ここ1年の間に、「ジェンダー平等」「Z世代」「フェムテック」といったトレンドワードに並んで、一気に注目を集めるようになった「NFT」。2020年に約300億円程度だった市場規模も2021年9月までに約1.5兆円を超えたといわれており、通年では6〜7倍の成長を遂げつつある。
そこで今回はNFTアートの基礎的な部分について、本記事にて徹底解説していきたい。
目次
そもそもNFTとは?
NFTは英語の「Non Fungible Token」の略。日本語では「代替不可能なトークン」という意味をもつ。トークンとは、NFTでは仮想通貨やNFTなどのブロックチェーン技術によって生み出されたデータ全般を表す言葉として使われている。
ブロックチェーンとは元々、仮想通貨「ビットコイン」の基幹技術として発明された概念で、ネットワーク上における「分散型の台帳」としての機能を有するシステム。
ブロックチェーンでは、トークンの所有者や取引履歴などが詳細に記録されるばかりでなく、相互が監視し合うシステムであるため、ネットワーク上に存在する台帳のデータが改竄される等の不正が起こった場合、他のデータと照合して修正することが可能となり、データの改竄リスクを防ぐことができるというメリットがある。
この機能を通貨以外のトークンに応用し、以前は複製可能だったデータの「唯一性」を保証することを可能にしたのが、NFT。
NFTの大きな特徴として、まず一つ目に、基本的に「誰もが発行できる」という点が挙げられるだろう。
前述の通り、発行者や取引の履歴が記録されることによって必要以上にプラットフォームに縛られることがなくなるため、ウェブ上の取引がよりフレキシブルな方法で実行可能になる、というメリットがある。
また、発行者や取引の履歴が記録されるというシステムの特質上、発行者の権利や収益を確保しやすい環境が整っていることも、これまでの取引にはなかった重要なポイントだ。
具体的には、従来は多くのサービスや取引がプラットフォームに収益が集中する仕組みだったため、二次流通の際には元の所有者やデータ作成者側に収益が残るというケースは殆どなかったばかりでなく、ネット上に存在するあらゆるデータは簡単にコピーされてしまったり、改竄されてしまうといったリスクがあった。
しかしNFTによって所有者やデータの唯一無二性が保証されることになれば、これまで不明瞭だったデジタルコンテンツに明確な権利が与えられることになる。それによって権利が守られるばかりでなく、データが二次流通される際にも発行者や作成者に収益が還元されやすくなる。
NFTアートとは?
NFTアートとは、これまで比較的コピーが容易であったデジタルアートに個別に証明書が付与されることによって、その「唯一無二性」が保証されるアートの総称。
特定の作品やデータに証明書が付与されることをNFTの専門用語で「電子証明書がミントされる」というが、ミントの一連のプロセスが完了した段階で、対象となるデジタルアートの唯一無二性が保証されることになる。
※ミントの語源は「鋳造(Mining)」NFTの専門用語で、スマート・コントラクトを使ってNFTを新たに発行する権利を与えられるという意味で使用されている。
デジタルアートの世界ではこれまで、JPEGやGIF、あるいは3Dスキャンのデータなど、ウェブ上にある汎用性の高いデータが第三者によって簡単にコピーされてしまうということがよく起こっていた(いわゆる「二次創作」と呼ばれるもの)。しかしNFTによってそれらのデータに固有の証明書が付与されることで、アーティストやクリエイターの作品(あるいはデータ)がたった一つのものであることが正式に証明されることになる。これは前述の通り、デジタルコンテンツに明確な権利が与えられることによってアーティストやクリエイターの権利、さらには作品の版権が守られるばかりでなく、全体の収益の一部が還元されることにもつながるというメリットもあり、今アート業界においてもとくに注目度の高いキーワードの一つとなっている。
とはいえ、NFTアートへの参加はアーティストやクリエイターなど、通常、創作活動によって収入を得ている一部の人たちのみにその権利が与えられるわけではない。つまり、そうした職業に就いていない一般の人々であってもデジタルコンテンツを生み出す何らかの方法があったり作り方がわかれば(あるいは今後そのようなスキルを習得するなどして作品を発表する予定があれば)、誰でも参加することが可能になるのだ。
たとえば昨今では、Instagramで購入可能なNFT作品にする機能やiPhoneで簡単にデジタルアートを作成できる機能が開発されているといったニュース等も話題になっているが、これらはNFTアートの世界が多くの人にチャンスがあるということを示唆した例だといえるだろう。
SNSをはじめ、あらゆるチャンネルを駆使して誰もがネット上で発信ができるようになった今、NFTアートの世界に参加するチャンスは全ての人に平等に与えられているといってもいい。自分さえその気になれば、デジタル空間で大きな成功を収める可能性もあるからだ。
これと関連して一つ象徴的だった出来事が、今年NFTアートで話題となった人物、12歳の少女、ナイラ・ヘイズ氏のNFTコレクションが一気に値上がりし、たった数時間で160万ドル(約1億8000万円)を稼ぎ出したという衝撃のニュースである。
幼い頃から絵を描くことが好きで4歳の頃からコツコツと作品を描き続けてきた彼女は、女性の潜在的な美しさや強さをテーマに創作活動を続けていることもあり、昨今のアート界におけるフェミニズムの視点からも重要なメッセージを投げかけている人物の一人である。こうした現代的なテーマが多くの人々の心を捉えたばかりでなく、NFTアートブームが押し寄せたことも重なったのだろう。ナイラ・ヘイズ氏は一躍有名になり、世界中の人々に一気に知れ渡ることとなった。
画像引用:https://search.yahoo.co.jp
また、その輝かしい功績は、米TIME誌のNFT向けWeb3.0のプラットフォームである「TIMEPieces」で初めてコレクションを発売したアーティストとしても、高く評価されることになった。この事例は、NFTアートの新時代が到来したことを告げる象徴的な事例だろう。
もちろん、こうした華やかな成功事例はまだ全体のほんの一部に過ぎないのかもしれない。しかしナイラ・ヘイズ氏のニュースからは、NFTアートの世界ではこれまで無名だった人物が一気に名を馳せることも夢ではないのかもしれないーーそんな未来の可能性を見せるような、象徴的な出来事だったといえるのではないだろうか。
これまでは「自分も創作にチャレンジしてみたい」と思っても、どこから何から始めていいのかわからない人が多かったという流れがあった。しかし、こうしてデジタル空間に最先端プラットフォームが誕生し、NFTを使って個々のデータが価値化されるシステムが構築されつつある今、デジタルコンテンツの内容やあり方は従来とは異なるかたちで醸成され、これまでにはなかった新たなエコシステムが形成されてゆくことになるかもしれない。
「NFTアート」が注目を浴びるようになった背景とは?
ここ数年で一気に「NFTアート」が注目されるようになった背景には、今年3月に行われたクリスティーズのオークションで、アーティスト・Beeple(ビープル)のデジタルアート作品が約6,935万ドル(約75億円)で落札されたというニュースの影響が大きいだろう。
これを機にBeepleは一躍有名人となり、現在ではなんとオークション市場でも重要なアーティストの一人であるデイヴィッド・ホックニーとジェフ・クーンズに次ぎ、現存する世界で最も高価なアーティストの中の一人になっているのだという。
この出来事はNFTアートが高額で落札された事例として世界中の注目を集めたばかりでなく、今後のNFTの市場規模の大きな可能性を示したという意味で、アート界の重要なターニングポイントとなったことは間違いなく、業界全体に大きなインパクトをもたらした。
加えて、ここで一つ押さえておかなければならないのが、このオークションが行われた場所が世界的に著名なオークションハウス、ロンドンのクリスティーズだった、という事実であろう。
これまでのアートの歴史でも重要な役割を担ってきた、誰もが知る老舗のオークションハウスでNFTアートが扱われたということの意味は、やはり大きい。なぜならこのことは、今後NFTの登場によって仮にアートの価値づけや取引等にまつわるあらゆる事柄がアナログからデジタルの世界へと移行していったとしても、アートの正当な価値づけを行う機関としてのオークションハウスの役割は、依然として重要なポジションであり続ける、ということを示すものであるからだ。
それからもう一つ、今年大きかったニュースとして、クレジットカードの国際ブランドとして知られるVisaが15万ドルのNFT作品を購入した直後にNFT市場が活性化したというニュースも、今後のNFTアートの可能性を押し上げる上で、重要な転機となった。
Visaは、NFT作品として人気の高いCryptoPunkシリーズの作品1点を約1600万円 (49.5ETH、約150,000ドル) で購入したのだ。NFT愛好家にとってこのニュースは、NFTアートが主流文化に受け入れられつつあることを示す新たな事実として受け止められた。CoinDeskによると、Visaが購入してから1時間以内に、90のCryptoPunks作品が市場で販売され、合計で約22億円 (約2,000万ドル) の売上となったという。
少し歴史を遡ってみると、NFTアートは今からおよそ8年前、2014年にアーティストのケヴィン・マッコイ氏が最初のNFTアートの原型なるものを発表したことに始まった。その後、主にブロックチェーンと仮想通貨の世界に精通した人々のコミュニティを中心に、形成され始めたと言われている。(当時はCryptoartという名で流通していた)
このことからもわかるように、NFTアートの創成期ではアーティストがデジタル上で作品を発表し、その世界観に共鳴する人々が集まって徐々にコミュニティが形成されていったという、いわば実験段階のレベルに過ぎない存在だった。しかし先に挙げた今年のビックニュース、老舗オークションハウスによるある種の明確な価値づけがなされたことによって、現在では単にデジタル上のアート、そして一つコミュニティに過ぎなかったという認識からアートの資産価値、さらにはそこに集う人々、コミュニティの質やそこに集まることの付加価値に、人々の目が向けられるようになっているのだ。
巷でいわれているように、今のNFTはたとえるならばインターネット黎明期のような段階にあるため、一部では批判的な意見もあり、乗り越えるべき課題がまだまだたくさんあることは言うまでもない。しかし2023年度のデジタルコンテンツの市場規模が国内で190億ドル、グローバルでは1530億ドルにも上ることが予想されていることが物語っているように、今後大きく飛躍していく可能性のある領域であることは間違いない。
NFTに参入した、代表的な海外アーティスト
これまで多くの人々が今注目するNFTアートの可能性をお伝えしたところで、NFT市場にいち早く参入したアーティストの事例をいくつか紹介したい。
トップバッターは、今年国内でも様々な展示が行われた他、世界のオークション市場では現存するアーティストの中でトップの売上を記録したことなど、常に時代の先端をゆく話題に事欠かないカリスマアーティスト、バンクシーに関連するニュースから。
◆バンクシー
バンクシーはNFTアートの世界でも、いち早く名を馳せた人物の一人として知られているが、今年のバンクシーの活動を整理する意味でも、NFT領域で世界を賑わせたニュースを以下に3つご紹介したい。
暗号資産愛好家たちが、バンクシーのNFT作品を焼却
今年3月に、コレクターと投資家のグループによって、バンクシーのプリント作品《Morons》(2006)が、NFT化するために焼却されたというニュースが世界を駆け巡った。またその様子を収めた動画が、「Burnt Banksy」というツイッターアカウントで公開されたことも話題に。またNFT化されたバンクシーの作品は、NFT市場最大のマーケットプレイスである「Open Sea(オープンシー)」に出品され、2万2869ETH(約4,144万円)で落札された。
これは《Girl with Balloon》が裁断されたことによってさらに価値を上げた「シュレッダー事件」から着想を得たものだという。作品そのものが燃やされて存在しなくなったとしてもNFTの所有権自体に価値が残るという、NFTならではのコンセプチュアルな試みだといえるだろう。
常に新しい時代をリードする刺激的で精鋭の社会派アーティスト、いかにもバンクシーらしい事件!?ともいえる出来事だった。
SPIKEと描いた石、無許可でNFTに
バンクシーが2005年にパレスチナとイスラエルを隔てる分離壁に「SPIKE」と描いた部分を削り取った石が、NFT作品として今年7月、無許可でオークションに出品されたことも大きな話題を呼んだ。オークションの販売益の50%は慈善団体に寄付されるという。
こうした一連の流れが、バンクシー自身の目論見なのか、あるいはバンクシーの作品に目をつけた人々による策略なのか、真偽のほどは定かではない。しかしNFT市場でも常に物議を醸すなんらかの仕掛けを準備してくるあたりは、やはりバンクシーならではだ。
《Love is in the Air》が1万個のNFTに
オークションハウス・クリスティーズの現代美術部門元責任者が設立したNFT取引を行う会社「Particle」が、バンクシーの代表作の一つである《Love is in the Air》を1万個のNFTに分割し2022年1月10日から4日間販売することが決定した。各パーティクルの価格は1,500ドルで、販売されたパーティクルは他のNFTマーケットプレイスで再度流通することも可能だという。
また今挙げたバンクシーの他にも、ダミアン・ハースト、アンディ・ウォーホル、ダニエル・アーシャムらの人気アーティストたちも、いち早くNFT市場に参入し、すでにユニークな取り組みを始めている。編集部でも過去にこれらについて詳細に触れてきたが、せっかくなのでここでおさらいの意味も兼ねて、NFT領域における彼らの主な活動事例を簡単にご紹介してみたい。
◆ダミアン・ハースト
ダミアン・ハーストは今年、アーティスト自身の初のNFTプロジェクトとして「The Currency」(通貨)を発表した。ダミアンの代表的シリーズであるスポット・ペインティングシリーズを彷彿とされるカラフルなドットで描かれた作品は「アートと通貨の境界」というテーマで、未来の貨幣価値のあり方をはじめ、私たちに重要な問いを投げかけているようだ。
◆アンディ・ウォーホル
ポップアートの旗手として依然として人気の高いアンディ・ウォーホルについては、「旧式のフロッピーディスクに眠った作品がNFTとしてオークションに出品された」というニュースが物議を醸した。
この事件によって、「オリジナルとは何か?」という本質的なテーマがあぶり出されたばかりでなく、NFTの登場によってアーティストの死後もその作品の価値が担保され続ける傾向がこれまでよりいっそう強くなるかもしれないという、未来の可能性を示す上での重要な契機となった。
◆ダニエル・アーシャム
ダニエル・アーシャムが侵食された3DCGを初のNFT作品として発表。日本を彷彿とさせる風景の中で、四季の移ろいとともに彫刻が崩壊してゆく様を表現している。デジタルコンテンツはその特性上、半永久的にデータ上に残るものである。しかしながら彼の初の試みとなるNFTアートは、片時も止まることのない「時間」の流れる様やその変化を視覚的にも確認できる、アーシャムならではの美意識が貫かれた作品となっている。
NFTに参入した、代表的な日本人アーティスト
◆村上隆
海外のNFT市場に比べて、国内ではまだ目立った出来事が少ないのが現状である。しかし、そのような中でも日本を代表する現代アーティスト・村上隆がNFT市場最大のマーケットプレイス「Open Sea(オープンシー)」で、自身の初となるNFT作品《Murakami.Flowers》(2021)を発表したことが話題を呼んだ。
発表の2週間後には出品がいったん中止となったものの、最終的には花をモチーフにしたドット絵が、108種類あるコレクタブル作品として再度出品する予定だという。
◆森洋史
今年11月、東京発の新NFTマーケットプレイス「XYZA」が誕生したことも、国内のNFT市場においては重要なニュースの一つだろう。
アーティストをクリプトのコミュティに接続することを目的にローンチされたこのプラットフォームは、日本におけるマーケットプレイスの準備に貢献するばかりでなく、世界的なアーティストやギャラリーとともに実験的なクリプトアートを作成・販売することによって、NFTアートの可能性に挑戦するという新たな取り組みに注目が集まっている。
そんな「XYZA」のローンチプロジェクトの中に、ヒロ杉山(ENLIGHTENMENT)、天野タケルらと名を連ねていち早く参加しているのが、アーティストの森洋史だ。
森洋史は、NFT市場にいち早く参入したアーティストの一人である。国内ではまだNFT市場にチャレンジするアーティストがまだ少ない中、森はいち早く、時代の大きな流れの中に身を投じた。新たな分野への参入は高いハードルも高い上に不明瞭な部分も多くあるが、それでも果敢にチャレンジし続ける森洋史の今後の活躍に、ますます目が離せない。
NFTアートを売買するには?
現在、NFTアートは様々なマーケットプレイスで売買されている。しかし初心者にとっては今ひとつ馴染みのない専門用語ばかりで、始め方や買い方など、どこからスタートしたらよいのかわからないという方の方も多いのではないだろうか。
そこで、ここからはNFTアートの購入方法から販売の方法まで、基本の流れと手続きを簡単に追ってみたい。
1)暗号通貨を用意する
NFTアートを買う時も売る時にも必ず必要となるのが、暗号通貨と、それを管理するウォレットを用意するということ。
⑴ まず、国内の暗号通貨取引所を開設する
NFTアートを買うことのできるマーケットプレイスは、オンライン上にたくさんある。しかし作品をいざ購入する際には、暗号通貨「ETH(イーサリアム)」を入手することがまず必要となる。(NFTを始めたくても、ETHがないと始めることができないため、最初にETHを入手することが必須)
ETHを入手する際には、取引所を介在する必要がある。代表的なのはCoincheck(コインチェック)。登録は無料で、少額から通貨を購入することができるので、まずはここから準備を始めたい。
▼Coincheckの公式サイトはこちらをチェック!
その他には、国内だとGMOコイン、bitflyer、bitbankといった取引所がある。その際には各社で各種手数料に違いがあるため、複数の機関で比較し、自分に合ったところを選ぶのがおすすめだ。
⑵ 取引所に日本円を入金して、イーサリアム(ETH)を購入する
口座開設の際に必要な身分証明書を提出し、審査が通れば正式に個人情報が登録され、暗号通貨取引ができるようになる。そのためこの後は、金融機関から新たに開設した取引所に日本円を入金すればイーサリアムを購入できるようになる。
なお、1ETH(1イーサリアム)は現在、およそ40万円前後となっている。しかし、取引所によっては「0.01」といった小さな単位で購入できるところもあるため、スタート時点では無理のない少額で購入することから始めてみたい。
⑶ MetaMask(暗号通貨のウォレット)を開設する
続いて、取引所で入手したETHを暗号通貨を管理するお財布「ウォレット」に移すことが次のステップとなる。この時に使うウォレットはイーサリアムとも親和性の高い、「MetaMask(メタマスク)」がおすすめ。ウォレットでイーサリアムを保管すれば、盗難リスクが下がるだけでなく、NFTマーケットプレイスで作品を売買する時にスムーズに取引ができるようになるからだ。大切な資産をしっかり管理する意味でも、とくに初心者の場合はこの辺りのフローをしっかりと理解し準備上で、一つ一つのステップを慎重に抜かりなく進めていきたい。
⑷ 取引所からMetaMaskにETHを送金する
取引所で入手したイーサリアムをMetaMaskに送ってみよう。この時にまず行うことは、送金先であるMetaMaskのアドレスを確認すること。続いて、取引所のサイトでイーサリアムの送金画面を開き、所定の箇所にアドレスを入れれば送金完了となる。
2)NFTマーケットプレイスで作品を買う
暗号通貨で取引する環境が整ったら、いよいよ作品が購入できるようになる。「Open Sea(オープンシー)」をはじめ「Rarible(ラリブル)」、「Mintbase(ミントベース)」、「Nifty Gateway(ニフティ・ゲートウェイ)様々なマーケットプレイスがあるので、それぞれ比較しながら好きな作品を見つけてみたい。
⑴ マーケットプレイスに行く
NFT市場最大のマーケットプレイスである「Open Sea(オープンシー)」をはじめ、各マーケットプレイスにはそれぞれに特徴があるため、まずは一通りチェックして自分にぴったりなところを見つけよう。
⑵マーケットプレイスにMetaMaskを接続する
欲しい作品を見つけたら、イーサリアムを保管しているMetaMaskとマーケットプレイスを接続してみよう。ちなみに多くの主要マーケットプレイスはMetaMaskに対応しているため、他のウォレットと比べて接続がスムーズに進むといった特徴がある。
⑶ イーサリアムでNFT作品を購入する
この段階まできて、いよいよNFT作品を購入することができる。作品の販売方式は固定価格やオークションなどがある。オークションの場合は参加する際に賭ける金額の設定が予め必要となる。なおNFT作品では購入時にイーサリアムのブロックチェーンに「ガス代」と呼ばれる手数料、そしてマーケットプレイスの手数料が発生する(ガス代は、プログラムの実行や取引の送信にかかるコストを指す)。これらの手数料については、それぞれ金額も異なるため、事前にしっかり把握しておく必要があるだろう。
3)NFTマーケットプレイスで作品を売る
NFTアートの販売には、オリジナル作品を売ること。その他に、購入した作品を再び売る二次販売があるが、ここでは前者を紹介したい。
⑴ 審査を受ける(一部マーケットプレイスを除く)
OpenSeaやRaribleなどのマーケットプレイスは、登録さえすれば誰でも作品を販売することが可能。しかしアーティスト登録をするために審査が必要なものも増えているので、この辺りの情報もしっかりと事前にリサーチしておきたい。
⑵ 作品をミントする
作品の準備ができたら、マーケットプレイスで公開=ミント(NFTを新たに発行)する。自分の作品をミントする際には、画像をアップロードしたり作品名はじめ詳細を記載するボックスがあるが、手順に従って進めていけばそう難しくはない。慣れるまでには多少時間がかかるかもしれないが、自分の作品を出品したい方は必ず通る道でもあるので、この段階は早めにクリアにしておきたい。
⑶ 販売方式を決める
作品をミントしたら、最後に販売方式を決めるというステップが待っている。
最低落札額や入札期限を設定するオークション形式、固定の価格で販売する、もしくは値段をつけずにオファーを待つなど複数の選択肢があるが、選ぶ際には個人で自由に選べる。幅広く多くの人に知ってもらいたいのであれば、最初は価格を低めに設置するのが良いかもしれない。またオークション形式を選ぶなら、その時々で参加する人たちの状況を知って都度設定を帰るなど、柔軟に対応することが大事なポイントとなりそうだ。
現在のNFTアート市場の活況は、新型コロナウイルスの流行により、オンライン上のマネタイズが活性化した流れも大きく影響している、と言われている。そしてこの流れは2018年ごろから目立ってきたNFTアートの売買に特化した複数のマーケットプレイスの誕生とも相まって、今後は二次流通(セカンダリー・マーケット)の拡大も予測されるだろう。
また今後は、大手企業が続々とメタバース市場に参入していく流れもあり、メタバースをはじめ音楽やゲーム、映画など他業種との連携の可能性もあるNFTアートの世界は、現状はカオスな状況でありながらも、徐々に普及していくことが期待されている。
とはいえ、いくつかの課題も残っているため、結びに今後の課題を簡単に記述しておきたい。
(※NFTアートの購入方法、販売などの手続きに関する記事の参考文献 / 美術手帖 2021年 12月号「NFTアート」ってなんなんだ?!を参照)
今後の課題とNFTアートにおけるデメリット
NFTの誕生によってデータに唯一無二の価値を持たせることが可能となり、これまで正当な評価がなされてこなかったデータ(情報)に価値がもたらされることになった。しかしその一方で、マーケットプレイスにおけるデータの永続的な保証が曖昧であったり、所有や展示における権利関係や法整備がなされていないといった技術的な問題も残されている。
たとえば、今後デジタル上に多数のマーケットプレイスが乱立していくことが予想される中で、様々な手段やサービスを使ってNFT化できる可能性があるため、同じ作品が別のマーケットプレイスで売買される可能性もあるなど、法律面での整備がまだ十分ではないといった現状もある。
またこの他にも、価値基準やクオリティを担保するために、いわゆるウェブ上のキュレーションのような役割が必要なのではないか、といった声も上がっている。
最後に、ガス代をはじめとした手数料の問題だ。現在はNFT取引の数が急増したため、ユーザーは取引の際に高額のガス代に悩まされているといった現状があることも視野に入れておかなければならない。この辺りは利用者や作品の購入者にとってはデメリットに感じられる部分だろう。
また、魅力ある新規の分野であるために投機目的で参入している人々も少なからずいる。そのため取引においては細心の注意を払った上で、行う必要があることは言うまでもない。
まとめ
NFTアートは近年市場が拡大したため注目が集まっている分野であることは間違いない。
もちろんデジタルデータとしてのアートの価値の唯一無二性をどのように担保していくか、マーケットプレイスをどのように活用していくのか、さらに良質な作品をウェブ上でどのように見極めるかなど、多くの課題を抱えていることも事実であろう。
しかし2021年から本格的に加速し始めたNFTアートの世界はこれからの新たな経済圏を探り、今後多くの人々により利益が行き渡るようなエコシステムを築いていく上でも、アート界のみならず社会や経済システムを含めて極めて重要なターニングポイントであることは間違いなく、それだけに大きな可能性を秘めているといえるだろう。そんなNFTアートの世界を、未来の社会を俯瞰するための縮図として今後も見守っていきたい。
画像引用:https://qiita.com
ANDARTでは、オークション速報やアートニュースをメルマガでも配信中。無料で最新のアートニュースをキャッチできます。この機会にどうぞご登録下さい。
文:ANDART編集部