ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスモデルを可視化するためのフレームワークだ。ビジネスモデルキャンバスを使うことで自社のビジネスを俯瞰し、成長させていくことができる。今回は、ビジネスモデルキャンバスの意味や構成要素、書き方のサンプルなどをわかりやすく解説する。

目次

  1. ビジネスモデルキャンバスとは?
  2. ビジネスモデルキャンバスを使う2つのメリット
    1. 1.事業改善に役立つ
    2. 2.意識共有に役立つ
  3. ビジネスモデルキャンバスの9つの要素
    1. 要素1.顧客セグメント(CS:Customer Segments)
    2. 要素2.価値提案(VP:Value Propositions)
    3. 要素3.チャネル(CH:Channels)
    4. 要素4.顧客との関係(CR:Customer Relationships)
    5. 要素5.収益の流れ(RS:Revenue Streams)
    6. 要素6.主要リソース(KR:Key Resources)
    7. 要素7.主要活動(KA:Key Activities)
    8. 要素8.主要パートナー(KP:Key Partners)
    9. 要素9.コスト構造(CS:Cost Structure)
  4. ビジネスモデルキャンバスを活用する3ステップ
    1. ステップ1.9つの要素を埋める
    2. ステップ2.改善策を書き出す
    3. ステップ3.実行結果を検証する
  5. ビジネスモデルキャンバスの書き方サンプル例
  6. ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスの違い
  7. ビジネスモデルキャンバスを事業に活かす
  8. ビジネスモデルキャンバスに関するQ&A
    1. Q.ビジネスモデルキャンバスの順番は?
    2. Q.ビジネスモデルキャンバスの特徴は?
    3. Q.ビジネスモデルキャンバスのメリットは?
    4. Q.ビジネスモデルキャンバスの欠点は?
    5. Q.ビジネスモデルキャンバスの目的は?
    6. Q.ビジネスモデルキャンバスの発祥は?
    7. Q.4P分析で何がわかる?

ビジネスモデルキャンバスとは?

ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを可視化するためのフレームワークだ。BMCという略称が用いられることもある。アレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールが開発した。

ビジネスモデルキャンバスを使ってビジネスモデルを可視化すれば、ビジネスモデルの課題を洗い出したり、商品やサービスの効果的な訴求方法を探ったりしやすくなる。

ビジネスモデルキャンバスは、経営者が一人で事業について熟考するとき、経営幹部でビジネスモデルを検討するとき、社内で広く事業改善のアイデアを募るときなど、さまざまなシーンで活用できる。

既存の事業を見直すときはもちろん、新規事業をスタートするときにビジネスモデルキャンバスでビジネスモデルを整理するといった活用法もある。

ビジネスモデルキャンバスを使う2つのメリット

同じ商品やサービスでも、ビジネスモデルの違いで事業の成否が分かれることは多い。ビジネスモデルは、事業を永続的に成長、発展させる要だ。続いては、ビジネスモデルキャンバスを使ってビジネスモデルを可視化するメリットを見ていこう。

1.事業改善に役立つ

ビジネスモデルキャンバスで、顧客に与える価値や販売方法、コストや関係者などを整理すると、事業をより良くするための方法や改善点に気づきやすくなる。

たとえば、顧客の年齢層と広告宣伝の手法がマッチしていないことが分かり、より効果的な広告宣伝の手法に切り替える、無駄を削減してコスト削減を実現するといった対策をとれるかもしれない。

2.意識共有に役立つ

社員と一緒にビジネスモデルキャンバスのフレームワークを使い、改善案を募集するのも面白いだろう。今の時代、意外なアイデアや発想が爆発的なヒットにつながる可能性もある。

また、ビジネスモデルを可視化することで、仕事の全容をつかむことができ、社員のモチベーションを高められるのもメリットだ。

ビジネスモデルキャンバスの9つの要素

ビジネスモデルを可視化するBMCって何のこと?
(画像=Graphic&Illustration/stock.adobe.com)

ビジネスモデルキャンパスを構成する要素は9つある。一つひとつ見ていこう。

要素1.顧客セグメント(CS:Customer Segments)

ターゲットとなる顧客の属性やニーズなどを記述することで、事業のターゲットが明確になる。ターゲットが複数の場合、グループ化してすべて書き出す。

<例>
・高年収で多忙なサラリーマン男性
・育児で忙しい専業主婦や主夫
・一人暮らしをしている20代女性

要素2.価値提案(VP:Value Propositions)

顧客のニーズをふまえて、顧客に提供できる価値を記述することで、商品の特徴やサービスの内容が明確になる。顧客に提供する価値を見直すことで、顧客単価を引き上げるヒントも見えてくるだろう。

<例>
・家事の時短で生活にゆとりが生まれる
・より精密な作業が可能となり製品の品質が向上する

要素3.チャネル(CH:Channels)

顧客に価値を提供するときの手段を記述する。たとえば、販売方法や広告宣伝など認知獲得の手段などだ。顧客セグメントに訴求する適切なチャネルを選択することは、ビジネスを成功させるために重要な視点である。

<例>
・店舗
・ECショップ
・SNS
・チラシのポスティング

要素4.顧客との関係(CR:Customer Relationships)

顧客と築く関係性を記述する。顧客との新たな関係性を構築することで、新規顧客の獲得をはじめ、商品やサービスの価値上昇が期待できる。

<例>
・顧客アンケート
・保守メンテナンス
・セルフサービス
・アンバサダー任命

要素5.収益の流れ(RS:Revenue Streams)

顧客セグメントから収益を受け取る流れを記述する。ビジネスを成立させるには収益の獲得が欠かせない。収益の流れを明確化し、価格設定の妥当性も検討する。

<例>
・販売
・レンタル
・サブスクリプション
・コンサルティング

要素6.主要リソース(KR:Key Resources)

価値を提供するために必要なリソースを記述する。主要な経営資源といわれるヒト・モノ・カネ・情報の切り口で整理するとわかりやすい。

<例>
・特定のスキルや資格を持つ社員
・機械設備
・助成金や補助金
・ブランド

要素7.主要活動(KA:Key Activities)

価値を提供するための活動について記述する。主要活動は、いわば事業内容そのものだ。主要活動が明確でなければ事業として成り立たない。

<例>
・研究開発
・製造販売
・マーケティング

要素8.主要パートナー(KP:Key Partners)

価値の提供にともない協力してもらうパートナーを記述する。

<例>
・取引先や仕入先
・代理店
・金融機関
・不動産オーナー

要素9.コスト構造(CS:Cost Structure)

価値の提供にともない発生するコストを記述する。全体を把握しやすいように、代表的な項目をピックアップする。

<例>
・原材料費
・人件費
・広告宣伝費
・輸送費
・家賃などの固定費

ビジネスモデルキャンバスを活用する3ステップ

ビジネスモデルキャンバスを活用する具体的な手順を3つのステップで解説していく。

ステップ1.9つの要素を埋める

ビジネスモデルキャンバスの9要素を1枚のシートに書き出していく。

ステップ2.改善策を書き出す

書き出した要素を眺めて、それぞれの内容や整合性を分析する。ブラッシュアップできる内容があれば、赤字などで書き加えていく。最終的に改善策をまとめ、アクションプランを定める。

ステップ3.実行結果を検証する

アクションプランに沿って改善策を実行し、一定期間を置いて振り返りをする。ビジネスモデルキャンバスと照らし合わせながら、PDCAサイクルを回すようにしたい。

ビジネスモデルキャンバスの書き方サンプル例

アンティーク家具を販売する店舗を経営する会社を例として、ビジネスモデルキャンバスを活用した書き方のサンプル例を紹介する。

9つの要素を順番に表の中へ埋めて、課題や改善策を検討していく。

題や改善策

ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスの違い

リーンキャンバスは、ビジネスモデルキャンバスとよく似たフレームワークだ。同じくビジネスモデルを可視化するためのフレームワークであり、シートの構造もビジネスモデルキャンバスと似通っている。

ただし、ビジネスモデルキャンバスとは異なる要素がある。

・独自の価値提案
・圧倒的優位性
・主要指標
・解決策
・課題

ビジネスモデルキャンバスは、経営資源や取引先、企業活動、顧客との関係性など、具体的で実践的な要素が多い。その一方でリーンキャンバスは、優位性や解決策など、抽象的な分析に役立つ。

使い分けとして、創業準備期間や新規事業の立ち上げ時期は、リーンキャンバスを活用するとよいだろう。

すでに軌道に乗っているビジネスモデルを分析する場合や事業拡大を目指す場合は、ビジネスモデルキャンバスを活用することで課題を見つけやすくなるはずだ。

ビジネスモデルキャンバスを事業に活かす

新規事業の立ち上げや事業拡大など、経営にはさまざまなステージがある。時には経営方針で悩むこともあるだろう。ビジネスモデルを明確化しておけば指針になるはずだ。事業を成功に導けるようにビジネスモデルキャンバスをうまく活用したい。

ビジネスモデルキャンバスに関するQ&A

Q.ビジネスモデルキャンバスの順番は?

A.ビジネスモデルキャンバスは次の順番で整理していくと分かりやすい。

1.顧客セグメント(CS:Customer Segments)
2.価値提案(VP:Value Propositions)
3.チャネル(CH:Channels)
4.顧客との関係(CR:Customer Relationships)
5.収益の流れ(RS:Revenue Streams)
6.主要リソース(KR:Key Resources)
7.主要活動(KA:Key Activities)
8.主要パートナー(KP:Key Partners)
9.コスト構造(CS:Cost Structure)

Q.ビジネスモデルキャンバスの特徴は?

A.ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを可視化するためのフレームワークだ。ビジネスモデルキャンバスを使ってビジネスモデルを可視化すれば、ビジネスモデルの課題を洗い出したり、商品やサービスの効果的な訴求方法を探ったりしやすくなる。既存の事業を見直すときはもちろん、新規事業をスタートするときにビジネスモデルキャンバスで事業の内容を整理するといった活用法もある。

Q.ビジネスモデルキャンバスのメリットは?

A.ビジネスモデルキャンバスのメリットは、事業改善に役立つことだ。顧客に与える価値や販売方法、コストや関係者などを整理すると、事業をより良くするための方法や改善点に気づきやすくなる。また、社員やチームメンバーとの情報や意識の共有に役立つというメリットもある。

Q.ビジネスモデルキャンバスの欠点は?

A.ビジネスモデルキャンバスでビジネスモデルを可視化し、改善策を考えても、実行に移さなければ事業改善は実現しない。社員と一緒にフレームワークを使ってみるなど、実行フェーズを意識して分析に取り組むことが望ましい。アイデアを出すだけで終わることがないよう、担当者や期限を決めたり、効果測定の方法を考えたりしておくことも大切だ。

また、改善策を考える時は、競合他社とバッティングしないか、本当に効果が期待できるか、多角的な視点から熟考するようにしたい。

Q.ビジネスモデルキャンバスの目的は?

A.ビジネスモデルキャンバスの目的は、ビジネスモデルを可視化し、ブラッシュアップすることだ。ビジネスモデルを可視化すれば、ビジネスモデルの課題を洗い出したり、商品やサービスの効果的な訴求方法を探ったりしやすくなる。

Q.ビジネスモデルキャンバスの発祥は?

A.ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを可視化するためのフレームワークで、アレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールが開発した。

Q.4P分析で何がわかる?

A.4P分析とは、「Product(商品やサービス)」「Price(価格)」「Place(販売場所や提供方法)」「Promotion(販売促進)」という4つの視点から自社の商品やサービスを分析する手法だ。マーケティング戦略を立てる時に役立つ。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)

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