PBRとは? 意味や計算式、目安となる数値について詳しく解説!
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企業の財務状態を評価するPBRという指標をご存じだろうか。財務諸表からその時点での企業の株価が高いのか、安いのかを判断するのに使える指標の一つで、理解しておくと株価の妥当性を判断するのに活用できる。

今回はPBRとは何かを説明した上で、PBRにもとづいて株価の割高・割安を判断する際の基準、PBRを指標としてみる際のポイントなどについて詳しく解説する。

目次

  1. PBR(株価純資産倍率)とは?
    1. PBRは株価が割高や割安かを判断するための指標
    2. PBRの計算式
    3. 創業期の企業はPBRが高くなる傾向がある
  2. PBRは「1倍を上回っているか、下回っているか」が目安
    1. PBRが1倍を上回っていると株価は割高
    2. PBRが1倍を下回っていると株価は割安
    3. PBRのランキング(2021年12月10日時点)
  3. PBRを指標として見る際のポイント
    1. 相場の下落局面で注目されることが多い指標
    2. PER(株価収益率)との違い
  4. まとめ
  5. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

PBR(株価純資産倍率)とは?

PBRとは日本語では「株価純資産倍率」といい、Price Book-value Ratioの頭文字を取った言葉だ。株価が割高なのか、割安なのかを判断するための指標の一つであり、その時点での株価が「1株当たり純資産」の何倍であるかを示す数値である。

純資産(自己資本)とは会社がもつ総資産の中で、株主が保有している資産を指す。つまり、貸借対照表の資産総額から負債総額を引いた数値であり、もしその時点で会社を解散した場合、株主に分け与えられる資産のことだ。そのため純資産は解散価値と呼ばれることもある。

この純資産を1株当たりの額で示したものが、「1株当たり純資産」である。1株当たり純資産の金額が大きくなればなるほど、返済不要の純資産が多いことを意味し、それだけ倒産のリスクが少ない安定性のある企業といえる。この「1株当たりの純資産額」と1株当たりの価格である「株価」の値の関係性を示す指標がPBRだ。

PBRは株価が割高や割安かを判断するための指標

1株当たりの純資産額と株価とがまったく同額であれば、企業の資産価値と株の価値が均一(1倍)であることを意味するため、投資家にとってはいわば割高感も割安感もない。もし均一の時点で会社が解散したら、株主に対して投資した額と同じ額が返還されることを理論上意味する。

しかし、株価の方が1株当たり純資産よりも高い場合、企業が保有する資産よりも株の方が価値は上がっていることとなり、その時点での株価は「割高」と判断できる。

たとえば、1株当たりの純資産が100円、株価が110円だったとしよう。この場合、株価が100円であれば1株当たりの純資産額と価値が均一だが、実際には株価の方が10円高い。つまり、10円分だけ株価に割高感があるのだ。

一方、株価が90円だったとすると、企業が持っている資産の価値よりも株の方が10円分の価値が低い。つまり、投資家にとっては割安感のある株となるのだ。同じ業界の企業同士を比較することで、どの企業の株価がとくに割高・割安なのかを判断できる。

PBRの計算式

PBRの計算式は以下のように示される。

PBR(倍)=株価(1株当たり価格)÷1株当たり純資産

この計算式からもわかる通り、株価の方が1株当たり純資産よりも高額になるときは1.0倍を超える。株価が100円で1株当たり純資産額が120円であれば、PBRは1.2倍になるわけだ。同様に株価が80円で1株当たり純資産額が100円であるなら、PBRは0.8倍となる。

ここでA社のPBRが1.2倍、B社のPBRが0.8倍だとすると、株価に割安感があるのはB社である。理論上ではこの場合、仮にA社、B社とも1株当たりの純資産額が100円とするとA社は株価120円、B社は株価80円でその所有権を得られるわけだ。

創業期の企業はPBRが高くなる傾向がある

創業期の企業は資金調達を銀行などからも行うため、長期借入金などの金額が大きくなる傾向にある。純資産比率(純資産÷(純資産+負債))が低めで、純資産額がそれほど大きくないため、PBRの数値が高めとなり、割高感が生じやすいのだ。

PBRは「1倍を上回っているか、下回っているか」が目安

PBRを指標としてみる場合、一つ基準となるのが「PBRが1倍以上であるかどうか」という点である。つまり、1倍を上回ると割高感があり、1倍を下回ると割安感があるわけだ。なぜ1倍が基準となるのか、以下で詳しく見ていこう。

PBRが1倍を上回っていると株価は割高

株主は企業の所有者であるが、企業は銀行からお金を借り入れたり、取引先に支払うべき支払手形を抱えていたりする。そのため、実際に株主に帰属する資産は総資産額から負債額を差し引いた純資産額である。

先述の通り、PBRは株価を1株当たりの純資産額で割った値に計算されるため、PBRが1以上の場合、市場ではその企業が高く評価され、本来の純資産の価値よりも高い価値で株式取引が行われていることを意味する。

たとえば、黒字企業や今後も成長すると見込まれる企業の場合、確実に資産運用できるその企業の株式を投資家はこぞって入手しようとするだろう。株式市場ではニーズが上がるとともに価格が上昇していくため、業績がいい企業ほど株価が高くなり、PBRも1倍を超えて割高となっていく。

つまり、RBPが1倍以上の企業は、株式市場で高い評価を受けて株式が取引されている企業であるともいえる。これから株式を購入する際は割高感があることは必ずしも望ましいことではないが、既存の株主にとっては株価の上昇は保有資産の増加を意味する。

PBRが1倍を下回っていると株価は割安

一方、PBRが1倍を下回ることは、その時点で純資産をすべて売却しても、株主全員には投資した額が返還されない状況であることを意味する。つまり、それだけ企業の価値が低い状態だ。

もしPBRが1以下の場合、企業が所有している純資産の価値よりも低い価格で株を購入できることを意味するため、投資する側としては割安となる。たとえばPBRが0.9であれば、本来の純資産の価値よりも1割も安くその企業の資産を購入できるわけだ。

しかしここで問題になるのは、「なぜPBRが1を割っているのか」というその理由である。もし赤字が続き、業績が落ち込んでいるために株主・投資家が離れ、それゆえに株価が下がってPBRが下がっているなら、長期的な投資先としては安定性に欠ける。割安感はあっても、長い目で見た資産運用先としては不適切といえるだろう。PBRが1未満となっている企業は、各種利益率の推移・財務状況をチェックする必要がある。

また、業績悪化ゆえにPBRが1未満のときは、なぜ業績悪化したのかも調査する必要があるだろう。たとえば、なんらかの不正や事故を起こし、それゆえに市場での信頼性を失うような事態が起こっているかもしれない。

あるいは逆に、今こそ赤字で株価が伸び悩んでいるが、実は新たなビジネスモデルを開発しつつ、将来的に大きく成長する事業を検討している最中との可能性もある。今では世界規模の企業になっているGoogleやAppleも、現在の業績よりも将来のことを考えるそのような時代があった。PBRに加えて背景状況も踏まえた上で、将来を見越した投資判断を行うことが重要だ。

PBRのランキング(2021年12月10日時点)

PBRは業種ごとに平均値が異なるため、実際に指標としてみる場合は同業種の企業間で比較すると割高感、割安感がよりつかみやすい。たとえば、経済状況によって変化するものの、「情報・通信業」や「不動産業」は2.3~2.5倍、「電気・ガス業」や「小売業」は1.6~1.7倍が平均的な値だ。

ただ、ここでは参考値として日本全体の中で高いPBRの企業と、低いPBRの企業を5社ずつ紹介しておこう(「Yahoo!ファイナンス」2021年12月10日時点の数値を参照)。地方銀行のPBRの低さが際立っているのが特徴的だ。

・高PBR
1 株式会社レッド・プラネット・ジャパン(東証JQS)  PBR 642.86
2 株式会社タカキュー(東証1部)           PBR 253.06
3 株式会社ランシステム(東証JQS)          PBR 181.78
4 株式会社サンエンアーツ(マザーズ)         PBR 167.24
5 日本通信株式会社(東証1部)            PBR 78.11

・低PBR
1 株式会社千葉興業銀行(東証1部)          PBR 0.08
2 株式会社高知銀行(東証1部)            PBR 0.10
2 株式会社南日本銀行(福証)             PBR 0.10
2 株式会社宮崎太陽銀行(福証)            PBR 0.10
5 株式会社じもとホールディングス(東証1部)     PBR 0.11

PBRを指標として見る際のポイント

実際にPBRを株価の指標としてみる場合、いくつか押さえておくべきポイントがあるので紹介しよう。以下ではPPRが相場の下落局面で注目されることが多いこと、PER(株価収益率)とは混同しないこと、の2点について説明する。

相場の下落局面で注目されることが多い指標

PBRは相場の下落局面で着目されることの多い指標として知られている。株価を測る方法としては、純資産を基準とするPBR以外にも、利益を基準にする方法や配当利回りなどを基準にする方法がある。

しかし、株の「売り」が進むことにより株価が下落し続けている場合、最低限チェックしたいのは「どこまで株価は下がっていくのか」という点である。この点、企業の解散価値(倒産などした際に、理論上株主に配分できる資産)である純資産を基準にするPBRは、変動しやすい利益などを基準とするよりも下値の予測がつきやすいのだ。

たとえば、コロナが猛威を振るい、企業活動が抑制された2020年3月には株価の下落局面を迎えた。その際にも日経平均株価のPBR値の推移が注目された。3月半ばにはリーマンショック時の過去最低水準である0.81倍に迫ったことが話題を呼んだが、その後は底打ちして上昇していった。

PER(株価収益率)との違い

株価の適性性を判断する指標として、PER(株価収益率)もある。PBRと似ているので混同しやすいが、両者は計算方法が異なることに注意しよう。

PERは「1株当たり純資産」ではなく「1株当たり利益」を株価で割って算出される指標だ。

PER(株価収益率)=株価÷1株当たり利益

株価と1株当たり利益の関係性を示す指標で、数値が低いほど会社が出している利益額に対して株価が安めであることを示し、数値が高いほど利益額に対して株価は高めであることを示す。PERは企業の利益を基準とする指標、PBRは企業の純資産を基準とする指標と覚えておこう。

まとめ

PBR(株価純資産倍率)は株価が1株当たり純資産の何倍であるかを見る指標で、株価の割高感や割安感を測るのに用いられる。

PBRが1.0を超えると割高、1.0を下回ると割安であるといえる。実際に比較検討を行う場合は、業種ごとにPBRの平均値は異なることに注意しよう。同業他社と比較して、どちらの数値が高いのか、低いのかを調べ、そこから株価の割高感・割安感を判断するのが適切である。

また、PBRは株価の下落局面で注目されやすいこと、PBRと似た指標としてPER(株価収益率)があることも押さえておきたい。PBRが株価を1株当たり純資産で割って計算するのに対して、PERは株価を1株当たり純利益で割ることで求められる指標である。

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金城寛人
金城寛人
中小企業診断士・株式会社エルニコ執行役員
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