、車載用リチウムイオン電池、ESS用リチウムイオン電池、※参考事例としてのニッケル水素電池のリユース、リサイクル動向含む

出典資料について

資料名2021年版 リチウムイオン電池のリユース・リサイクル動向と展望
発刊日2022年01月31日
体裁A4 159ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

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